今日も良く晴れたな。静かに座っていた男は知らぬ間に呟いていた。
彼の周りを覆っている幕からは淡い光が透けている。
辺りにはねっとりとした甘い香りも漂っている。
その香りはあちこちに溜まった琥珀色の液体から強く香っていた。
男の隣にはひとりの女性が裸で寄り添っていた。
女性は官能的なプロポーションで、きめ細やかな肌の持ち主だった。
肌はあの琥珀色の液体で濡れ、艶やかに光っている。
彼はそっと肌を撫で、豊満な胸を優しく揉む。
「ね。今から海にでも行かない? 今日は絶好の海水浴日和だし。」
「海?」
無心で乳首を弄っていた男は、隣からの透き通った声にはっと振り向く。
そこには彼に身を寄せていた女性の穏やかな微笑みがあった。
新緑の長髪と肌。アーモンド型の薄紅の瞳。驚くほど整った顔立ちなのだが妙に艶めかしい。
この女性は当然だが人間ではない。アルラウネという魔物娘の一種族だ。
アルラウネは植物型の魔物だ。男が今いるのも彼女の花の中で、周囲を覆っている幕も実は巨大な花弁なのだ。
今は夏真っ盛り。アルラウネが言うように外は灼熱の暑さなのだろう。
だが花の中は適度な温度に保たれており、意外なほど過ごしやすい。
「でもリラは海水大丈夫なの?」
植物に海水の塩分はよくないのでは。
気になって問いかける男の頭をアルラウネの女性、リラは優しく撫でてくれた。
「ああ。全然平気よ。っていうかわたし全部が植物って訳じゃないんだし」
「ふーん。どうしようか…… 」
「じゃあプールはどう?水族館は?遊園地もいいかも」
「う〜ん…… そうだねえ」
「それじゃあ映画でも観に行った後でおいしいもの食べる?」
「映画ねえ…… でも特に観たいのは…… 」
男は気乗りしないのだろう。しきりに勧めてくる女に生返事を繰り返した。
「ほんとにいいの?じゃあなにか欲しいものはある?好きなもの頼んでいいのよ。蜜がいい値で売れたから懐あったかいし」
リラはそんな男に気を悪くもせずに、花弁で作られた棚からスマホを取り出す。
「ちょうどタイムセールやってるから何かお取り寄せする?」
リラはネット通販サイトを開くと男に見せた。
彼女の気づかうような様子に気が付いた男は優しく微笑む。
「大丈夫。俺のことは心配しないでいいから」
そっと溜息をつくとリラは切なげに男を見つめた。
「でも、冬場はキミのことずっと閉じ込めっぱなしになっちゃってるでしょ。今のうちに色々楽しませてあげたいし…… 」
「そんなことないって。俺はリラとこうしているのがいいんだ」
男はかぶりを振ると女の豊かな胸に顔をうずめる。
心地よい感触と、蕩けるような甘い香りが彼を包んだ。
「なんか温かくて柔らかくて、とっても幸せなんだ…… 」
幼児のようにすがりつく男をリラは苦笑して抱きしめた。
「もう!わかったわよ。でも、何かあったら遠慮しないで言うのよ。出来るだけのことはしてあげたいから」
「ありがとう。リラ」
男と女は見つめ合うと互いを抱擁し、安らぎの中に溺れていった。
魔物娘という未知の存在が現れて、いったいどれだけの月日がたったのだろう。
今では彼女達はすっかり日常に中に溶け込み、当たり前のように共存している。
山歩きが趣味だった男も、登山からの帰り道にリラと出会った。
今まで嗅いだことがない心地よい香りに気がついた男は、誘われるように引き寄せられ、そこでリラと出会ったのだ。
男はそれまでアルラウネに会ったことはなかった。
巨大な花から上半身を出しているリラの姿は驚き以外になかった。
彼女がお話しようと呼びかけたのを無視して、つい逃げ出してしまったのだ。
だがリラの妖艶な姿が忘れられなかった彼は、悩んだ末に彼女に会いに行く事にした。
再会したときのリラの喜びようと男のおどおどした姿は、いまでも忘れられない話だ。
そんな二人だったが少しずつ距離を縮め(というかリラが一方的に縮めていったのだが)想いを育んでいった。
いつしか男はリラを受け入れ、一つになり、共に花弁の中で生活するようになっていった。
「ええと。何でもいいの?」
「どうしたの?遠慮なんかしないで」
リラに抱かれている男は豊かな胸の谷間から見上げた。彼女は優しく続きを促す。
「うん。ちょっと喉渇いちゃったかな」
「ごめんごめん。気が付かなかったね。すぐにお水もってくるから」
男を抱擁から解放すると急いでリラは起き上がった。
そのまま歩みはじめようとするのを彼は慌てて止めた。
「あ。ううん。蜜のほうがいいかな」
男の言葉を聞いたリラはにやりと淫らな笑みを浮かべる。
花弁の中に溜まっている琥珀色の液体はリラの、アルラウネの
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