今日は休日。いつものように嫁(白蛇)のヒカリちゃんとスーパーでお買い物だ。
欲しいものを探していた僕は、いつしか彼女と離れてしまった。
僕は夢中になってあれこれ手にとり品定めする。
「あ…… ほら旦那様。離れちゃだめですよ。」
そんな姿を見てヒカリちゃんは、長い蛇体を伸ばして僕の体に絡みつかせてきた。
「待ってよ。人前だから恥ずかしいって!」
慌てて声を上げるけど無視して、彼女は僕を拘束すると優しく頭を抱いた。
家の中ではヒカリちゃんに巻き付かれて甘え合うなんて当たり前。
でもさすがに人前でこんなことされるなんて恥ずかしい。
「うふふ。だあめ。どこで性悪なメスが旦那様を狙っているか分かりませんからね!」
「もう。ヒカリちゃんったら…… 」
ヒカリちゃんはかぶりを振ると額にキスをした。僕はため息をつくしかない。
まあでも、人と魔物が共存するようになって当たり前の世の中だ。
周囲を見ても人魔のカップルなんてざらにいるし、僕たち同様堂々といちゃついている。
誰も気にする風ではない。
「さ。それじゃあお買い物続けましょう。欲しいものは何でも言って下さいね!」
「はあい。お望みのままに。」
楽しそうにそういうヒカリちゃんに僕は肩をすくめた。
「ほら旦那様!これ前にニュースでやって新製法のビール。虜の果実使っているんですよね。」
「ああほんとだ。試しに買っていい?」
「ええ。好きなだけ買って下さいね…… 」
ヒカリちゃんは僕に蛇体を巻き付けたまま器用に買い物を続ける。
いつしか僕も周囲を気にすることを忘れて彼女に体を預けていた。
ヒカリちゃんは嬉しそうに笑ってくれる。
「そうそう!肝心な物を忘れてました。」
「どうしたの?」
「いえ。ホルミルクを買うのがまだでしたので。これがないと仕方ないですよねえ。」
声を上げるとヒカリちゃんは、慌てて乳製品のコーナーに行った。
人魔のカップルにとってホルミルクは必需品のような物だ。
メーカーも値段も様々な物が並んでおり、多くのお客さんで賑わっている。
「へえ。こんなのもあったんだ…… 」
僕はその一つを手に取った。可愛いホルスタウロスのイラストがよく目立つ。
イラストのホルスタウロスは、大きな乳を見せつけるようにして微笑んでいた。
「もう…… これはダメですから。」
ヒカリちゃんは感心したように眺めている僕に呆れて、さっとそれを取り上げた。
「え?なんで。」
「なんでじゃありません。今、旦那様このホルスタウロスに浮気してたじゃないですか!」
「浮気だなんてこれただの絵でしょ…… 」
「でも、旦那様は絵に欲情していた前科がありますからねえ。 」
ヒカリちゃんは苦笑して棚に戻すと、別の地味なデザインのホルミルクをカートに入れた。
「それを言われると反論できません。」
「よろしい。分かればいいんですよ。」
僕が神妙に頭を下げると、ヒカリちゃんもおどけたように頷いて見せた。
たしかに昔は彼女が言うように二次大好きだったが、今ではヒカリちゃんしか眼に入らない様なものだ。
だって、彼女はいつも僕を優しく温かく包み込んでくれて、全てを受け入れてくれる。
ヒカリちゃんと一緒にいるとすごく落ち着くし安心できる。
ヒカリちゃんさえ側にいてくれればいい……
でもやっぱりヒカリちゃんは白蛇さんなので、僕の関心がよそに向くのには複雑な思いを隠せないみたいだ。
冗談っぽくしてるけど今回もそうなんだろう。僕は彼女を抱きしめると素直に謝った。
「ごめんねヒカリちゃん。気分悪くさせたかな。」
「もう…… やめて下さいよ。 大丈夫!旦那様のお心はよく分かってますから…… 」
ヒカリちゃんはかぶりを振ると切なげに笑った。
「そうそう。アルラウネの蜜も少なくなってました。ついでに買っておきましょう。」
アルラウネの蜜もホルミルク同様に人気が高い栄養源だ。
行った先には色々な品が並んでいるが、やっぱりそこにも萌え絵のついたものがある。
今回は気をつけよう…… 僕は注意して目をやらないようにした。
「これなんかどう?特売で安くなってるよ。」
「そうですねえ。 初めて見るメーカーですけど、試しに買ってみますか。」
気をそらすように蜜の瓶を手に取る僕を見て、ヒカリちゃんは妙に嬉しそうだ。
「うふふっ。本当はよその魔物娘の体液なんか旦那様に飲ませたくないんですけど。こればっかりは仕方ないですねえ。」
「えっ?」
はしゃいだように言うヒカリちゃんを見て僕は今更のように思い出した。
そうだ。ホルミルクもアルラウネの蜜も魔物娘の「体液」だったんだと。
僕はホルスタウロスの母乳を毎日ごくごく飲んでいるんだ
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