ミコトへの贈り物

                            

 あの日、僕は救われた。生きて行く事に疲れてすべてを投げ出そうとした僕に、幼馴染のミコトちゃんが癒しと安らぎに満ちた手を差し伸べてくれた。
 
 彼女は魔物娘でラミアの一種、シロヘビと言う種族だった。僕も魔物娘の存在は当然知ってはいるものの、まさか幼馴染のミコトちゃんがそうであるとは全く思いもしなかった。
 実際彼女の正体が魔物娘であることは、僕たちが住むこの街でも極限られた人しか知らない秘密だ。人魔の共存を良く思わない風潮が根強いこの街ではそれも仕方がない。僕自身も正体を知って取り乱してしまった。ミコトちゃんは快く(?)許してくれたものの、その事は今でも悔やんでも悔やみきれない。
 
 この時ミコトちゃんのものになり、その想いを受け入れた僕は彼女の家に居候するようになった。だが、せめて生活費だけでも、と働こうとした僕に彼女はやんわりと反対した。

「今後の事はゆっくり考えよう。今は無理しないで休んで。ね。お願い。」
「そうはいってもこれ以上迷惑はかけられないよ。」
「たーくんが無理して、もしこの間みたいな事になったらどうするの?」
「でも…。」
「わかった。君がそんなに元気なら、精をもっと搾り取っても大丈夫だね
#9829;」
「えっ?ちょっと待って?なんでそうなるの…?ミコトちゃん…。」

 と、こんなやりとりがあって、それまで以上にミコトちゃんに精を搾られる毎日になってしまった。そんな爛れた毎日を過ごすうちに、僕自身恐ろしく絶倫に、人間の限界を超えた性の交わりが可能になっている事に気が付いた。

「そっか。おめでとう。これで君もわたし達の眷属だね。」

 気になって尋ねた僕にミコトちゃんはそう言った。

「眷属…。」
「インキュバス化って言った方が分かりやすいかな?」
「うん…。それじゃあこれで僕もミコトちゃん達魔物の一員になったんだね。」
「もしかして、後悔…してる?」

 ミコトちゃんが少し不安そうに尋ねた。僕を彼女の「もの」にした経緯で、隠し事をしてしまった事を気にしているのだ。
 ミコトちゃんはシロヘビ独特の魔力である「青白い炎」を心に平安を与え、なおかつ二人がより一層仲良くなるものだと言って僕に注ぎ込んだ。その後聞いた話だと、実際は浮気男の心を焼きつくし、ほかの女には一切の関心を持てなくさせる強力な魅了魔法だとの事だ。
 
 やっぱりこの事を黙ってはいられない、と彼女は僕に打ち明けて謝った。確かにいつもミコトちゃんの事ばかり考えるようになってしまったが、もともと大好きな女性だったので全く問題は無い。それにミコトちゃんの事に僕の心が向いてしまったので、それまでの悩みや苦しみには全く囚われなくなった。
 むしろ以前はかなわなかった穏やかで温かく、そして快楽に満ちた生活を与えてくれて心から感謝しているのだ。

「ううん。全然。人のままだったら僕は生きて行く事すらできなかったから。ちょっと変な気分だけど、こうなれて嬉しいんだよ。」

 僕は心配させないように笑って答えた。

 そんな僕がミコトちゃんと一緒に住むようになってしばらくたったある日の事…

                  

                            










「えっと…それじゃあたーくんは部屋も荷物もそのままでこっちに来ちゃったの?」
「う、うん実はそうなんだ…。」
「本当に!?それで、家賃や光熱費の支払いはどうなっているの?」
「それは大丈夫、全部口座引き落としだから。あ、でもそろそろ預金無くなりそうかも…。」

 ミコトちゃんは少し呆れた様な表情を見せる。本当にこの子はとでも言いたそうだ。

「たーくんはむこうで働いていたんだよね。そこはどうしたの?」
「少し前に辞めたよ。」
「そう…。それじゃあ一度あっちに行かないとね。部屋をそのままにしておいても仕方ないし。片づけして必要な物だけこっちに持って帰りましょ。」
「ごめんね。余計な仕事増やしちゃって。」
 
 仕方ないなあとでも言いたそうな笑みを見せると僕の頭をなでた。いつもの事だがミコトちゃんに頭を撫でられるとうっとりしてしまう。

「謝らなくてもいいんだよ。でもね、たーくん。そういった事はもう少し早く言おうね。家賃滞納なんて事になったら色々面倒だよ。」
「うん…。」

 こうして姉のように僕を教え導いてくれるミコトちゃんだ。それはとても嬉しいし有難いのだが、我ながら情けないなあ…という思いも強い。

「でもたーくん。そんな衝動的にこっち来ちゃうなんて、よっぽどだったんだね。」
「会社を辞めてからはほとんど家に一人で閉じこもりきりだったね…。だからミコトちゃんが電話してきてくれるとすごく嬉しかった
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