第5章 「友達」として…… 6

「佑人さんお疲れ様です…。とっても素敵でしたよ〜。さすが私が見初めた方ですね。それでは少しお休みしましょうか…。」

 俺が限界に近づくのを気遣ってくれた有妃は休憩を取った。そしてきゅっと抱きしめると優しく労わってくれた。いい子いい子するように頭を撫でられ、蛇体が温かく包み込んでくれている。お世辞かもしれないが褒められてとても嬉しい。俺は全てから解き放たれたように弛緩して、ただ安らかに憩う。

 だが、本当に凄まじい快楽だった。こんなに大量の精液を吐きだすなんて、今まで全く経験が無い。もうバカらしくて自分で自分を慰める事なんか出来ないだろう。
 有妃の『もの』となった今では、魔物娘の虜にされて、ひたすら交わり続ける人たちの気持ちが良く分かる。俺も他の女では到底満足できまい。もうこの愉悦からは絶対に逃れられないだろう…。

 もちろん有妃の優しさや、いつも与えてくれる安らぎだけで十分虜になっていた。だが、性の快楽はそれを補強して余りあるものだ。
 もういい…。まだ夢見心地から抜け出ていない俺は思う。このまま拘束されて監禁状態になってもいい。ずっとセックスし続け、心をとろとろにして生きて行こう…。有妃がそれを望むなら一向にかまわない……。

 どれだけ時間がたったのだろう。二人で抱きしめあって、心地よいまどろみに堕ちようとしたしたその時だった。有妃が突然じっと俺を見つめてきた。急にどうした事かと驚いたが、その表情は妙に不安げで暗い眼差しをしていた。そう、この妙に怖い表情は以前何度か見た事がある…。

「あ、あの…。佑人さん。以前から気にはなっていまして…それで、少しお伺いしたいのですが……。」

「急にどうしたの有妃ちゃん…。」

 恐らく俺も困惑した表情だったのだろう。有妃もしばらく悩んだ後、覚悟を決めたように話し出した。

「あ、いえ、あの……。私は今まで男の方に体を許したことはありません。初めては佑人さんに捧げました……。それはわかって頂いたと思います。でも……。」

 ああ…。そうか…。もしかして…。有妃が言わんとしている事に思い当たった。でも、それは……

「でも、佑人さんは今日が初めてではないですね…。確か女性の方とは全くお付き合いしたことは無いとおっしゃっていたはずですが…。」

 ああっ。やっぱりその事かっ。そう。俺はいわゆる素人童貞と言う奴だ…。もちろん有妃と一つになった今では、『素人童貞だった。』と言うべきだろうが。付き合いで風俗に行ったときに童貞は捨てており、その後も風俗にはたまに行っている。でも、それはあくまでも付き合いでの話だし、有妃と親しくするようになってからはそういう店には全く行っていない。

 俺の体から漂う精の匂いでその事を察知したのだろう。有妃の表情は穏やかだったが、眼差しは真剣そのものだ。なんで隠し事をしたのだと言わんばかりだ。いや、それは……。慌ててそう言い訳しようとした俺をさえぎる様に、有妃はしゃべりだした。

「あ…いえっ!勘違いしないで下さいねっ!私と知り合う前に佑人さんがどなたとお付き合いされていてもそれは当然自由です。でも…女性と付き合っていた事自体を隠すと言うのは……どういう事なんでしょう。
 私達はこうして夫婦の契りを交わしました。一緒に幸せになりたいと心から願っています。だからこそ……隠し事は止めにしませんか……。過去に何があったとしても……私は佑人さんと一緒に未来を見たい事に変わりはないのですから…。」

 有妃は暗い笑顔で諭すように語り終えた。そして、じっと黙って俺の答えを待っている。引きつっている様な笑顔が少々怖い。これは…どうやら誤解されてしまったようだ。だが、これ以上勘違いされるのも悲しませるのも嫌だ。正直に言うしかないか…。

「いや…お恥ずかしい事だけど本当に女の人と付き合った事は無いんだよ…。実はね…」

「佑人さんっ……。正直に言ってください……。お願いですから……。」

 有妃は哀願するような声で訴えかけた。そして引きつった顔がくしゃっと歪んで、今にも泣きだしそうになる。これはまずい!俺は慌てて叫んだ。

「風俗だから!俺の初めては風俗だから!本当に女性とは付き合った事ないからっ!」

 俺は叫んだあと顔を真っ赤にする。そうだ。素人童貞だったとカミングアウトする事など、わざわざしなくてもいいのだから。だが、有妃はそれを聞いて少々あっけにとられたような表情を見せると、俺の目をじいっと見つめる。

「風俗…ですか?なんだ…そうだったんですか。あ…ごめんなさい。もう…私ったら…。」

 嘘は無いとわかってくれたのか、有妃は急に安心したかのように明るくふるまった。照れ隠しのように笑うと俺の頭をくしゃくしゃと撫でる。助かった…。二人にとって記念の日が修羅場になるなん
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