第5章 「友達」として…… 2

「佑人さん。お待たせしました。」

「ありがとう。すごいね。美味しそう…。」

 俺は早速有妃の手料理を頬張る。母親以外の女性の手料理を頂くなんていつ以来の事だろう。普段はあまり食べない魚と野菜中心の献立だが、それと炊き立てのご飯に豆腐と油揚げの味噌汁。どれもとっても味わい深い。レトルトやインスタントの刺々しい味に慣れ切っていた俺は、その新鮮な美味しさに夢中になる。つい美味しい…と声が漏れてしまうのが抑えきれない。

 誰にも邪魔されない自由で独りで静かな食事。今まではそれが当たり前だったし、それで良いと思っていた。でも、誰かと一緒の、それも好意を持っている人と一緒の食事もなかなか良いものだ。料理を口に運びながら思う。有妃は優しい眼差しで俺を見守っていてくれている。なぜだろう。彼女がいる空間がすごく居心地が良くて穏やかな気持ちになれる。
 
 いつもなら知り合って間もない人とは気楽に打ち解けることは難しい。たとえどんなに好意を持っている相手でも気疲れしてぎこちなくなってしまう。だが、なぜか有妃とは一緒にいる安心感とくつろぎの方が大きい。もしかして魔物娘が持っている魔力によるものか?だとするなら、随分とご都合主義な魔法もあったものだと皮肉な思いになる。

 それにしてもこの味噌汁はしっかりとだしをとってあって本当に美味しい。もっと食べたいけれど…おかわりを求めるのも意地汚いか…。そう思った俺の気持ちを見越したように有妃が話しかけてくる。

「佑人さん。おかわりまだありますよ。」

「……ううん。大丈夫。ごちそうさま。」

 仕方ないなあ。とでも言いたそうな顔をすると、穏やかな口調で勧めてくる有妃。

「佑人さんの顔はまだ食べたいって言っていますよ。無理にとは言いませんが、遠慮はしないで下さい。ね。お願いします。」

 有妃はそう言ってにっこりと笑う。とても愛情と母性に溢れる笑顔だ。何も遠慮なんかする必要は無いと確信させるような、そんな素敵な表情を見ていると俺も喜んでお代りを求めてしまった。

「ありがとう。それじゃあお願いします…。とっても美味しかったから、つい…。」

「ふふっ。嬉しいです。そう言ってもらって作り甲斐がありますよ〜。さ、たくさん食べて下さいね。」

 母親の様に優しく見守る有妃を感じている。体だけでなく心もとても暖かい。いつしか気兼ねや遠慮といった思いから解き放たれ、夢中になって料理を頬張り続けた…
















「ごちそうさま。とっても美味しかったよ。こんなに美味しい料理は久しぶりだよ。本当にありがとう。」

 俺は心からの感謝をこめてそう言った。こんなおいしい食事を毎日食べる事ができればどれほど素晴らしい事だろう。有妃も嬉しそうにはにかむと下を向いてもじもじする。その仕草がなんとも可愛らしい。

「いいえ。そんな…。お粗末さまでした。でも、佑人さんはご両親の所でご飯は食べられないんですか?」

「うーん…。実家まで車で30分以上かかるんだよね…。飯のためだけに行くのは少々面倒かな。」

 有妃はそうですかとつぶやくと少し考え込んでいた。そして温かさの中に何かを決意した様な眼差しで優しく微笑む。

「今日は急だったのでこの程度で申し訳なかったですけど、明日はもっとしっかりとしたものを作りますね!何かご希望のメニューとかあれば期待に答えちゃいますよ〜。」

 思わぬ言葉を聞いた俺は慌てる。

「そんな!いくらなんでもそれは悪いって…。気持ちだけ有難く頂きます。」

「ふふっ。そんな遠慮はしないで下さいね。これは私がしたくてする事なんですから。」

「でも……」

 俺が言葉を発しようとしたその瞬間、有妃はぐっと顔を近づけてきた。今まで優しく暖かだった眼差しが急激に暗く悲しいものに変化していく。先ほど不健康な食生活を叱ってくれた時とは違って妙に怖さを感じる。そうだ…。これは…初めて彼女に会った時、ずっと私だけを見ていてほしいと言われて驚いた時の眼差しに近い。

「あの…本当は私の料理は…美味しくなかったんですか…?それとも…もう来るなとおっしゃりたいんですか……。もしそうなら私は…」

 そう言うと今にも泣きそうな顔になった。予期せぬ反応に慌ててしまう。迷惑を掛けたくなかっただけなのになんで…。俺は大急ぎで否定してなだめようとする。

「待ってくれよ!違うって!そんな事は絶対にありえないよ。毎日食べたいし、有妃ちゃんが来てくれれば嬉しいに決まってるよ…。けれど毎日迷惑をかけるわけにはいかないよ。君の負担になる様な事はさせたくないんだ…。」

「それは本当ですか…。」

「当たり前じゃないか。」

 俺の心を見抜くようにじっと見つめていたが、有妃はふと安堵したように穏やかな表情になった。

「佑人
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