薬師と神の使い

 俺の名前は南雲 義啓(なぐも よしひろ)。薬師を生業としている18歳の男だ。
故郷を出て数年、この山に着き、ここで採れる薬草を使って薬を作ることで生活している。
 ある日の昼ごろ俺は山で採れたもので作った薬を売りに山を下りていた。
俺の家は山の中腹にあり、目的の村は家から歩いて20分ほどかかる山の麓にある。
麓までの道を歩いていると左にある林から子供の声が聞こえてきた。
……確かあっちには滝があったな?妖怪に襲われているのかもしれん。
そう思った俺は声がする方へと向かった。すぐに目的の滝が見えた。子供もいるようだ。
襲われているのかと思ったが、どうやら違うらしい。
近づいていくとその少年は手に持った木の棒を足元の何かに向けて振っているようだ。
「こら!何してる!」
「うわ!何だぁ!?」
俺は少年に近づいて後ろから着物の襟を掴んで持ち上げる。少年は驚いたように声を上げ、手に持っていた木の棒を下に落とす。俺はこいつが何をしていたのか知った。

 彼の足元には蛇がいた。それも2尺(約60cm)くらいの真っ白な蛇だ。
子供とはいえ、少しの間叩かれ続けたのだろう。その白い鱗は傷つき、動けないようであった。俺は掴んでいた少年に目を向けるとそいつは何で止めるとでも言うように俺を睨んでいた。
「ここにいるってことは麓の村の子供だな?何をしていた?」
「練習だよ!俺は大きくなったら村を妖怪から守るんだ!そのために練習してるんだ!」
「ふむ、志は立派だな。だが、動物をいじめるのはいかん。」
「なんでだよ!?」
「お前がやっているのは弱い者いじめだ。それこそ、妖怪がやっているのと変わらん。」
俺がじろりと少年を睨むと目を逸らした。それを見て俺は畳み掛ける。
「小僧、お前は知らないようだが、白い蛇は神様の使いと言われていてな。」
「えっ!?」
「その神様の使いをお前は殴って殺そうとしたんだ。何か罰でも当たるかもなぁ。」
「ば、罰って?」
俺の言葉に顔を青くしながら彼は聞いてくる。よしもう一押しだな…。
「さぁなぁ。だが、ここで蛇に謝って二度としないと誓えば許してくれるかもなぁ…。」
「ひぃ!ご、ごめんなさい!二度としないから許してぇ!」
俺が手を離すと彼は地面に土下座して謝る。
「これで神様も許してくれるだろう。だが神様の気が変わる前に家に帰った方がいいぞ。」
俺が言うと青い顔をさらに青くし、全力で村の方に走っていった。俺はそれを見送ると背中の荷物入れを降ろし、薬と包帯を取り出す。もちろん、蛇を治療するためだ。
「こんなところ村人に見られたら気がふれたとでも言われそうだな…。」
俺はそう言いながら鱗に薬を塗りこみ、包帯をその体に巻いた。
そうこうしていると治療は終わった。だが、蛇はどこか痛めたのか動けないようだ。
「やれやれ…。今日は商売できないな。」
そう愚痴った後、俺は蛇を持ってきていた籠に入れ、家に帰る。
知り合いの医者に見せるためだ。彼は呼んだらすぐ来てくれるはずだ。

俺は家に帰ると蛇を柔らかい布の方に移し、彼を呼ぶために狼煙を焚いた。
すると、山の頂上の方から鳥の羽ばたく音が聞こえ、すぐに俺のそばに降り立った。
「わしを呼ぶとは何かあったのかな?」
彼は人ではなかった身長は俺と同じくらいで、山伏衣装を着ている。しかし、その顔にある口は鳥の嘴の様であり、背中からは黒い羽があり、体の一部も同色の羽で覆われていた。
そう、彼は人ではなく、ここジパングでは天狗と言われ、恐れられている妖怪だった。
「ああ、あんた動物の手当てとかできたよな。」
「そりゃあの。なにせこんな山じゃから、人より動物の方が多いからの。」
「ならよかった。見てもらいたい者がいる。」
俺が家に招き入れると彼も入ってくる。そして蛇を着て、驚いたように声を上げる。
「ほぅ、白蛇かい。いったい何があったんじゃ?」
「山の中腹辺りで子供に殴られてたんだ。一応、打ち身の薬で治療したんだが、万が一もあるから見てもらおうと思ってな。」
「お前さんの薬は動物にもよう効くからのぉ。どれどれ…。」
そういうと彼は蛇の身体をなぞるように手を動かす。本人が言うには神通力という力を使って、体の異常を探っているらしい。するとすぐに手を動かすのをやめた。
「ふむ。どうやら異常はなさそうだのう。お前さんの薬の効いているようだの。
 ただ明日の朝までは動けないじゃろうから、その間看とってくれんかな。」
「どちらにしろ、今日は家にいるつもりだ。しかし、呼んですまないな。」
「いや、お礼を言いたいのはこちらのほうじゃ。山の者を助けてくれたんじゃからな。」
俺が謝ると彼はほっほっほと言って笑う。だが俺のそれでは気が済まない。
「それでも俺の気が済まない。何か礼をさせてくれ。」
「ふむ……。なら今度お前さんの薬を多め
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