「まずいな…。」
教団の魔界攻略軍司令官のダウル卿は悩んでいた。
彼はディスペラツィオネ(disperazione)という反魔物国家にある教団の幹部であった。
そして今回の作戦では自ら立候補し、兵を率いてきた。
もちろん今後も教団での発言力を維持するために参加したのだ。
今回の侵攻作戦では教団直属の騎士団10000人、そして傭兵が5000人ほど雇った。
対する相手は魔物と人含め、5000人ほどだった。
さすがに3倍の兵力差があればそれなりに戦果は出せると考えていた。
しかし結果は無残だった。最初の戦いで甚大な被害を出したわが軍は少しずつ勢いをなくし、1か月もの魔王軍との戦いで騎士団5000人、傭兵はほとんどがやられるという結果になった。現在こもっている拠点を守るだけで精一杯の状況である。
「このまま帰還してはわたしが責任を取らねばならない。それだけは避けねば…。」
そしてジオはある策を考え付いた。うまくすれば責任を問われずに済むかもしれないと考えたジオはある男を思い出した。
夜の作戦会議後、ジオはそいつを呼び出した。
そいつとは教団第1軍団長ハインツの副官である。
そいつは貴族でも何でもないが下からのし上がってきた男だった。
副官を任されているだけあって、腕が立ち、状況判断もできる。
そしてその戦いぶりから味方から信頼されている。
しかし、何を考えているかわからない彼は上からは疎んじられていた。
「教団第1軍 軍団長副官 アキラ・ハヤカワです。」
「おぉ、入ってくれ。」
声をかけるとそいつは入ってきた。
見たところ、そいつはどこにでもいそうなやつだった。
灰色の長い髪を紐でまとめた中肉中背の男で中性的な顔立ちをしていた。
しかしその体には大小さまざまな傷があり、幾多の戦場をくぐり向けてきたことを証明していた。
「おまえを呼んだのはある任務をやってもらうためだ。」
「どのような任務ですか?」
「先ほどの作戦会議で決まった通り、我が軍は明朝撤退することになった。
おそらく魔王軍はそれを察知し、追撃してくるだろう。
そこでだ。お前には追撃してきた敵軍を止めてもらいたい。」
「つまり、殿をしろと?」
「ああ、そうだ。これ以上我が軍に被害を与えるわけにはいかんのだ。
そこで後方1km先に両側が深い森になっていて軍隊を動かしにくく、
待ち構えるにはちょうどいい隘路がある。
ここで待ち受け、奴らの追撃を阻止してもらいたい。」
「…。」
「この撤退を成功させ、帰還したならば望む報酬をやろう。」
「…、わかりました。引き受けましょう。」
「よろしい。では頼んだぞ。」
そしてハヤカワは一礼した後、退室した。
「さて、あいつが敵を止めれればよし、失敗したとて兵士一人の命で済む。
万が一、無事に帰還した場合のことを考えねば…。」
そういってジオは自分直属の部下を呼び出した。
俺は自分の陣に帰りながら考えていた。
撤退するのは賛成だが、一人で殿を務めるとは考えていなかった。
あまり味方がいたところで邪魔なだけなのだが…。
いろいろ考えているうちに自分の陣についた。もう部下たちは寝ているようだ。
「アキラ・ハヤカワです。ただいま帰還しました。」
「入れ。」
声を聞き、ひときわ大きな幕舎に入ると、そこには巌のような人がいた。
彼はハインツ・クルーズといい、この部隊の指揮官である。190cmほどの身長で、70歳とは思えないほどの筋骨隆々の体を持っている。大きめの教団の鎧に身の丈ほどのクレイモアの使い手で、総省のころから多くの武勲を立てた英雄である。
「ジオ殿に呼ばれていたようだが、何があった。」
「司令官にh「今はわしとお前しかおらん。普段の口調でいい。」」
「…、わかったよ。じいさん。」
「それで、なにがあった?」
ハインツが促すと俺は答えた。
「明日の撤退の時、俺一人で追撃してきた敵を食い止めろと…。」
そういうとハインツは眉毛をピクリと動かした。
普段、ほとんど無表情のじいさんだ。それなりに驚いたということか。
「そうか…。」
そういうとじいさんは立って、上を見上げた。
「わしらのために苦労を掛ける。」
「かまわねぇよ。どっちにしろ5年前あの森であんたに拾われた命だ。
あのときの恩を返せるなら本望だ。」
「もう5年もたつのか…。」
そう、あのとき死にかけていた俺はこの人に助けられた。
そしていろいろなことを教えてもらった。
それから俺はこの恩を返すため、教団に入り、自分を磨いてきた。
「アキラ。」
しばらく目を閉じて、何か考えていたじいさんが目を開けて呼んだ。
「なんd「敵の足止めに成功しても帰ってくるな。」」
「どういうことだ?」
怒った俺は座っていた椅子を蹴倒して立ち上がった。それを見てじいさんは
「…、すまん、言い方が悪かった…。」
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