走る
走る
今日の為に用意した彼女への贈り物を持ってなりふり構わず待ち合わせに指定した浜辺へ……!
俺-江上達也-はちょっとした計画を立てていた。
それは、バレンタインに海の中にいる彼女にチョコをあげようというものだ、女々しい?うっせぇ。
そのためによく浜辺で会うメロウの姉ちゃん(独身)に今どこにいるのかわからない彼女に今日ここに来てくれるように伝えてと頼んだ、多分姉ちゃん独自のルートとやらの力で彼女に伝わるはずだ。
そして肝心のチョコはメロウの姉ちゃんに頼んだ帰りに露店で関西弁で目の下に隈のある店員さんが丁寧にラッピングされたものを格安で売ってくれた、どんなチョコかと聞いたが、にししと笑いながら「大丈夫や、彼女さん絶対喜んでくれるさかい、安心したってや!」としか答えてくれなかった。
そうして多少の不安はあったけど準備はこっちの完了、後は彼女が来たら渡すだけだ!
……しかし緊張でなかなか寝つけなかったせいか、目が覚めたらもうすぐお昼の時間だった。
「達也さ〜ん!」
全速力で浜辺につくとそこには嬉しそうな声で俺の名前を呼ぶ俺の彼女であるシー・ビショップのファリナが手を振っていた。
「ごめん!待たせた…よな」
到着して早々に彼女に謝るという情けない行為に恥ずかしさがこみ上げてくる、彼女は笑いつつ
「気にしないでくださいな、私も到着したのはつい先ほどですよ」
とフォローしてくれたが、正直恥ずかしさに拍車がかかってしまった。
「それで、急に私を呼び出してどうしたのですか?メロウさんは笑うだけで結局教えていただけなかったのですが……」
どこか不安そうな顔をして彼女が尋ねてくる、それもそうだ、こんな急な呼び出しなんて今までしたことなんてなかったし。
「ああ…はい、チョコレート、今日はバレンタインだろ?」
言いつつポケットからチョコレートを取り出す、走ってラッピングが崩れてないか心配だったけどどうやら大丈夫だったようだ。
「あ…ありがとうございます!…でも普通私の方から渡すものですよね……」
受け取った彼女はというと、こちらまで笑顔になりそうな程に喜んだ後苦笑をもらした。
「仕方ないさ、海の中じゃチョコは手に入らないし運べないだろ?それより食べてくれるとありがたいよ」
「ありがとうございます……それではありがたく頂きますね♪」
悩んでも仕方ないことと割り切ったのか、彼女は嬉しそうな顔に戻りラッピングを解くとピンク色の箱が姿を現した。
「箱も綺麗なのですね…高かったのでは?」
正直既にラッピングされた物を渡されたので多少の不安はあったが、問題なかったようだ。
「いや、お店の人が安くしてくれたよ」
逆チョコなんて珍しいから、かもしれないというのは頭の隅に追いやりつつ答える。
「チョコも丸くて可愛いです…では……」
あーん、と口を開けて一口でチョコを食べてしまった。
味は大丈夫だっただろうか……
「美味しいかい?」
なんとなく気になって彼女に聞くと
「はい…とっても…
―とさっ……―
美味しかったですよ
#9829;」
味の感想を聞いたはずなのになぜか押し倒されてしまった。
「いきなりどうしたんだ!?」
「え…?このためにおねーさんをよんでくれたんでしょう…?」
―おねーさん…?―
どこかとろんとした表情で彼女が答える、慌ててチョコの箱の裏面を見てみると
『商品名:陶酔のブランデーチョコ』と書いてあり、その下には
―きばりや!少年!―
とメッセージが入っていた……
「もう…よそみはめーですよー?」
箱を見ていたのが不服だったのか彼女は両手を俺のほほに当て強引に目線を合わさせた。
「ふふ…いつみてもたーくんはかわいいですねー♪」
しばらくじーっと俺の顔を眺めた後ににへっと笑いながら俺をぎゅーっと抱きしめ頬ずりをしてくる、俺はというと押しのけるのも酷い気がしてなされるがままである。
「男に可愛いって酷いぞ…」
何も反撃しないのも悔しいので、とりあえず可愛いの部分だけでも訂正してもらおうと思い声を上げると
「んもぅ…おねーさんにくちごたえするんですかぁ…?いけないこですねぇ……」
彼女はそう不機嫌そうな声を上げると頬擦りを止めて今度は豊満な胸を俺の顔に当てて再び抱きしめてきた。
「ほらほら〜、だーいすきなおねーさんのおっぱいですよー、たーくんいつもみてましたよねー?あまえてくれてもいいんですよー♪」
…普段どこを見られているか完全にばれていたらしい。
それよりもこうもむにゅむにゅと押し当てられると…!
「ふふっ…もうこっちのこもげんきいっぱいですね…
#9829;」
そう、すっかり愚息が固くなってしまったのだ。
「こんなにかちかちじゃないですか…
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