時間が流れるのはとても早いもので涼しく過ごしやすかった秋があっという間に過ぎ冬を迎え
もうクリスマス当日。
クリスマスといっても彼女もいない俺-早瀬亮太-はサンタの衣装を着てクリスマスパーティ用のケーキを買いに来たカップルに顔に出さないように怨嗟の念をこめ手渡すという、簡単に言うとケーキ売りのアルバイトに精を出していた。
「憎らしいお客さんしか来ないな……」
来る客のほぼ全てが魔物娘さんとのカップルばかりなのでお客が来ない時に思わず口に出してしまったので
「仕方ないよ、今はむしろ相手のいない君の方が珍しいよ?」
と隣に立っていたサキュバスの店長に聞こえてしまっていた。
「そういえば早瀬は何で相手できないの?そう顔が悪いわけでもないと思うけど?」
ありがとうございました〜と二人で営業スマイルを浮かべつつ俺の怨念のこもったケーキをカップルへ手渡した後に店長が尋ねてきた、自分自身で知りたいわと心の中で叫びつつも
「わかりませんよ、男女共学なんだからできて当たり前と思っていたんですけどねー」
と気だるげに返した、ちなみに男女比4:6程度で普通なら彼氏がいない子の方が多いはずだ。
「なに早瀬、避けられるようなことでもしてるの?」
皮肉な笑みを浮かべつつ店長が尋ねてきた、少し腹が立ったが我慢して
「俺はいたってまともな人間男性です、思い当たる節なんてありませんよ」
「じゃあ…中でケーキ作りしてる沙雪ちゃんにアプローチしてみたら?」
沙雪ちゃんというのはケーキ製作の方で同じくアルバイトをしている御津沙雪というホルスタウロスの子の事だ、本人曰く俺と同じく彼氏はいないらしい、可愛いのに、信じられない。
「御津さんですか?業務連絡以外で話しかけようとすると彼女から離れていってどう見ても脈なしですよ……」
「ほほう?それはどうだろうね?」
「何ですかその反応は……」
「別に、なんでもないよ♪」
愚痴りつつも業務を淡々と進めていく、もちろん怨念をこめることも忘れない。
そしてアルバイトの終わる時間が近づいた頃
「あ、雪だ」
大分客も少なくなったので横で首や肩を回していた店長が呟いたので空を見上げると確かに少しずつだが雪が降り始めていた。
「ホワイトクリスマスか…今年は彼女持ちはずいぶんとロマンチックに過ごせそうですね……」
「うん、なんとも素晴らしい聖夜だね、私も旦那と……」
そのまま少し顔を赤くしつつ妄想が口から駄々漏れな店長の横で心の中で店長や彼女持ち達に妬みの声を上げていると、いつの間にか我に返った店長が片付けを始めた、どうやらアルバイトの時間が終わったらしい。
さっさと帰って飯食って眠りたいものだ、彼女いない奴のクリスマスなんて日常に何の変わりもない。
「お疲れ様、今日はクリスマスだし余ったケーキ好きなの持って行っていいよ!あ、中でケーキ作りしてる沙雪ちゃんにも伝えておいてね」
片付けがもうすぐ終わりそうなタイミングで店長から特別サービスが言い渡された。
もらわずに帰る事もできそうだがどうせならという事でスタンダードなショートケーキを選んで持ち帰ることにした。
「それじゃあ、早瀬君、メリークリスマス、サンタ衣装で沙雪ちゃんに会わないようにね?」
「ベリークルシミマス、赤色は要注意ですからね……」
阿呆な事を言いつつアルバイトが終了し、後はサンタ衣装から着替えて御津さんに伝言を伝えるだけだと店内に入った途端
「あ」
「え?」
ちょうど中で旦那さんに同じような事を言われたのだろうか、調理服を着たままの御津さんと出くわしてしまった、流石ホルスタウロスと言うべきか調理服の胸の部分がとてもきつそうだ。
眼福眼福
「あ、ええと……」
「お疲れ様です、御津さん、店長がケーキ好きなのを持っていっていいよって言ってましたよ、それでは、メリークリスマスです」
「あ、はい、ありがとうございます…あっ……」
突然出くわしたせいで上手く喋れなさそうなので先手を打って店長からの伝言を伝えてさあ後はさっさと着替えて帰るだけだと更衣室の扉を開けた時である。
「んもぉぉぉぉっ!」
突然背後から猛牛のような鳴き声が聞こえたので驚いて振り向くとそこには顔を赤くして少し蕩けたような表情でこちらに向かって突進してくる御津さんの姿があった、なぜ?……あ
「しまった、サンタ服見せちゃぐほぅ!?」
言い終わる前に見事な突進を受けてそのまま更衣室の中に二人で飛び込んだ、その衝撃で偶然扉は閉まったようだ。
「はやせさぁぁぁん♪」
「御津さん、落ち着いて!?」
御津さんが嬉々とした表情で俺の腹の上で調理服を脱ぎだしたので静止の声を上げるが全く聞こえていないようである、そしてついに
ぶるんっ!
「おお…って違う!御津さん、止ま
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