第二章 外・古の目覚め、永久の闇


 アーサーは手元の、空の箱を弄びながら思った。

 なんだ、結局私が全てをやれば良いのだ。この力さえあれば何もいらない。

「いや、要らない、という事はないな。小手調べは必要だ」

 兵士でこの力は試した。幾らかは発狂し、幾らかは潰れ、幾らかは成功した。この小箱に収められていた力は元々からすればほんの僅かなものであったが、それでも、アーサーには十分すぎる程の物。

――予定は変更だ。直接要国に移動する。これがあれば暫くは薄氷を踏む真似をしなくても良い。

 これが何なのかはどうでも良かった。大事なのはこれで得られたものである。今ならばあのオズワルドにすら勝てる。

「いや、駄目だ。まだ馴染んでは無いな。馴染み切れば勝てるが、それまでは潜伏だ。となるとやはり要国を手に入れておく必要がある――だが、やはりこれのお蔭で面倒な策謀をする必要はなくなった。誰かは知らないが、私にこれを寄越したことを、感謝するぞ」

 確かにこの力は凄まじいものだ。だが、思考を止めてはいけない。冷徹に運用する事が、オズワルドに勝つカギだ。とアーサーは考えた。しかし、彼は既に気が付いていなかった。いや、気が付けなかったと言うべきだろう。

「さて、行くか」

 彼に従うは、黒い影のような存在。魔物とも、なんともつかない歪な影。兵士は一人を除いていない。そして、彼の思考も、気が付かぬほどに変貌している。

「先ずは要国だ。あの国が一番糧にしやすい」

 そう、アーサー自身は最早なく、アーサーの様な思考をする何かに、最早変貌している。彼は何者なのか。それに応える者はおらず、例え居たとしても、この黒い影の一員に変えられていただろう。

 いや、もしかすると、アーサー自身もこの影の中に居るのかもしれない。だがそれに何の意味があるのか。残る一人の兵士が聞いた。

「アーサー様、ワームを利用するのはもうよろしいのですか?」

「理由がなくなった。この力があれば要国までたどり着く間、目立つ真似をする必要が無い。貴様は忠実な兵士だからな、私の体にこれが馴染んだら、最初の“貴族”にしてやろう」

「有難き仕合せ」

 本当にそう思っているのかは兎も角、彼にはそう答えるしかない。アーサー王子にこれを持ってきたのは彼だが、その結果が、この得体のしれない存在である。

 一体何が入っていたのかは判らないし、最初から見なかったことにすればよかった、あるいは捨ててしまえば良かったのかもしれない。

 だが、彼はこの得体のしれない箱を渡した。

 静かに、旧き時代の声が、宵闇に響く。

15/10/13 23:07更新 / Ta2
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