幕間〜エルファの悪夢〜

諸君は幼い頃に悪夢にうなされた経験は無いだろうか。
高い所から落下する、底なし沼に埋まっていく、恐ろしい怪物に追いかけられるなど、それは人によって色々だろう。
ちなみに俺は教育番組の工作のおっちゃんにラーメンをすすりながら追いかけられるという意味不明な悪夢を見たことがある。これは余計か。
今回の話はその悪夢に関することだ。いや、怖がったのは別に俺では無いのだけれどな。

〜魔術師ギルド 研究室〜

今俺は椅子に座らされ、妙な装置を取り付けられたティアラを被せられていた。
その装置を辿っていくと、妙な機械……ではなく、魔方陣へとつながっていた。これは一体どういうことだろうね。

「実験に協力して欲しいからって事で来たわけだが……これは一体何だ?」
「これはの、兄様の……なんだったかの、でんのーせかい?にわしが入り込む為の術式なんじゃ。」

どうやら以前話した事のある俺の脳チップに関する事に興味を持って色々と試行錯誤していたらしい。

「将来的には人の精神とかにも入り込めるようにして……廃人になってしまった人の心を治す事にも使えるようにしたいな〜と。」
「で、本音は?」

そう言った途端、彼女が頬に手を当ててくねくねと身をくねらせ始めた。

「誰も邪魔の入らない世界で兄様と二人っきりでイチャイチャしたいな〜と。」
「……さよか。」

ちなみに今回ラプラスはお留守番だ。
別に戦闘なんて起こるはずもないので持ち込んでいないだけなのだが。

「さて、いくぞい!」
「はいはい、ど〜ぞ……ん?」

ふと、視界の端っこにゲスト入出のダイアログが。
名前は……『Blade』……?この世界で俺の脳チップに干渉することができるのは彼らだけなので、恐らく関係者のはずだが……。

「おい、エルファ。ちょっとま

言い終わる前にエルファが詠唱を終わらせ、急激に意識が電脳世界へと引っ張られていった。



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〜混合電脳世界〜

いつものダイブプロセスとは異なった感覚に戸惑いつつ、目を開けると……そこは霧がかった静かな街になっていた。
バトルシミュレーターが起動したのであれば驚く事ではないのだが、もっと驚くべき事は他にあった。

「なんか……でかくね?」

そう、周囲の建築物が異様に大きいのだ。
強いて言うのであれば、そう。巨人の街に来てしまったかのような感覚が近い。

「あれ……ここは?兄様〜!どこいったんじゃ〜!」

後ろの方からやたら大きな声が聞こえてきた。
というか、この声には聞き覚えがある。

「エルファか。一体何が起きて……」

振り向いて、俺はさらに驚愕する事になった。



巨大化したエルファが、そこにいた。



「ちょ、でけぇ!?どうしたんだエルファ!?」
「む……兄様の声。兄様〜?どこじゃ〜?」

聞いていて耳が壊れそうだ。
鼓膜を震わす大音量の叫びは脳を直接震わすほどのソプラノボイス。
これを一日中聞かせられたら気が狂いそうだ。

「うるせぇよ!もう少し声のボリューム落とせ!」
「……一体どこに……あ。」

漸く足元の俺に気がついたようだ。
屈んで俺をまじまじと眺めるエルファ。というかすじが見えている。すじが。

「兄様が縮んどる……。」
「こっちから見たら周りが異常にでかくなっているように見えるんだがな。」

俺を潰さないように手のひらに乗せると、目の高さまで持ち上げた。
というか、これは高すぎて地味に怖いぞ。

「兄様はでんのーせかいではいつも小さくなるんかの?」
「んなわけねぇだろ。いつもと勝手が違うんだよ。」

口元と近いお陰でより一層声がでかく聞こえる。正直言って頭が痛い。
耳を塞ぎながら話をしている俺に気がついたのが、少し声量を落としてくれた。

「一体どういうことなのかのぉ……」
「わからん。以前から魔力が俺の脳チップで妙な変質を見せることが多々あったんだが……これもその一つかもしれないな。」

俺の言葉に妙に納得していたエルファだったが、急にこの世の終わりのような表情をして固まった。
一体どうしたのだろうか……

「このサイズの兄様ではイチャイチャできないのじゃ……」
「そうかい……、そりゃ残念。」

ガックリうなだれているエルファに呆れていると、遠くからなにか唸るような音が聞こえてきた。

「この音……単分子カッターか……?しかしもっと低いような……」
「な、なんだか不気味じゃの……」

その間にも唸りは段々と近くへと聞こえてきている。

「何が起こるかわからんし……早めにログアウトプロセスを起動しとくか。この状態で襲われたら反撃できん。」
「早くするのじゃ、何かが近づいてきおる……」

しかし、ログアウトプロセスを起動しようとしても帰ってくるのはエラーの反応
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