第四十四話〜鏡合わせのジェミナスタンゴ〜

一般的に兄弟という物は仲が良い物、悪いもの、どうでもいい物に大別される。
仲が良ければ互いに助けあったり、補いあったりするだろう。
仲が悪ければ喧嘩もする。どうでも良ければ何も起こらない。
では、会ったこともないような兄弟と遭遇した時は一体何が起こるのだろうか。
互いに馬が合うかどうかも分からない以上、何が起こるかも分からない。
俺?俺は……まぁひどい目にあったとだけ言っておく。

〜冒険者ギルド ロビー〜

季節は夏。厳しい暑さの中如何お過ごしだろうか。
森林からはセミの鳴き声がひっきりなしにラブコールを発し、照りつける太陽は灼熱の太陽光線を地上へと照射してくる。
それでもここモイライの湿度はヨーロッパクラスなので日本の夏ほど蒸し暑くはない。
そう、蒸し暑くはないはずなんだ。

「あつい〜」
「あついよ〜」
「あついのじゃ〜」
「あち〜」
「………………」

蒸し暑くは……

「だ〜!お前らこのクソ暑いのになぜべったりとへばりついてくる!暑いだろうが!」
「離れると誰かに独占されそうなのじゃ〜」
「おにいちゃんといっしょにいられるならがまんする。」
「擬似蝋燭プレイ」
「みんなのまね〜♪」

こいつらは……
しかも周りは止める様子もなく、強制我慢大会を強いられている俺をニヤニヤと眺めている。誰か止めろ。

「あらあら、モテモテじゃない。」
「そりゃどうも。熱中症で倒れたら労災入るんだろうな?これは。」
「まさか。どう見てもプライベートが理由でしょ。」

ミリアさんはやはり茶化すことしかしない。最近この人が悪魔なんじゃないかと思えてきた。というより悪魔だった。

『そんなに暑いのであれば何か冷たい物でも食べに行ってみてはどうでしょうか?』
「グッジョブラプラス!いい提案だ!」
「残念、そんなアルテア君にお仕事で〜す♪」

泣きたい。



〜クエスト開始〜
―ドッペルゲンガーの調査―
『近頃教会の領内でアルテアに似た人物の目撃例が多数寄せられている。              
街の中で話しかける分には何もされない(というより反応されない)のだが、一度魔物や、それに同行している人物を見つけると即座に抹殺行動に移るという。                        
これに関する真相を調べていただきたい。                                  
                                           冒険者ギルド本部 情報部』

「ついに本部からのお声がかかりましたよ……っと」
「そうですね……でもなんでそのドッペルゲンガーってアルテアさんに化けているんでしょうか?もしかしてアルテアさんを狙っているおと」
「やめろ。その先を言うな。」

表向きはドッペルゲンガーの調査となっているが……

「ミリアさん、この間話したことは本部には?」
「報告済みよ。尤も、ごく一部の人間しか知らないでしょうけどね」

となると今回の依頼……というか命令はその後始末でもしろって事だろう。

「やれやれ……随分と厄介な事を押し付けられたものだ。」
『とは言えこれは私達の問題です。私達以外に任せるのは……』
「わかっている。自分のケツじゃないが俺が拭わなきゃいけないんだろう?ならやるしかないじゃないか。」


「あ、あの!」

出かけようとすると後ろから呼び止められた。つい最近ギルドの受付になったエンジェルの少女……シェリアとか言ったか。

「ミシディアの近くで倒れていたり隠れている兵士がいたら……仔細を漏らさずに報告していただけませんか?」
「あぁ……あんた離れ離れになっちまった元部下達を探してるんだっけ。」

大体そんな事をミリアさんから聞いたような気がする。
まぁ自分としてもそのぐらいの助力は惜しまないつもりだ。

「りょーかい。ま、見つかったら報告するよ。」
「おねがいしますっ!」

深く頭を下げる彼女に背を向け、後ろ手に手を振ってギルドを出る。
運良く見つかりゃそれでよし。見つからなきゃ……彼女には気の毒だが何も無しと言うしかないだろうな。


〜ミシディア近郊〜

旅の館からカードポータルで転送可能圏ギリギリの所へ飛ばしてもらう。
流石に街の中へ直接飛ばしたら騒ぎが大きくなる。なにせこういう転送技術は向こうには無いそうだから、親魔物領から来ましたと看板をぶら下げて歩くような物だからだ。

「っほ!っと。」

この移動方にも慣れてきた。宙返りをうって着地する。

「さて、行きますか。」
『言動には十分注意してください。即捕縛という事はないでしょうが、不審に思われると後が面倒ですから。』

俺のドッペルゲンガーが目撃されるのはこのミシディア付近が最も多いそうだ。
ということはそいつの
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