第四十三話〜使命〜

〜???〜

『主は……忌むべき魔物を滅ぼせとおっしゃいました。』

これで通算7度目か。あと何回あるんだろうな。

『私はその命を受け、地上に降りました。教団の方々は私が降りてきた事に至極喜び、歓迎してくれました。』

大きな聖堂で天使を歓迎する式典が開かれている。
厳かな空気の中、天使へ祝福の賛美歌が歌われている。

『期待されている。そう思っただけで身が引き締まる思いでした。これから、この人達と共に悪しき魔物達を滅ぼす……そう、世界に平穏が訪れるまで。』

騎士と共に行軍をする天使。その隣には騎士団長と思わしき人物が随伴している。

『軍を率いていく中で、私は私の中に不可思議な感情が生まれている事に気が付きました。共に行動している騎士団の団長……ケリーさんでした。彼を見ていると、胸が締め付けられるような気持ちになるのです。』

エンジェルが団長を遠巻きから見つめている。
その瞳からは強い慕情の念が見て取れた。

『彼は、私の事を自分の騎士団の象徴としてしか見ていませんでした……しかし、いつか……いつか私の事をもっと特別な存在として見てくれないか……そう思っていたのです。』

彼女はその感情の正体に気づいていないようだ。
見ている分には微笑ましいのだが、エクセルシアに取り憑かれる奴は何かしら精神の均衡を崩すような何かを経験しているのだ。おそらくは……

『そんなある日です。夜中に彼が……駐屯地から一人でこっそりと抜け出す所を見かけてしまったのです。』

暗がりの中、男の背中が低木の中へと消えていく。
エンジェルはそれを追いかけている。

『彼は……彼は……!ダークエンジェルと……密かに連絡を取り合っていたのです!』

ひっそりと隠れるように話をする団長とダークエンジェル。
傍から見れば逢引のように見えなくもない。

『目の前が……真っ赤になった錯覚がしました。気がついたら、彼が私の足元で血まみれになって倒れていました。それを見た私は……全身の血が引くような感覚に囚われました。』

後ずさりしながら男から離れるエンジェル。
次の瞬間には背中を向けて逃げ出していた。

『いくら敵と通じていたとしても……彼は私にとって特別な存在だったのです。それを……自らの手に掛けてしまった。殺してから気づいたのです。私は……彼が好きだったのだと。』

泣きながら走るエンンジェル。
彼女の背中には既に水晶の翼が生えていた。

『だから……彼の仇討ちをすることにしました……魔物さえ居なければ……私は彼を失うことは無かった……彼と会うことも無かった……彼が……死ぬこともなかった……!』

上空高くへと舞い上がるエンジェル。もはや彼女には想い人を死に追いやった魔物しか見えていないようだ。

『全部……全部殺してやる……!これ以上……私みたいな天使や人を増やさないために……!ネダヤシニシテヤル……!』



『それは、八つ当たりだ。』

場所は夜中の空高く。足場は無いのに不思議と立つことができた。
振り向きざまにエンジェルが水晶の翼を俺へと叩き付ける。
が、俺はその羽根を片手で受け止めた。
力を込めるとその水晶は粉々に砕け散る。

『いくら魔物を殺しても団長は戻ってこないだろう。それに直接手を下したのはお前だ。そのダークエンジェルだってそいつを引き入れようとしていただけかもしれんぞ?』
『ナラ……ナラオナジダ!カレヲユウワクスルマモノハ……ヒトヲユウワクスルマモノハスベテケシサル!』

完全に頭に血が上ってやがる。

『醜い嫉妬だな。そこで頭に血を上らせずに事情を聞いても良かっただろうに。』
『ウルサイ!カレハワタシノモノダ!ダレニモ……ダレニモワタサナイ!』

しかし、何か違和感がある。そして、あることに気がついた。

『悲劇のヒロインに浸っている所で悪いが……お前は何か勘違いをしている。』
『ナニガ……』

いくら探しても無い。呼びかけても、来ない。

『あの団長、死んでないぞ?』
『……ぇ…………?』

いくらその団長の魂を呼び寄せようとしても出てこない。
原理はわからないのだが、恐らくは対象が生きていると呼び出せないのかもしれない。我ながらファンタジーな脳チップ(頭)の作りをしていると思う。
つまりそれが意味することは……。

『お前を説得するためにその団長の魂を呼びだそうとしたが……全然来ない。ナシのつぶてだ。』
『ちょっと……ちょっと待ってください!彼は確かに私が……!』

焦るエンジェル。そりゃそうだ、全部が自分の勘違いだとしたらコイツは相当なマヌケになる。

『死体は確認したか?』
『死体って……彼は確かに血まみれで……!』
『血まみれで……何だ?脈拍は確認したのか?心臓は動いていたか?』
『…………』

真っ青になるエンジェル。ようや
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