双子の間にはシンパシーという共感現象が起きる、とかなんとか。
たとえ遠く離れていてもお互いのことがなんとなくわかるんだそうな。
だったらクローンの間にもそういう現象って起きるのかね?ほら、双子どころか同一人物にも近いものがあるんだし。
え、誰もやったことがない?そりゃそうだよな。
〜海の玄関 ギラン〜
ジパングからの航海を満喫した俺とプリシラの二人は、海の玄関と呼ばれているギランへと降り立つ。
時刻は朝の8時ぐらい。波止場から見える街の大通りは朝のまどろみから一転して慌ただしくも活気のある様相をしている。
本来ならば旅の館で一直線にモイライまでたどり着く筈だったのだが、プリシラのわがまま(?)とラプラスの進言で船に乗った俺達はギランを経由して馬車で帰ることになった。
ちなみに馬車のチケットも取得済みだとか。
「むぅ〜……」
「ん、どした?」
隣を見るとプリシラがうんうんと唸っている。
狐にでも摘まれたようなそんな感じだ。
「なんだか……物凄くおいしいイベントを逃したような気がします。」
「なんだそりゃ……」
そう言うとプリシラは俺のTシャツの裾を引っ張り、グイグイと道を戻ろうとする。
「もう一回乗りましょう!今度こそ何かが起きる気がします!」
「アホ言ってる場合か!?馬車のチケット取ってあるんだから乗れるわけねぇだろ!ていうかその船は戻りの船だ!今更ジパングに戻ってどうするつもりだ!?」
彼女を小脇に抱えるようにして大通りを進む。
馬車の時間まではまだ少しある筈だ。まずは腹ごしらえに食堂を探すことにしよう。
『きゃー、人さらいー』
「はいはい棒読み棒読み。」
〜食堂 『潮の香』〜
俺達は手頃な大衆食堂に入ると店員の案内で開いている席に着く。
注文したのは、俺が秋刀魚の塩焼き定食、プリシラがシーフードドリアだ。
この辺であればまだジパングの食文化が届いているが、モイライまでもどる頃にはほぼ見かけなくなっているだろう。
故にこの食堂が最後の和食となる。何だか寂しくなるな。
「ギランからモイライまでは馬車でどのぐらいだ?」
俺は秋刀魚の塩焼き定食をつつきながらプリシラに行程を尋ねる。
彼女も同じようにドリアをつつきながら返してくれた。
「大体3日といった所でしょうか。乗合とはいえ高速馬車なので多少距離が離れていても結構早く着きますよ。」
迷い家を使えば一日で行けるのだが、ギルドはおそらく迷い家の存在を知らないだろう。
故に経費で落とせない。なんとなく残念な事だ。
「休めるのはいいが……流石に何も無い日が何日も続くと退屈になるな。馬車の中継地点で食べ歩きでもするか。」
「そうですね。一日ごとに街に停まるのでその都度名産品を見てみるのも悪くないかも知れません。」
『無駄遣いのし過ぎで稼いだ分を使い切らないように注意して下さい。』
「わぁってるっての。」
その後、取り留めもない事をプリシラと話しながら食べ終わり、馬車の停留所へと向かった。
これから三日間は特に何も無い物見遊山の旅路だ。
何も危険なことは起こらない。
そう、思っていた。
〜二日後 道の宿場町 ポソン〜
馬車を降りた俺達二人は昨日と同じように市場へ向かい、めぼしいものがないか探す事にした。
その道すがら、信じられない物を見る。
「…………」
「どうかしましたか?アルテア……さ……」
道端の壁に貼ってある手配書。捕まえたり通報したりすると賞金がもらえるようなアレだ。
それ自体はさして珍しい物ではない。
問題なのは……
「これ……俺か?」
「です……よね?」
どう見ても俺の顔がその手配書に書いてあった。
賞金額は金貨30枚を超えている。
「……」
『道端で止まっているのは推奨できません。身を隠せる場所へ入りましょう。』
「あ、あぁ……」
俺はプリシラと共に近くの路地裏へと入っていった。
「どうなってんだありゃ……」
「わかりません……アルテアさん、私の知らない所で何かしました?」
「いんや……任務以外で人殺したことは……一、二回あったかな?」
「……それじゃないですか?」
「いや、判定はグレーだ。報告には『任務の途中、奴隷売買の証拠を突き止めて商船を撃沈。乗組員を不特定多数殺害』ってなっているはずだ。一応任務の範囲内……だと思う。もう一つは『拠点の提供者の身内に危害が及んだため、危機の排除を行った。』ってなっている。こいつも一応グレーゾーンだ。」
思い返してみたが、これ以外にアウトになりそうな物はない。
別に盗みを働いた覚えもないし、強姦をした覚えもない。全部合意だ。
器物破損も全て折り合いが付いている。では、何だ?
「罪状を詳しく見ていなかったな。プリシラ、見てきてくれるか?」
「わかりました〜。」
そう言
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