第三十九話〜江戸崎冒険活劇帳〜


〜江戸崎冒険者ギルド宿舎 アルテア自室〜

「っ……ぁ〜〜……」

ツールのアラームで目を覚ます。
昨日は大変だった……
羅刹の如く怒ったアイシャに追い回されて夜中まで鬼ごっこをする羽目になるし……
最終的に捕まって何されるのかとビクビクしていたら急にキスされるし……その後開放してくれたけど。

「しかし……キスだけで済んだのは僥倖か……」

もしサフィアとXXしてたら……

「美味しいのかも知れないけど〜……アイシャの為にならねぇよ〜……っと」

調子外れの歌を歌いながら着替えを行う。
そういやホルスターは枕元だったか。振り返って革製のホルスターに手を伸ばす……

「…………」
「…………」

布団の中からアイシャが顔を出してこちらを凝視している。
ここ……俺の部屋だったよな?

「昨日は激しかった……」
「ダウトだ。」

少なくともお前に本番はしたことがない。

「ちぇ……ひっかからないか。」
「少なくとも昨日酒を飲んだ覚えはねぇよ。大方お前がこっそり潜り込んだとかそういうオチだろ?」

見ると窓の鍵が外されている。器用な奴だ。

「とっとと顔洗って朝飯だ。お前も来るだろ?」
「もちろん。ここであんたの布団にくるまっているのも悪くないけどお腹も減ったしね。」

こいつもうサキュバスになってんじゃねぇか?



〜江戸崎冒険者ギルド ロビー〜

ロビーへと行くと妙に慌ただしい雰囲気がただよっている。
普段見かけない奴も走り回っているあたり異常事態と言わざるをえない。

「おいプリシラ、この騒ぎは何だ?」
「大変なんですよ!急に反魔物派宣言のお触れが出て城下町は上を下への大騒ぎなんです!現在正体不明の鎧武者が魔物狩りを行っていて……」

と、ギルドのドアが吹き飛ばされる。
入ってきたのは……

「ガーディアンだと!?」

霧矢峰の地下研究所で出現したカラクリ武者がギルドの中へと踏み込んできた。
咄嗟に仔鵺と虎牙鎚を引きぬいて振り下ろした刀を受け止める。
すると背後から矢が飛んできてガーディアンの顔面に突き刺さった。アイシャだ
しかし……

「うそっ!?なんでまだ動けるの!?」

さらにギシギシと力を込めて刀を押し付けてくるガーディアン。
頭を狙ったところでこいつの行動にはなんら支障がないのだ。

「ぉ……らぁ!」

ガーディアンを蹴り飛ばして転ばせ、仔鵺でゲンブジャケットを生成、それを振りかぶる。

「ゲンブジャケット!吹っ飛べ!」

命中したゲンブジャケットがガーディアンをパーツ単位までバラバラに吹き飛ばす。
出てきたコアらしき物を踏み砕いて機能を停止させた。

「ちゃぶ台でも畳でも何でもいい!バリケードを張れ!」

片っ端からちゃぶ台を入り口へと積み上げ、さらに足りない分を畳を剥がして積み上げる。
即席だがバリケードが完成した。



落ち着いたところでようやくアーサー達が宿舎から降りてきた。

「一体何の騒ぎだ?朝から騒々し……」
「ヤバいぞ。なぜかはわからんが反魔物派宣言の触れが出た。おかげで人魔揃っている冒険者ギルドは目の敵だ。」

簡潔に状況を説明するとアーサーの表情が引き締まる。
反対にリュシーは顔を真っ青にしてオロオロしている。

「領主は何と?」
「現在城下町にいる魔物、妖怪は全て江戸崎城に出頭しろと……その先の処遇は何も言われていません。」

今一番状況を詳しく知っているのはプリシラだろう。
それだけギルドの受付というのは情報に詳しくなければ務まらない。

「現在ギルドマスターが緊急の依頼を発行して……あ、今貼り出されました。」

カウンターの奥から使いっ走りの小僧らしき奴が和紙の巻紙を持って掲示板へ駆け寄り、それを画鋲で貼りつけた。


〜クエスト開始〜
―反魔の乱を鎮圧せよ―
『シーフギルドからの連絡で先程、江戸崎城内で謀反が起こった事がわかった。           
主犯格は元江戸崎領主の江戸崎永之助氏の右腕である佐間半蔵。                  
彼は江戸崎城を乗っ取り、この江戸崎を反魔物・妖怪の都市へと作り替えるつもりのようだ。   
さらに情報によると半蔵氏の室内から聖書と十字架が発見されたという情報もある。おそらく大陸の教団の差し金だろう。                                              
現在元領主の永之助氏は地下牢へ幽閉中。近日処刑されるとの情報もある。            
今回の任務は謀反の鎮圧および永之助氏の救出だ。                           
江戸崎城内および城下町にはアルテアの報告にあったからくりの姿もある。              
戦闘力は高く危険なため、必ず複数人で掛かるように。    
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