バフォメットのお姉さん……この場合は子持ちだから奥さんと呼んだほうがいいだろうか……に呪いを解いてもらって、僕の身体能力は飛躍的に向上した。
動き回れる時間も、剣を振り回していられる回数もケタ違いだ。
それでもやはり限界は訪れる。
「やっぱり……この剣は重いですよねぇ……」
「アイツが怪力だっただけだ。私から見てもアイツは人間には見えなかった。」
そう、ヴァーダントはかなり重く、振り回すというよりは振り回されるといった体なのだ。
いくら筋力を鍛えても限界は来る。魔法を使わない限り、人は人の枠を超えることができないのだ。
一応魔法は使えるので、身体強化の術をミリアさんに教えてもらって使ってみたのだけれど、燃費が悪すぎてあっという間に魔力が尽きる。
どうやらこれだけ重いものを魔力込で支えるには莫大な量の魔力が必要らしい。
それを身体強化も使わずに振り回していたアレクさんって一体……
「わざわざそれを使わなくてももっと使いやすい武器があるのではないか?」
「そうなんですけれど……ね。」
やはりアレクさんの遺志を継ぐという意味ではヴァーダントは使いこなせるようにしておきたい。
「苦戦しているようね。」
背後からいきなり声が聞こえてきたのでびっくりした。
振り向くとそこにはミリアさんが腕を組んで立っていた。
「はい……せっかく教えてもらった魔術もあまり効果が無くて……」
「そう、ならこんなものを使ってみたらどうかしら?」
そう言うと彼女は何か分厚くて古い本を渡してきた。
表紙を見る限りでは魔導書じゃないみたいだけど……
「魔道具図鑑……ですか。」
「そ。それの130ページを見てくれるかしら。」
パラパラとページをめくってお目当ての項目に辿りつく。
「グレイプル……手袋ですか?」
「えぇ。それを使うのだとしたらその魔道具は必須でしょうね。現にアレクもそれを使っていたわ。」
それを聞いて納得した。確かにこれがあれば使いこなすことができそうだ。
ちなみにサラさんはそれを聞いて目の鱗が落ちたかのように手を打っていた。
「唯一無二の物じゃないから努力すれば手に入れられない物ではないけど……問題はそれを作る技術を持っている種族なのよねぇ……」
『グレイプル:太古の昔、異界の神より授けられた技術でサイクロプスが創り上げた手袋。それを身に付けた者は無双の怪力を手にすることができるという。また、この手袋は炎や雷といった高エネルギーの物体を掴むことも可能であり、使用者にまで熱を発する武器を扱う上で必須の装備とも言える。』
説明を呼んで僕は愕然とした。
サイクロプス
かつての神族であり、今は魔物と化した種族だ。
高い鍛冶の技術を持っており、数々の神器を創り上げた。
そしてその代償として求めるのは……
「これ無理ですよね?」
「えぇ、無理ね。」
自身の子を残すため、一夜のお情け……砕けて言うとセックスを要求するのだ。
そして僕は……
「この時程自分の体質を恨めしく思ったことは無いよ……!」
「待て、それは体質さえどうにかなれば問題ないとも取れるぞ。」
即座にサラさんがツッコミを入れるが、実際問題そうなのだ。
それに……
「自分でするだけじゃ満足できないんですよ……!」
「「…………」」
この体になってから性欲が健全な青年クラスになり、それの処理が大変なのだった。
媚薬を買ってきておもいっきり自慰にふけったり、サバト製の自慰筒(中がふにゃふにゃしたゼリーのようなものでできている)を使ったりと小さい体の時はしなかった苦労を強いられている。いや、人間相手なら問題ないはずだけどね。何分相手がいない。
「処理してあげないの?」
「そんな危険なこと出来るわけがないじゃないですか……」
横目でニヤニヤとサラさんを見遣るミリアさん。
サラさんは額に手を当てて目をとじている。
どの道彼女にとって僕は想い人を死に追いやった死神なのだ。
だからそういうことに関しては頼れないし、頼りたくない。自分で背負った業くらいは自分で精算する。……この度し難い性欲も込みで。
「力づくで奪ってみる?」
「かつての神族に喧嘩を売ってどうするんですか……簡単にぺしゃんこに……」
「サイクロプスの貞操を」
「あなた鬼ですか!?ていうか物騒すぎますよ!?」
僕の場合、魔物との性交=魔物の死と直結しているので本気でシャレにならない。
殺してでも奪いとるを相手に気づかれずに実行できるのが尚質が悪い。
「殺してでも奪いとるかどうかはともかく交渉する価値はあるんじゃないかしら?何ならアレクがそれを譲り受けたっていうサイクロプスを紹介するけど。」
「最初からそれをお願いしますよ……話がやたら物騒な方向へ飛びすぎです……」
結局ミリアさんからそのサイクロ
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