今日もまた、各地に出現した自分の分身達を処分し、帰りの馬車でモイライへと帰るクロア。
隣にはサラも一緒だ。
基本的に任務を遂行する場合は二人とも別行動だが、それ以外の時間はほぼ常にと言ってもいいぐらい一緒に行動していた。
ギルドで二人を見た者達は大抵二人の仲を勘ぐる物だが、この二人はそういう関係になった事は一度もない。
そうなった時点で終わってしまうことを知っているからだ。
いかに化け物のような力を振りかざすクロアでも疲労は来る。
馬車にゆられてうつらうつらと船を漕いでいると、不意に馬車が急停車した。
浅い眠りから起こされて不機嫌そうに窓の外を見るクロア。
外には十字の鎧を着込んだ騎士たちがバリケードのような物の側に立ち、検問を行っているようだ。
この付近は教会の領地に近いため、不定期にこういった検問所が立つことがある。
お咎めなしになるまでが長いので魔物とは関係無い者にも評判が悪かった。
「(めんどくせェ……)」
心底嫌そうに頭をガシガシと掻くクロア。
彼自身神というものを毛嫌いしている事もあり、神という名の付く物は(それこそそれが幸運の神だったとしても)可能な限り避けていた。
しかし、彼らの目的からすると無視すれば余計に面倒なことになるのは目に見えている。
「どうする?変装用のアクセサリーは持ってきていないぞ?」
「潰す。その方が手っ取り早いし二度手間にもならねぇだろ。」
どの道サラが変装できないのであれば見咎められるのは時間の問題であるし、見咎められれば即戦闘に突入する。それならばいっそのこと先手を打ってしまったほうがその分楽である。
彼は腰のホルスターからナハトを引きぬき、無造作に馬車から出て行った。
それを見た兵士が一人こちらへと近づいてくる。
「馬車の中に戻れ。まだ検問が終わっていな……」
「うるせぇよ」
ナハトをその兵士の頭に突きつけ、発砲。
打ち出したのは貫通性の魔力弾。当然兜を貫通して中身がトマトを握りつぶしたような惨状になる。
周囲の兵士はそれをみて何が起きているのか理解できないようでポカンとしている。
背中からヴァーダントを引きぬき、少し離れたところで別の馬車の検問をしていた兵士(やはりこちらを向いて呆然としている)へ向けて投擲。
ブレストプレートを貫いて深々とヴァーダントが突き刺さった。
悠然と歩いてそれを回収する頃には事態を把握した兵士達に包囲されていた。
「貴様!何をしているのか分かっているのか!?」
「あん?何って……」
ヴァーダントが突き刺さっていた死体を片手で持ち上げると……
「ゴミ掃除だよ。見りゃわかんだろ。」
それを兵士の一団へと放り投げた。
鉄と肉の塊が高速で飛来し、兵士たちが吹っ飛ぶ。
あまりの衝撃に死体の腕がもげて飛んでいった。
「あ〜あ〜……まぁた散らかしちまった。こりゃ後片付けが面倒だな。」
人が死んでも眉ひとつ、それどころか汗ひとつ流さずに、それも心底楽しそうに笑うクロアを見て教会の兵士達はジリジリと後ずさっていく。
彼らの目にはクロアが人間ではなく、何か恐ろしい化け物が人間の皮を被っているように見えるのだろう、
「貴方は……一体何をしているのですか!?」
不意に甲高い声がクロアの耳に届いた。
「(どいつもこいつも第一声は何をしているのか、かよ。つまらねぇな。)」
声のする方へ目線を向けると、白い羽を生やした女性が浮かんでいた。
それを見てクロアが獰猛な笑顔を形作る。
「よう、誰かと思えばクソ野郎の使いっパシリか。今日も今日とてパシリごくろーさん」
彼の不遜な態度に彼女の顔が見る見るうちに赤くなっていく。
それもそうだ。敬愛する神をここまでボロクソに言われれば誰だって怒りの感情の一つも沸くだろう。
「百歩譲って私どもの兵士が無礼を働いたのであればお詫びしましょう。殺さなければならないほど腹が立ったのであれば私が代わりに傷を負いましょう……ですが。」
彼女はその端正な顔を怒りに歪めて彼を糾弾する。
「貴方には誰かを敬う気持ちという物が無いのですか!?私どもをおつくり下さった主にそんな呼び方を……」
「クソ野郎はクソ野郎だろうが。肝心なときに手を差し伸べるどころか谷底に叩き落とすようなクズに敬意を払う必要なんてさらさらねぇよ。それともアレか?お前はどんなに虐げられても全ては主の導きですぅとか言って受け入れる変態マゾか?」
クロアの物言いにさらに顔を真赤にするエンジェル。
周囲の兵士はそのエンジェルの様子を見て彼女から距離を取り始めた。
それもそのはず、彼女の周囲の小石が浮き始めたのだ。
「貴方は神を……神を、冒涜するというのですか!?」
「ッハ!テメェが誰を敬おうが崇めようが勝手だがな、それを誰かに押し付けようなんて考えはお門
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