第三十六話〜Active girl〜

固定概念とは恐ろしい物で、頭の中がそうと決め付けると他の何かが受け入れられなくなってしまう。
そんな状態は戦略的、戦術的にも大いなる悪影響を与えるので、指揮官は常に頭を柔軟に保たなければならない。これは姉さんの受け売りだけどな。
でもさ、いくら何でも原型を留めない程粉々にぶち壊す事はないんじゃないか?
え、それもありだって?ま、いいけどさ。

〜江戸崎冒険者ギルド支部 ロビー〜

翌日。俺達は依頼ボードに貼ってあったクエストを片っぱしから剥がしてちゃぶ台に並べ、誰がどれを受けるかを話し合っていた。
アーサーが自然と仕切る形になるのは一番の年長者だからだろうか。

「大別するのであれば、長時間拘束系、物資収集系、物資宅配系、標的討伐系、異変調査系だ。」

長時間拘束系のクエストは主に倉庫整理、要人警護など常に同じ場所にいるか、同じ人物の側にいるかというクエストだ。自然と掛け持ちが出来なくなる。

物資収集、宅配系は文字通り物を探し出したり、届けたりするクエスト。ダンジョンの探索などもこれに入る。情報も物資の一つだ。

標的討伐系は盗賊の征伐や、賞金首の捕縛、討滅など戦いがメインとなるクエストだ。
その性質上戦闘能力に長ける者が受けるにふさわしい。

で、異変調査系とは天変地異などが起こった場合にその原因を調査し、可能であれば排除する任務だ。
その性質上専門的な知識(魔術だったり気象学だったり呪術だったりと)が無いと遂行が難しい。
原因を調べて報告するだけでも任務完了となるのだが、解決できた時の報酬は中々に高い。

「ここにいる全員がそれなりに戦闘能力を持っているのは昨日のクエストで把握できている。問題は個々のスキルだ。」
「探索なら私が一番ね。エルフの目で見つけられない物はないわ。」

アイシャが名乗りを挙げる。確かにエルフであれば見つけられない物などほぼありはしないだろう。

「力仕事なら私とサクラさんが一番ですねぇ。持久力なら負けませんよぉ?」
こちらはリュシー。確かにオークとアカオニの腕力は特筆すべきものがある。

「私とアーサーは戦闘系ね。そこいらの雑兵なら目をつぶっていても倒せるわ。」
こちらはアーサーとエレミアのコンビ。この二人であれば相手がどんな手練であっても遅れを取る事はないだろう。

「で、アルテア。お前はどうなんだ?」
アーサーが俺に話を振る。

「うん、そうだな。戦闘の腕は昨日見せた通りだ。訓練も受けていたからそれなりに体力も筋力もあるし、注意力も高いから探索もできる。しかし……。」
俺は皆を見回す。

「探索能力もエルフに比べりゃ全然だし、力もオークに負ける。戦闘もデュラハンやリザードマンが本気を出したら俺なんて敵いっこない。」

つまり……

「器用貧乏だ。どこに出しても遜色はないが、活躍もしない。射撃は得意だが生憎武器がない。おまけに魔法も使えないぜ。」

自慢じゃないが、この一角特化型メンツにそれぞれの分野で勝てる自信がない。

「だから俺の采配は適当に決めてくれ。どこに置かれてもそれなりに役に立つと言っておく。」
「「「「「…………」」」」」

互いに顔を見合わせる。
ま、そりゃそうか。言いだしっぺがこれだもんな。

「そうか、ならばお前の配置はこちらで決めさせてもらおう。」

そう言うと、アーサーは依頼に目を通しながら紙を配り始めた。



それぞれがクエストを受け取り終わる。

「私とサクラさんは倉庫整理が3件ですねぇ。3日連続ですかぁ……。」

リュシーとサクラは商人からの倉庫整理依頼を3つずつ。

「酒蔵の運び出しか。頼み込めば一つぐらいは譲ってくれるかねぇ。」

こらそこのウワバミ。今からたかる気満々じゃねぇか。

「薬の材料探しね……。この薬草なら生えていそうな場所は知っているわ。」

アイシャは医者からの依頼で、足りなくなった薬草の収集。依頼は一つだけだが、集める物が結構多い。

「私は盗賊団の討伐で……アーサーが要人警護ね。適切な判断だと思うわ。」

元騎士のアーサーならば警護はお手の物だろう。縦横無尽に暴れ回るならばエレミアに丁度いい。

「……で、だ。」

しかし俺の受け取ったクエストは……。

「なんでこの初夏に大寒波を受けた村の調査なんだ?滅茶苦茶難易度高そうじゃないか。」

そこに書いてあった物は夏の初めに降りだした大雪の調査依頼だった。謎すぎる。

「これは物理的に仕方がない事だ。」
「なんでだよ。」

俺が疑問をぶつけると、彼女たちが口々に理由を話す。

「私は変温動物だし。そんな寒いところに言ったら冬眠が始まるわ。」
「私の鎧でそんな寒い中に出たらあっという間に体温が奪われて死ぬ。」
「寒冷じんま疹なんですぅ。」
「あたし冷え性なんだ。」
「雪の中じゃ手が震えて弓が
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