〜冒険者ギルド江戸崎支部 ロビー〜
「いっそ殺せ……」
俺はちゃぶ台に突っ伏してぐったりしている。
思えば24時間動きっぱなしである。
「大丈夫ですか……?昨日はあれから戻って来ませんでしたけど。」
「高山の登山の後に巨人と戦って12時間耐久リアル鬼ごっこしてみろ。どんなタフマンだって死ぬわ。」
それでも死んでいないこれ奇跡?自分の体力に軽く戦慄を覚える。
「あぁ……今日はもう働きたくねぇ……。」
「物凄く言いづらいんですけど……仕事です。」
助けて。
〜クエスト開始〜
―消えた妖怪の謎―
『この冒険者ギルドでも起きているが、近頃魔物や妖怪が忽然と姿を消す事件が増えている。ただでさえ感知能力の高い彼女達をどうにかする奴がいるとは思えないが、この件を放置する訳にもいかない。基本ギルド員全員で行うが、事件の解決まで漕ぎ着けた者がいたら特別報酬を支払おう。
冒険者ギルド江戸崎支部 ギルドマスター 神原弘幸』
「なぁ……どうしても受けなきゃダメか?」
「えぇ、一応全員で受けるとなっていますので。休憩は個人に任せてありますので、まずは休息を取ってからにしたらどうです?」
「そうさせてもらうよ……。っと、その前に行かなきゃならない場所があったな。」
突っ伏したちゃぶ台から身を起こし、靴を履いて軽く体を動かす。
体を動かしたことで少し頭がスッキリとした。いや、疲れは全然回復していないんだけどね。
「何処へ行くんですか?」
「これ作った工房。もう一つ渡してもらう約束になってる。」
俺はギルドを後にして工房へ向かった。頼んだものはもうできているだろうか。
期待に胸が膨らみ、足取りも少し軽くなった。5割減の5割増程度だけど。
〜工房『珠家』〜
「うぃ〜す……。」
「随分お疲れだね……何かあった?」
タマの向かいに座る。彼女はお茶を啜っていた。
ちゃぶ台には布でくるまれた何かが乗っている。
「寝てない……。ずっと鬼ごっこしてた。」
「そりゃぁ……お疲れ。暫くここで休んでいくかい?」
「いや、まずは物を見せてくれ。意識がまだあるうちに見ておきたい。」
彼女は布でくるまれた何かをこちらへと差し出してきた。
「とりあえず言われたとおりの物には仕上げてみたよ。純度の高い魔石を使って、その魔力を撃ち出す武器だね。威力はジャブ程度しか無いけど、射程は人間の大人の15歩程度はあるから牽制には使えるんじゃないかな。」
布を広げると中には仔鵺と同じ形状のトンファーが入っていた。
ただしこちらは黒色の仔鵺とは対照的に銀色で、スイッチではなくトリガーが付いている。
床に向けてトリガーを引くと丸く青白い光が打ち出されて弾けた。
「連射は?」
「できるよ。でも撃ち過ぎに注意してね。魔石の魔力が空っぽになると暫くは充填のために使えなくなるから。」
試しに三点射。同じような場所に着弾する。
仔鵺も同時に構えてみると、程良くバランスが取れてしっくり来る。
「いいね。前よりずっと使いやすくなった感じだ。」
体術も交えて適当に振るって見る。ハイキック時のバランスの悪さもその重量で安定する。
「注意して欲しいのは仔鵺ほどギミックが無いって事かな。魔力弾を撃ち出す機構を作ったら他の武器が載せられなくなったからね。」
「構わない。欲しかったのは安定性と射撃能力だけだからな。」
ちゃぶ台の上にそれを置いて再び腰掛ける。
名前はもう彫ってあるようだ。
「虎牙鎚……どう読むんだ?」
「コガツチだよ。仔鵺は黒いし、逆の白っぽいものをね。イメージは白虎ってところかな。」
並べてみると、白と黒のコントラストが美しい。
しかし左右対象かと言われればそうではない。陰と陽が体現されている美しい武器だった。
「ある意味芸術品だな、これは。使うのがもったいなくなってきた。」
「いやいやいや、使っておくれよ。武器が振るわれなくなったら本格的に飾り物になっちまう。」
「それで、少し休んで行くのかい?お茶ぐらいなら出すけど。」
「頼む。昨日の昼から何も口に入れてないんだ。」
彼女の口が開いて塞がらなくなる。
「馬鹿かあんたは。体が資本の冒険者が栄養取らないでどうするの。」
彼女が奥へ引込み、暫くするとお茶とおにぎりを持ってきてくれた。
「ほら食べな。どうせこの後も仕事だろう?ちゃんと食べないと体がもたないぞ?」
「恩に着るよ。いただきます。」
おにぎりは特に具も入ってない塩にぎりだったけど、空きっ腹の体には染み渡った。
「食ったら寝ちまいな。ここなら特に布団もいらないだろ?」
「そ
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