第三十三話〜暴虐〜

〜???〜

何も無い空間。暗闇の空間。この何も見えない空間はエクセルシアにとり憑かれた魔物の心なのだろう。

『オレは同年代のミノタウロスの中でも特に乱暴者と恐れられていた。』

そしてまた、彼女たちの独白が始まる。

『親父もお袋ももう少し皆に優しくできないのかと口を酸っぱくして言っていた。当時のオレは知った事ではないと聞かなかった。』

同年代の友人を睨みつけている少女が映る。彼女には誰も近づいてこない。

『別に友人なんてどうでもよかった。ゆっくり昼寝ができて、適当に暴れて、また寝る。それが出来れば十分だった。』

気持よさそうに昼寝をするミノタウロスの少女。
次にハンマーを振り回して岩を砕く少女が映る。

『でもオレだって女だ。友人なんてどうでもよくても、気になる奴はできてしまう。』

樹木の影から覗き込む少女。その目線の先には一人の少年がいる。

『周りとコミュニケーションを取らなかった代償が、その時にいっぺんに来た。何を話したらいいか分からない。どうやって話しかけたらいいか分からない。』

必死に何かを言おうとする少女。しかし、少年が別のことに気を取られてどこかへ行ってしまう。

『親に相談しようとしても、その時には既に親はいなかった。二人とも戦争で死に、オレは二人の友人に預けられたのだ。』

墓の前で涙する少女。彼女は一日中泣いていたようだ。

『親父達の友人は良くしてくれたが、相談する気にはなれなかった。そいつは酷い朴念仁だったからだ。』

言い寄る女性に笑って手を振る男が映る。少女はそれを唖然として見ていた。

『結局想いを伝えることができず、月日が流れてオレ達はついに離れ離れになってしまった。あいつは……引っ越して行ったのだ。』

荷馬車に乗って手を振る少年。それを見送っている少女。

『この事には自分なりにけじめを付けていたつもりだった。ある程度は諦めたし、気は楽になった。』

真面目に畑仕事をする少女。しかしその顔には輝きはなかった。

『しばらくして、オレは自分の力が役に立てるような場所を探して旅をすることにした。親父の友人は、笑って見送ってくれた。』

少女は、女性になっていた。
荷物を棒に括りつけて担ぎ、道を歩く女性。

『歩ける限り歩いて、色んな景色を見た。冒険者ギルドに入って、商人の護衛をしたり、盗賊の討伐なんかもした。しかし、なかなか見つからない。』

歩き続ける女性。持っていたハンマーはだんだんと煤けてきている。

『義賊なんかもやってみた。拠点にしていた森の道案内なんかもしてみた。でも、見つからない。』

貧しい人に奪った金品を分け与えている女性。
森で迷った子供を街に送り届ける女性。

『何時まで経っても見つからない居場所に、オレは焦っていた。そんな時だった、以前想いを寄せていたアイツをある街で見かけたんだ。』

一人の男の背中が映る。

『その時にはオレには人に自分から話しかけるだけの度胸が付いていた。奴に話しかけてみよう。そして、オレがアイツを好きだった事を伝えるんだ。オレの胸はこれまでにないほど高鳴っていた。』

近づいてくる男の背中。

『でも……。』

歩いている男に誰かが横から飛びついてきた。あれは、ホルスタウロスか?

『あいつには、もう結婚している奴がいた。オレの恋は、一回も声を掛けることもなく終わったのだ。』

力なく下ろされる右手。項垂れる彼女。

『もし、オレがアイツの引越し前に想いを告げていたとしても……あいつは頷いてくれなかったかもしれない。その時のオレは嫌われ者だったしな。』

酒を浴びるように呑んでいる女性が映る。その瞳は虚ろだ。

『でも、アイツと仲よさそうに歩いているホルスタウロスの姿を思い出したら、心の底からどす黒い物が沸き上がってきた。自分でその感情に気づいて、さらに落ち込んだ。』

一人道を歩く女性。挨拶をされても返事をしない。

『もう、誰とも関わりたくなかった。もし関わってそいつが特別な存在になって、自分の元から離れていってしまったら……次は耐えられないかも知れない。』

『だから……オレは……誰とも関わりをもたなくなった。だれにもふれらレナイヨウニ、ダレニモアワナイヨウニ。』

空間がひび割れ、景色が色あせていく。

『モウ、イヤダ。ダレトモアイタクナイ。ヒトリガイイ。ヨッテクルナ。クルナ、クルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナ』



『そいつは、ただお前が逃げているだけだ。』

俺が話しかけた瞬間、ひび割れていた空間が一気に修復され、景
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