第三十二話〜WIND MILL〜

〜???〜

新しいツールや武器、アーツ(技)などは95%近くが閃きで出来るものだ。
大昔の天才曰く「発明は99%の努力と1%の閃きである」と言っていたが、実際は無駄な努力をいくら積み重ねたところで自分の天賦以上の事はできないし、ほんのすこし閃いた所でそれを生かせる状況でなければそれは机上の空論でしかない。

では閃く確率を意図的に増やす方法はあるのか、というと実はある。
それは物事を適切に観察し、それに対する対処法を見つけるという事だ。
この時点で勘の良い奴ならピンと来ると言うわけだ。
まぁ新しい事をポンポン発見出来る奴も天才で、閃く確率が高い奴も天才な訳だから結果的に凡人には新しい事を発見することが極めて難しいという結論に達するわけだが。
それでも何もしないよりは何かしたほうが確率は上がるのだが。
それを考えると昔の偉人の考えたこともあながち間違い無いのではないか〜と自己理論の矛盾点を発見したりする。

「で、なんでこの最先端科学が行き届いている時代に手動でマガジンに弾を詰めなきゃならないんだ。」
『コスト的に考えれば機械のローダーを導入するより手動の方が安上がりで済む場合もあります。今回がそれです。』

なぜ前半であんなうんちくを垂れたのかというと、ただ単にマガジンの弾込めが面倒だったからだったりする。
セットすればスイッチ一つで自動でロードをしてくれる優れものが存在する中、手動でチマチマと弾を込める姿は一種の哀愁ただよう光景に見えるはずだ。

「なんつーかさ。こう細かい作業をカチカチカチカチやっていると眠くなってくるよな。」
『寝たら大尉のゲンコツが飛んできますよ。』

それは勘弁願いたい。ただでさえ義体のパワーというのは通常の人体よりも強力なのだ。
その拳で本気で殴られた日には頭蓋骨陥没じゃ済まない。

「なんかいい方法はねぇかなぁ……ん?」

その時俺が見つけたのは、プラスチックのペンケースだ。ちなみに俺の私物。
今時は脳内チップの中のメモツールでメモを取ることが多いので普通は持ち歩かないのだが、荷物などの受領や箱に直接中身を書き記すときには今も物理的な記述方法が使われている。

「このペンケース……7.56と幅や厚みがほとんど同じだよな……」

じっとペンケースを見つめる俺、すると天啓が舞い降りる。


「(これでクイックローダーを作れば楽なんじゃないか?)」


俺はすぐさま中身を取り出し、鵺から単分子カッターを展開すると工作に取り掛かった。
箱と蓋の両端を切り取り、また組み合わせて放置されていたダクトテープでぐるぐる巻きにする。
ペンを2,3本平行にダクトテープで縛り付け、押し棒にすれば完成だ。
下側から弾をローダーの中に押しこみ、ある程度貯まったらマガジンの口を下に押し当てて上から押し棒で突き込む。
ジャカジャカと連続した音が鳴り、見事に弾が装填されていく。

「お〜……できた。」

同じように次々とマガジンに弾を装填していく。
これは早いし、楽だし、便利だ。我ながら大発明なんじゃないか?
装填したマガジンが10本を超えた辺りで、
『マスター、報告します。』
「ん?なんだ?」

ラプラスが少し言いよどんだ感じで(ダイアログの文字だけなので表示が数瞬遅れただけだが)俺に絶望の一言を突きつける。

『そのクイックローダーで装填したマガジンのスプリングがすべて曲がっています。やり直しです。』
「オウマイガッ!?」

結局全て手作業で入れることになった。



〜旅館『迷い家』 葛の葉の間〜

「ぁ”〜……ぅ”〜……」

ミイラかゾンビかといううめき声をあげながら起床する。
疲れが抜けない。特に腰がだるく、足元も若干おぼつかない。
結構響いているな、こりゃ。

『次の街の宿でしっかりと休息を取ることを推奨します。このままでは戦闘に支障が出ますから。』
「そうする……ついでに馬車の中でも寝ておくか……。」

枕元に置いてあった服に袖を通す。
服はきちんと洗濯され、乾かされていた。

「いつの間に……。」

着替えている途中に式神がやって来て、布団を片付け始める。
まだグースカ寝ていたメイは、布団ごとしまわれ……。

「って待て待て待て待て!」

慌ててメイを救出する事になった。



「お〜いメイ、起きろ〜」

ペチペチと頬を叩いても反応がない。仕方無しに着替えさせるために彼女の浴衣を解く。
まぁ当然のごとくというかなんというか、履いてないし付けていない。
超重量級のバストが両脇にひしゃげながらでろんと垂れている。
これはこれで見ごたえがあるのだが、何時までも眺めている訳にはいくまい。
畳んで置いてあった彼女の服を着せていると、襖の外から知世の声が。

「アルテアはん?入りますぇ。」
「おぅ、どうぞ〜。」

知世が式
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