幕間〜とあるギルドマスターの手記〜

※ この話は完全シリアスモード&文字ばかりの考察話です。エロイチャに期待およびバトルを所望の方は飛ばしても全く問題ありません。

〜冒険者ギルド 事務室〜

彼が再びエクセルシアを回収するために旅立った。
毎回思うのだが、彼はあのような危険な生物に毎回挑んで恐怖を感じないのだろうか。
鍵のかかった引き出しを開け、自らの手記を取り出す。
中身は、彼に関する観察記録。
最初は物珍しい異世界人に関する観察日記程度だったのだが、書いているうちに彼の精神分析のような研究書になってしまった。
我ながら柄ではないとは思うのだが、知れば知るほど彼の精神状態は常人とはかけ離れている事に気づき、もっとよく把握して万が一に備えて対策を練ろう、と思うようになった。
厳重に鍵を掛けられた手記を開き、またペンを取る。
そして、また気づいたことを書き加え始めた。

『彼がこの世界……正確にはこのギルドに来てから1ヶ月近くが経つ。

その間彼を観察し続けていたが、彼のことを知れば知る程私は彼の精神状態の異様さに戦慄を覚えるようになった。

まず、近しい者、罪の無い者や力無き者の怪我や死を異常なほどに恐れる傾向がある。
私の大怪我の件一つ取っても、直ぐに医者を呼ぶなり回復術を使える術者を呼ぶなりといくらでもできたはずなのに、彼はその場で治療を行って傷をほぼ完全に治してしまった。

その反面、自身で判断した悪しき者、弱者を虐げる者、理不尽な暴力を振るう者に大しては全く容赦の片鱗も見せない。

彼はこちらの字が書けないため、いつも私が代筆しているのだが、その報告の際に罪人を殺した事をまるで昨日の天気や食べた食事の事のように話すのだ。
その時ばかりは私はペンを取り落としかけたものだ。
その反面、協力した者が危険な目に遭ったり、被害者が酷い仕打ちを受けていた事を話す時は非常に沈痛な面持ちで話す。
もはやこの時点で私はどちらが彼の本当の顔なのかが分からなくなっていた。

彼の価値観の異常はこれだけに留まらない。
彼は彼自身の体を他者から見ても異様なほどに雑に扱う事がある。

この根底には自らが助けたい者を自分の身を犠牲にしてまでも救うという物があるのだが、それにしてもこちらが見ていてハラハラするほどに傷だらけになることもしばしばだ。
先日も触手の森から一人人を助けてきたらしい。
その森に行かせた私が言うのも何だが、自分の身だけで精一杯の筈なのに、さらに要救助者を助けだすという無謀とも言える所業だと思う。

その他にも受けた傷を診療所にも行かず、魔法にも頼らずに自身で治すという行動も多く取っていた。
彼自身には特別な医療知識など無く、生き残るためにほんの少し人体の構造を齧った程度である……とは彼の談。
その聞きかじり程度の知識だけで済ませるのはやはり無謀だと思う。

正直に言おう。
私は娘を彼から引き離すかどうかで真剣に悩んでいる。
アリスというのは無垢な少女だ。
その無垢な少女が彼の血なまぐさい行動を見て、どれだけの精神的外傷を受けるか……私は恐ろしい。
しかし、娘は彼に非常に懐いており、それを無理にでも引き離そう物ならそちらの方が彼女を傷つけるかもしれない。
それならばいっそ彼を手元に置き、常に監視する事で娘に不必要に血の匂いを嗅がせないようにした方が合理的なのではないか、という考えもある。

今はまだ何も言えない。しかし、彼に関する扱いはそう遠くない未来に決めなくてはならないだろう。
それまでに彼の精神状態が安定するならばそれで良し。
そうでないならば彼がこの地から離れるまで彼を監視し続ける事になるだろう。

私としては娘の心配抜きで、彼には幸せになって欲しいと思う。
例え元の職業が兵隊だったとしても、何時までも血にまみれた道を歩み続けるのは辛いだろう。それは私としても望む所ではない。
できるならば、この地で伴侶を見つけ、気質の職業に就いて子供を育てながらゆっくりと余生を送るような人生を歩んで欲しいと思う。
彼の性格上、それは難しい相談かもしれないが。』

ある程度書き終えた所でとてとてと娘がこちらに歩み寄ってきた。

「おかあさん、なにかいてたのー?」
「大した物じゃないわ。ただの日記よ。」

軽く笑って再び引き出しの中に仕舞い、鍵を掛ける。
娘はそれを不思議な物を見つめるようにじっと見ていた。

「おにいちゃんのこと?」
「彼の事も含めていろいろとね。」

我ながら娘の勘の鋭さには舌を巻く思いだ。一体誰に似たのだろうか。
私の言葉に何か不満があったのか、彼女は軽く頬をふくらませている。

「おにいちゃんのこと……とっちゃだめだよ?」
「あらあら、私はあの人一筋よ?浮気する訳ないじゃない。」

実はあれだけいろんな子に好かれる彼の味見もしてみたいと思うのだが、いく
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