第二十九話〜触手の森にご用心!?〜

〜旅の館〜

「ここを使うのか?通常では結構かかる筈だが……」

アニスちゃんに付いて行くと、そこは旅の館だった。
そんなに遠出をするのだろうか。

「これ、おかあさんがつかいなさいって」

そう言うと彼女はスカートのポケットからチケットを取り出した。

「旅の館往復券……?発行元は冒険者ギルドか。行き先は……」

彼女からカードを受け取ると、行き先を確認する。

「グラスガルド……どこだっけ?」
『既に魔界に飲まれた土地ですね。ギルド内の地図にも載っていたはずです。』

魔界行きのチケットねぇ……。

「ここには何があるんだい?」

彼女にそれを聞いたが……。
「わかんない。」
………………はい?

「おかあさんがでーとはここにいきなさいっていってた。」
「あの人今度は一体何を考えているんだ……。」

どうせ碌でも無い事だろう。
これから起こるであろう厄介事の気配に俺は深々とため息を付くのであった。



〜グラスガルド地方 夜魔の街 ナハト〜
「ご利用ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております。」

いつものテンプレ魔女の挨拶を聞き流し、街へと出る。
ナハトという街は宿場町の様相をしているが……。

「こりゃまるで歓楽街だな……。」

存在している宿は全てラブホテルや売春宿みたいな場所ばかり。
立ち並ぶ店には怪しげな薬品やそっち目的で使うような道具ばかり。
心なしかどこかから嬌声が聞こえて来る気がする。
空は昼だというのに薄暗く、太陽がよく見えない。
紫色に染まった空に浮かぶ紫雲も相まって不気味に見えてしまう。

「わ〜……すごいところだね。」

感心しているアニスちゃん。
まぁ並べられている商品とかが何かわかっていないからなのだろうが。
あまりアリスと並んで歩きたくない場所である。

「で、目的地は教えてもらっているのかい?地図とかさ。」

そう言うとアニスちゃんはポケットから紙切れを取り出す。
彼女の正確を表すかのように几帳面に折りたたまれていた。

「おかあさんからちずをもらってあるよ。ここにいきなさいって。」

彼女から地図を受け取る。そこに書かれていたのは……

「これ、町の外だな。一体何があるんだろうな。」

地図を頼りに町の外へと歩き出す。アニスちゃんは俺の後ろをちょこちょこと付いて来た。

「(なんだか……視線が……)」

先程から誰かの舐めるような視線を感じる。
首筋がチクチクとするようでなんとなく不快だ。

『路地裏への入り口は接近しないでください。アンブッシュです。』

確かに路地裏の入り口から尻尾やら羽やらがはみ出している。油断したら食べられますよってか。



なんとか待ち伏せに捕まらずに町の外へ出る。

「あの森か……ピクニック向けの森じゃなさそうな気がするんだがなぁ……。」

アニスちゃんの手を引いて森へと足を向ける。その森が近づいてくるにつれて、俺の顔が引き攣ってくる。

「なんか……変なもんが動いている……。」
「なにあれ〜?」

森の間際まで来たときには、それが何なのかハッキリと解った。
俺の全身から血の気が引いていく。

「触手……か?これは。」
「うねうねしてる〜♪」

うねうねと蠢く触手が木々の間で行ったり来たりを繰り返している。
こちらの気配を感じてか、心なしか近くに数が増えてきたような気がする。

「こんな場所でどうしろって言うんだよ……。」
「おかあさんがここがたのしいっていってたよ?」

あの人の楽しいはいろんな意味で危ない。
というか性的経験が毎回リセットされるような子にこんな所勧めるなよ……。

「帰ろう。コーヒーショップか何かで甘いものを買ってあげるから。な?」
「せっかく来たのに……。」

残念そうに言っているが、しかし彼女の顔はニヤニヤが止まっていない。
やはり甘い物は好きか。

「あの人もなんて場所を教える……ん?」

風で飛んできた何かが顔に貼りつく。剥がしてみるとそれは……。

「赤いハンカチ……?」

<すみませ〜ん!それ僕らのです〜!>

この森へ遊びに来たカップルだろうか。こちらに手を振っていた。
やれやれ、仕方が無いなぁと思いつつハンカチを振り返した。
「あぁ、今返しに……。」

<ドドドドドドドドドドド>

地響きが聞こえる。地震かと思ったが、揺れが小さすぎる。
もはや嫌な予感しかしない。

「何だ?地震……じゃないよな……」
「おにいちゃん!にげて!」

アニスちゃんが何か叫んでいる。一体何が……

「うおおおおおおおお!」

<ドーン!」>

砂煙を上げて突進してきた何かに吹っ飛ばされる。

「ぐっ……!」

かろうじてガードしたが、数メートルほど吹き飛ばされる。鵺越しでも手が痺れる感覚がする……なんてパワーだ……!
勢い余って森
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