幕間〜冒険者ギルドの日常〜

〜帰ってきたアイツ〜

〜冒険者ギルド ロビー〜
優雅に朝のコーヒーを啜る俺。シャバダ〜とか聞こえて来そうだ。
ロリカルテットは俺の方をビクビクしながら遠巻きに眺めている。
エルファぐらいしか心当たりが無いのだが、何か怖がらせるような事をしたっけな?

「たのもぉぉぉおおおお!」

扉が内側に勢い良く開かれる。入って来たのは……

「スフィンクス?」

褐色肌のネコ型獣人だった。

「アルテアとか言う奴にリベンジしに来たにゃ!」

俺をご指名だった。仕方無しに立ち上がり、彼女の前に立つ。

「ごく最近に会ったスフィンクスと言えばビヴラ王墓で会った奴しかいないんだが……お前か?」
「そうにゃ!この間は何かの間違いなのにゃ!謎かけ勝負でリベンジするのにゃ!」

やれやれだ。変な恨まれ方をしたものだ。

「わかったよ、さっさとしろ。その代わりお前が負けても俺を襲うなよ?まな板ショーは趣味じゃない。」

そこかしこで何かを吹き出す音が聞こえた。

「そういう事は勝ってから言うのにゃ!第一問!ある人が買い物に出かけたのにゃ。その人はまず薬屋に立ち寄ったのにゃ。そこでは傷薬が安売りで1個銅貨8枚で売っていたのにゃ。次に魚屋に行って商品を見たのにゃ。銀サバが銀貨1枚で売っていたのにゃ。最後に服屋に行って服を見たのにゃ。よさそうな服が銀貨20枚で売っていたのにゃ。さぁその人はその日でいくら使ったのにゃ?」

横目で見ると、アニスちゃんが両手を使って必死に計算をしていた。ニータやエルファを含め、ある程度頭が切れるヤツは気づいたのかニヤニヤしている。

「そうだな、傷薬が銅貨8枚で魚が銀貨1枚。服が銀貨20枚で、合計すると銀貨21枚と銅貨8枚だが……使ったのは0枚だ。」
「うにゃあ……。」

自分を抱いて顔を赤らめるな。
アニスちゃんは自分の答えと違うのがショックだったのか愕然としている。
メイは……元から聞いていないようだ。

「どの商品も『売っていた』しか言っていないし、商品は『見ただけ』だ。つまりそいつは1回も買い物をしていないということになる。そいつは何のために買い物に行ったんだろうな。」

彼女が頬を叩いて気を取り直す。
「次の問題にゃ!大きな湖があって、そこに1日で丈が倍になる水草が一本あったにゃ。水草が256本で湖の全てを覆い尽くすとして水草が湖の面積の半分を覆うのはいつにゃ!」

アニスちゃんが今度はメモ帳と鉛筆を取り出して計算し始めた。頭は良いようだが今一思考が硬いようだ。

「256は2の8乗。最初の二本にするために+1で9日……と思いきやこの湖は何時まで経っても水草では覆いつくされない。水草は丈が伸びるばかりで数は増えないからな。そこまで伸びる深さがある湖があるかと言われれば微妙だが。」
「うにゃあああああ!」

顔を手で覆って絶叫するスフィンクス。その様子は悲壮感に満ち溢れていたが、ビキニパンツから何か漏れ出している辺りで台無しだ。

「さ、最後の問題にゃ……。ヒヨコは卵から生まれるにゃ。でも卵は鶏から生まれるにゃ。その鶏はヒヨコが育った物にゃ。さて、一番最初はどっちにゃ?」

鶏と卵の問題か……。

「よく聖書か何かでも論ぜられる問題だな。聖書では神が一番最初の鶏を作ったと言っているが、間違いだ。正確には、この問題の答えは鶏なのだが、別に神が作ったわけじゃない。古の生命に恐竜という爬虫類がいるのだが、そいつが進化して鳥になり、その鳥がいくつもの種類に分かれ、進化の末に鶏が生まれた。その鶏の卵を生んだ鳥が鶏ではないので、その鶏は『鶏の卵から生まれた』という条件を克服した一番最初の鶏ということになる。その生まれた鶏と生んだ鳥の種類は近い物だっただろうから、そこから交配して現在の鶏に近くなったと……」

と、俺が鶏の証明をしていると、肩をつつかれた。ミリアさんだ。

「アルテア君?解説するのはいいけど皆がついていけてないわよ?」

周りを見ると、全員頭から湯気を出して倒れている。

『この時代の人達に進化の概念を理解できるとは思えません。マスター』

その中のスフィンクスは頭から湯気を出しながら悶えている。

「にゃ、にゃあ〜……もう、もうやめてぇ……♪」

俺の解説が長すぎて呪いの逆流が止まらなかったのだろう。ビクビクと痙攣して、足元には水溜りが出来ていた。

〜その後〜
あのスフィンクスはたまにやってきては俺に問題を出してくるようになった。
俺はそれをサラサラと答えるもんだから奴もムキになっていろんな問題を出してくる。
まぁ、頭の体操には丁度いいのだが、俺が答えるたびに周りの連中の思考がオーバーヒートするのはどうにかならないものかね。



〜ラプラスとお喋り〜

マルチチャンネルを導入してからこちら、ラプラスと話したがる
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