第二十五話〜旧き守護者は墓を護る〜

〜灼熱と砂塵の街シェバラ 西口〜

翌日、俺は市場で少し買い物をした後街を出た。出口まではジャックが付いて来ていた。

「付いていくとかは言わないよな?」

確認の意味も込めて彼に聞く。

「まさか、俺みたいな子供が不用意に外に出たらカラカラになって死んじゃうか砂漠の魔物に連れて行かれちゃうよ。」

そういう事はわかっているのか。

「なら、いい。行ってくる。」

俺はシェバラを後にする。ジャックは、俺の背中が見えなくなるまで見送っていた。



「あっつ……」

出発したのは朝方だったが、気温はどんどん上がっていた。
遺跡の場所は孤児達から聞いたが、未だにその遺跡は見えてこない。

『水分補給はこまめに行うほうが良いでしょう。脱水症状に注意してください。』
「そうは言うが持ってきている水も限られている。大事に飲まないと後で詰むぞ。」

持ってきた水は2リットル入る瓶が4本と言ったところだ。
道具と合わせると計10キロ程になるが、水を頻繁に飲むことを考えるとあっという間に軽くなるだろう。

『警告。生体反応1。距離3』

何かがいる。それも極近くに。

『反応は地中。センサーが届きにくい位置です。ターゲット出現します。』

背後の砂の中からゆっくりとだが何かが出てくる。

『図鑑データ検索…該当1。ギルタブリル。昆虫型アラクネ種。強い催淫毒を持つサソリ型の魔物です。』
「早速お出ましって事か……しかも一番苦手なショートレンジとはね……。」

ギルタブリルは何も言わない。ただ攻撃体勢のみを整える。

「(やはり魔物を過剰に傷つけたくはないな……実弾は駄目だろう。脅して駄目ならゴム弾で怯ませてテイザーでも撃つか。)」

俺の思考を先読みし、ラプラスがゴム弾入りのオクスタンライフルを展開する。

「気が利くな。オイ、あんた。痛い目見たくなけりゃさっさと逃げな。」

暗殺者というのは気付かれたらそこでお終いである。本来ならば背後から一突きするつもりだったのだろうが、生憎俺とラプラスには通用しない。
振り向いて銃口を突きつける。

「!?」

俺が独り言でも言っていると思ったのだろう。ギルタブリルは仰天している。

「あんたらがどれだけ隠れていようと俺らには通用しないな。ちと気付くのには時間がかかったがな。」

俺は威嚇のためにギルタブリルの足元にゴム弾を撃ち込む。跳弾性の高い弾だが、砂に着弾した弾は跳弾すること無くその場に留まる。

「別にあんたの命を奪うつもりはない。さっさと逃げてくれれば余計な怪我はしないし、炎天下で放置されることもない。どうする?」

そう言うと彼女は大人しく地面へ潜って行った。

「よしよし、いい子だ。」

俺は背中を向けてオクスタンライフルを格納し、歩き始める。

『ターゲット接近。距離1』

振り向きざまに砂に鵺を突き立てる。丁度浮上してきたギルタブリルの頭部に直撃した。

「!?!?!?!?」

ゴーンとかいい音がした気がする。暫く尻尾をピクピクさせると彼女は気を失った。

「不意打ち騙し討は暗殺者の常だがね、俺らには効かないって言ったばかりだろうが。」

俺はバックパックの中から毛布を取り出すと、ギルタブリルに掛けてやる。

「蒸し焼きにはなるなよ?そいつはやるから。」

改めて、俺は歩き出した。

『お人好し過ぎませんか?』
「恩を売っときゃいつかは自分に返ってくるだろ。」

情けは人の為ならず、廻り廻って己が為ってね。



〜ビヴラ王墓〜

「ここか……。」

遺跡へは昼を過ぎた頃に辿り着いた。

「(入り口にはスフィンクスがいてその答えは誰にも答えられたことが無いって話だったな……)」
『大抵のロジックであれば私で突破可能です。』

その声には起伏が感じられなかったが、なぜか自信満々に聞こえた気がした。

「頼りにしているぜ、相棒」
『了解。善処します』

確かに、入り口にはスフィンクスが寝そべっていた。
俺が近づくと、立ちはだかってニヤニヤ笑っている。チシャ猫かお前は。

「ここを通りたかったら問題に三つ答えるにゃ!間違えたら……わちきに食べられちゃうにゃー!」

無論性的な意味でだろう。

「来いよ、論破してやる。」

人差し指で挑発する。

「第一問にゃ!ノモンハン事件で初陣を飾った旧日本軍の戦車はにゃんだ!」
……は?

「ふふふ……異世界人に教えてもらった軍事ネタにゃ。これに変えてからは誰も突破……」
「九十七式中戦車。」
『今では型落ちの骨董品ですね。』
「にゃああああああ!?」

呪いが逆流しているからか、それとも驚愕のあまりか素っ頓狂な声を上げるスフィンクス。

「そ、そんにゃ……だ、第二問にゃ!1944年に行われた、ナチスドイツによって占拠された西……」
「ノルマンディー上陸作
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