第二十四話〜灼熱の都〜

〜???〜

『よし、制圧完了だ。アルテアは他のフロアに敵が残っていないか見てきてくれ。』
『了解。ヘンリー曹長もお気をつけて。』

俺達フェンリルは現在違法な仮想薬物(バーチャルドラッグ)の製造工場を襲撃、鎮圧していた。
非常に依存性が強く、使用し続けるにはライセンス料を払わなければならない……という現実世界のドラッグとほぼ同じような効果を持つ物だ。
別に正義の味方を気取る訳ではないけれど、こういう物が蔓延るとテロ組織やマフィアにどんどん金が流れていくので、結果的に俺達の仕事が増えることになる。
増えすぎて手が回らなくなる前に先手を打っておこう、というのが今回の任務のコンセプトだ。

『ま、今回の任務は楽勝だよな。敵も碌な装備持ってないし、セキュリティも旧世代の物だ。あんなの今時の小学生だって解除できるぜ。』
『油断は禁物です。周囲に警戒を怠らないようにして下さい。』
『わぁってるっての。拳銃だって当たりゃ痛いし、頭撃ち抜かれりゃ死ぬからな。持っていることを前提で当たらなきゃ……』

<タタタタタタタタターン>

言いかけた所で下のフロアから発砲音がする。

『ッ!銃声!?』
『銃声がヘンリー曹長の携行している物と異なります。』
『(曹長!?何があったんです!?曹長!!)』

チャントでヘンリー曹長に呼びかけるが応答がない。
嫌な予感がする……

『戻るぞ!絶対に何かがあったんだ!』
『了解。十分に注意してください。』

俺は元来た道を戻って曹長の元へと急いだ。



『……っ…………ぁ…………』

空きっぱなしのドア。
その向こうに誰かが仰向けになって倒れている。
青いジャケット、彼のお気に入りだった茶色い革靴、足元には彼の愛銃のM4A1が落ちている……
ヘンリー曹長が……倒れていた……

『ぁぁ…………が…………ぁ……』
『マスター、脈拍値が上昇中。落ち着いてください。』

死んだ?なんで?さっきまで笑って送り出してくれていたのに……?
部屋の中からドカドカと軍靴の音が聞こえて来る。
おそらくは襲撃を受けた工場を取り返しに来たテロリストか、マフィアか。
あいつらが、殺した。

『マスター、冷静になってください。貴方一人では何もできません。撤退してください。』

殺した、殺した、殺した、ころしたころしたころしタコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタ

『ッカ……クケカカ……ッカカカカカカカカカカ』
『マスター?どうしたのですか?返事をしてください、マスター。』

パラケるすすテンkai。なのブシツセンtaク。

『マスター、そのナノは使わないでください。後遺症が大きすぎます。』

<くれいじーもんきー>チュウniyう。コウカはつdoうまデ3・2・1……

『マスター、即座に中和剤を投与してください。マスター、マスター。』



きがつけば、あたりはちのうみだった。
じぶんも、ちまみれだった。じぶんのうでや、あしのはへんもおちていた。
うちぬかれたあたま。じょうはんしんがまるごとなくなったしたい。
さゆうまっぷたつにわれたひと。うでやあしをもがれてちのうみにしずむひと。
ぼくが、ころしたから。へんりーそうちょうをやったひとを、みんなころしたから。

『アルテア……ッ!何だ!?これは!?』

あ、ねぇさんだ。ねぇさん、みて。へんりーそうちょうをやったやつをみんなころしたよ?
ねぇ、ほめて。ほめてよ。

『これは……お前がやったのか?』

あはは……なんで、ねえさんがないているの?ぼく、へんりーそうちょうのかたきをとったんだよ?うれしくないの?

『アルテア……アルテアぁ……!』

あは……ねえさんが……だきしめてくれた……でも、なんでないているの?
ねぇ……なんで……なん……



……頭が痛い。朧気だが、自分がしたことを覚えている。
辺りに広がる血の海、血の海、血の海。
しかし、ここには白くて清潔なシーツがかかったベッドしかない。
ベッドの脇に鵺が立て掛けてある。
辺りを見渡しているとカーテンを開けて姉さんが入ってきた。

『アルテア……目が覚めたみたいだな。』
『……うん……少し頭が痛いな……』

姉さんは悲しそうな顔で俺の事を見ている。
まぁ、それはしょうが無いか。あの時の俺、まるっきり化け物だったからな。

『お前の血液の中から条例で禁止されているナノ物質が検出された。あれは一体どういう事だ?』
『……わからない。ただ、ヘンリー曹長の死体を見て、頭が熱くなって……気がついたらパラケルススで……』

頬を、強く叩かれた。頭の中がぼうっと熱くなる。

『馬鹿者!あれは自爆
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