第二十二話〜ワイドネット・ダブルウォール〜

〜???〜

いつもの朝の訓練の後、汗を流すためにシャワールームでシャワーを浴びていると姉さんが入ってきた。

『おはよう、姉さん。』
『あぁ、おはよう。今朝の訓練はどうだった?』

姉さんは事務仕事があるからと言って別室でデータの整理をしていた。
今朝の訓練担当はヘンリー曹長だ。

『やっぱり戦闘用電子体は慣れないな。曹長にコテンパンにされた。』
『お前は前からソレが苦手だな。第二世代(セカンド)とは思えん。』

なぜか知らないが俺は戦闘用電子体の扱いが苦手だ。
電子体になんらかの干渉が起こり、自分の動かしたタイミングと大きなタイムラグができてしまう。
それ故に反応が大幅に遅れて致命的な隙になってしまうのだ。

『しかし……』
『何だい?姉さん。』

姉さんが俺の下半身に眼を向ける。心なしか悲しそうな目を……

『お前は私を見ても何も感じないのだな。少しは何か反応したらどうなんだ?』
『反応って何が?』

そう言うと姉さんは俺の股間をつまみ上げてきた。

『お前はアレか。義体相手じゃ欲情しないのか?』
『よくじょう?』

そういえば以前無名都市に偵察に言った時そんな単語を見かけた気がするが……。

『そういえばお前に対する性教育がまだだった……迂闊なことをした。』
『……姉さん?』

姉さんは俺の肩に手を当てると壁に押し付けてきた。
何だか目が据わっている……。

『安心しろ。いきなりハードな事はしない。お前は身を任せるだけでいい。』
『あの、姉さん?一体何を……ってちょ、そこは舐めるところじゃ……アッー!』



〜宿屋『安眠亭』〜

「……」

朝起きたら目にチャルニの顔がどアップで映しだされていた。
胸元には、二つの柔らかい重圧。
起こさないように彼女をベッドへ降ろす。

「しかしまぁ……えらい夢だな。溜まっている筈はないんだが……」

ちなみに何かが起きる前に目が醒めたので、その後の展開は記憶に残っていない。

『おはようございます、マスター。時刻はAM7:00。天気は快晴。気温17度。湿度53%。平均風速は10.8m/sです。』
「おはようラプラス。今日はやけに風が強いんだな。」
『この付近に存在する谷で増幅された風が吹き降ろしています。花粉の時期ではなくて幸いです』

辛いよな、あれは。

『それより身体の洗浄を推奨します。』

下半身を襲う不快感の正体は、昨晩の行為でついた体液その他もろもろのようだ。

「今やるところだ。」

この宿にはシャワーが付いているらしい。なんでも豊富な水源と強く吹く風を利用して水を引いているんだとか。ちなみにシャワールームの前の注意書きに書いてあった。
お湯は出ないぞ?金かかるらしいし。



シャワーを浴びていると、チャルニが入ってきた。
恥ずかしげもなく堂々と入ってくるなぁ……こいつは。
まぁ動じない俺も俺だが。

「おはよ、一緒に浴びていい?」
「どうせ断っても居座るんだろうが。」
「あたり〜♪」

汗とか体液とか洗い流していると……

「……おい。」

彼女が俺の下半身をまさぐってくる。

「ん〜?何かな〜?」
「何かな〜じゃないだろ。一応今日は動きまわるんだからやめとけ。」

俺が嗜めるとあっさり手を引いてくれた。

「ちぇ〜……」

拒まなかったらそのまま行為に突入していたのだろうか。

「あ、少し期待してた?」
「……否定はしない。」

やれやれ。



〜カフェテラス『絹のエプロン』〜

「今日の予定だけど、昨日のゴブリン達に採掘を手伝ってもらおうと思っているんだ。」

朝食の席で俺は今日の予定を彼女へ話す。
俺の提案に彼女は若干不満げだ。

「え〜……あの子達も連れて行くの?」
「俺達は鉱石の採掘手段を持っていないからな。自然と力仕事を任せられるあいつらを頼ることになる。」

俺が頼めば大抵のことはしてくれそうだ。あいつらは。

『パイルバンカーで岩石を破壊する方法もありますが、中の鉱石によってはそれで使い物にならなくなる可能性もあります。』
「だよな……というか今回掘りに行く『リヴァイアスの牙』ってのはどういう物なんだ?」

牙というからには尖った形をしているのだろうか?

「このあたり、というか谷とか地中深くとか崖に縞々模様のある場所の岩とか土の中から時々見つかるんだ。物凄く鋭いから武器とかにそのまま使えたりするの。学者達は大昔の生き物の一部とか言ってるけど……見た目的にもあれは石かなにかの一種だと思うんだけどなぁ……」

それって……。

「それ本当に生き物の一部だと思うぞ。化石って言う昔の生き物の遺骸だ。」
「化石?」

『動物の遺骸が地層に閉じ込められ、肉などの柔らかい組織が化学変化によって失われ、骨などの硬い組織が鉱物に置き換えられた物を言います。種類は
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