第二十話〜海神の神罰代行者〜

〜サンライズハーバー 波止場〜

恰幅のいい男が、細身の男と対峙している。
辺りは積荷の揚げ降ろしで忙しく動き回っているようだ。

「依頼の品は用意できたかね?」
「はいはいこちらに。活きの良い最上級品ですよ。」

細身の男は大樽を運ばせ、男の側まで持ってくる。

「中身を開けるのは、くれぐれも人の目のつかないところで……いいですね?」
「うむ、わかっておるわ。代金は所定の口座に振り込んでおくからな。」
「毎度有難うございます。旦那。」

男は樽を運ばせ、自分の船に積み込ませる。

「それでは、これからもご贔屓に。」
「うむ、気に入ったらまた発注する。楽しみにしていろ。」

男は自分の船に戻ると、錨を上げさせ、船を出した。



「……もういいかね?」

細身の男は物陰に潜む人魚達に話しかける。

「うん、おっけーおっけー。演技ごくろうさん。」
「本当の奴隷商人みたいでした……。」

実はこの男、サンライズハーバーの役人だ。
奴隷取引の通報を受け、アルテアと共に一芝居打ったのだ。

「それにしても彼一人で大丈夫かい?いくら商人とはいえ護衛に武装ぐらいはさせているだろうに。」

心配そうに船の行く先を見遣る役人の男。

「あっくんがそう簡単にくたばるとは思えないね〜。あの子妙な武器で滅茶苦茶やるし。」
「滅茶苦茶?彼が腕利きの冒険者とかそういう事じゃないのかい?」

取り返しのつかない事をしてしまったという風に青ざめる役人の男。

「一応腕は確かみたいだよ。結構いろいろ訓練受けているみたいだし。でもねぇ……」
「えぇ、彼は……。」

暫く無言で船を見送るピスケスとサフィア。
その表情には信頼というよりむしろ哀れみが強く出ていた。

「あの武器は強いとかそういう次元を色々ブチ壊しちゃっているんじゃないかなぁ。」



〜商人の船 商人の部屋〜

商人の男は大樽を自室に運ばせると、鼻息荒く樽の蓋を開けに入った。

「高額で転売するのもいいが……まずは味見だな。」

下衆っぽい笑い声をあげながら樽の蓋に付いている取っ手を掴んだ瞬間。


<ドゴォ!>


漆黒の砲身が蓋を突き破り、商人の顎を直撃した。

「ぐぼぁ!?」

樽の中から立ち上がったのは、青いジャケットを着た男。

「よう、何を味見するって?」

男は樽の縁を跨ぎ、床に足を下ろす。

「まぁあんた、随分と下衆なことするのな。今時奴隷取引?人身売買?クソかお前は。」

その憤怒を胸に抱き、立ち上がる。

「そのあんたの腐った根性、」

彼女たちに代わり、誅を下すために。

『ビームガトリング展開。』

その漆黒の砲身は義憤の魂。その弾丸は断罪を下す裁きの鉄槌。

「叩き潰してやるよ!」
『Open Combat』




商人が廊下へ飛び出して行った。しかし、本当の目的は奴の殺害ではない。
展開された光学機関砲のトリガーを引く。殺戮の光弾が無数に飛翔し、船室の壁は紙細工のように引き裂かれて辺りに木片の屑を撒き散らす。
と、そこで部屋へ衛兵がなだれ込んできた。

「貴様!こんな所で何をしている!」

今更何を言っているんだコイツらは。

「何って、決まってるだろ?」

鵺を構え直し、今度は衛兵の集団に砲身を向ける。

「この船をブチ壊しているんだよ。」

トリガーを引く。
光弾が盾や鎧で武装した衛兵たちをトランプの兵士か何かのように軽々と吹き飛ばす。

「ぐああああああ!?」
「何だこれは!?何の魔法だ!?」

別の壁に砲身を向け、発砲。壁がズタズタになり、隣の部屋が覗く。隣の部屋に乗り込み、また発砲。次々と壁が、床が、天井が木屑と化していく。

『ジャベリン展開。』

また砲身を構え直し、ランチャー発射体勢へ。ぶち抜いて来た壁の方へ向かって発射。爆発。

『プチアグニチャージ開始。』

通常発射体勢へ。しっかりと足を踏ん張り、よろけないように気をつける。

『チャージ完了。』
「お前ら伏せろ〜。蒸発すんぞ〜。」

まともに警告する気の無い警告の後、展開されたビームキャノンのトリガーを引き、照射しながら自分を軸にして360度回転。辺りを薙ぎ払うと、天井が落ちて来る。しかし既に天井には穴が開いており、落ちてきた天井は俺をすり抜けるように落下した。

「こんちは〜♪」

いきなり足場が崩れて腰を抜かす衛兵に向かってにこやかに挨拶。
落ちてきた床の上に飛び上がる。

『リッパー展開。』

鵺を逆手に持ち替え、リッパーを展開する。呆けている衛兵を逆袈裟斬りに切り飛ばす。
切り飛ばした衛兵は海へと落ちて行った。

「ずいぶんと暴れてくれたものだな。」

他の衛兵とは少し容貌の違う男が現れる。

「これでは今回の護衛料が支払われないかもしれないな。船もこれ以上は動きそうもないし、どうしてく
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