第十六話〜探検野郎Aチーム〜

〜???〜

『よう、二等兵。ゲロったりしてないだろうな?』

今日は僕が参加する初任務だ。
この人は僕と同じ任務に参加するヘンリー曹長さんだ。

『気分は良い……とは言えませんけれど大丈夫です。やれます!』
『威勢だけは一人前だな!作戦終了までその調子でいろよ?』

バシバシと肩を叩く曹長。痛いけれど気合は入る。

『ヤー。気合入れていきますよ』

今回の任務は東南アジアのナノマシンブートレガーアジトの制圧戦だ。
僕の役割は没入中のメンバーの実体の護衛だ。
姉さんを含めてかなりの腕利きが集まっているため、作戦自体は10分程度で終わるらしい。

『………………』

気配を殺してアジトの中へ。
アジトの電脳空間はスタンドアローン……すなわち外部とのネットワークとは切り離されている。
セキュリティコアを落とす為に実際に建物の中に入り没入する必要があるため、リアル・電脳双方のチームワークが重要となってくる。

『(ここだ。アルテア、ヘンリー。リアルボディのお守りは任せたぞ。)』
『(ヤー。アルテア、周囲の警戒を怠るなよ。)』

チャント。秘匿回線による通話だ。
ヘンリー曹長が僕に警戒を促してくる。

『(ヤー。ラプラス、心音センサーとXレイビジョンを。)』
『(了解。心音センサー・Xレイビジョン作動開始。)』

ウィンドウが二つ開き、鵺を向けている方向に心音を視覚化した映像とX線による壁の透視映像が表示される。
それにしても、重い。
かなり腕力は鍛えたのだが、それでも持って支えるのが精一杯。
射撃姿勢を取ろうものなら銃口が下がったりプルプルと震えたりでまともに狙いをつけられない。
仕方なく自分でプログラムを組んで腰だめでもレティクルが表示されるようにツールを作り、高貫通性の銃弾を腰だめで壁越しに撃つという荒業で射撃姿勢の不要化を図る暴挙を採用した。

『…………っ!』

心音センサーに反応。しかし、だんだんと反応が離れていく。
Xレイビジョンからも感知可能距離から離れていった。

『(ふぅ……)』
『(大丈夫だ。この程度では気づかれる事は無い。)』

ヘンリー曹長はそう言うが、こちらは気が気ではない。
その後は何事も無く時間が過ぎ、施設コントロールの奪取が完了。

『こちらはPMC『フェンリル』所属のヘンリー曹長だ。現時点を以てこの施設のセキュリティとコントロールを掌握した。全員武器を捨て、うつ伏せで頭の後ろで手を組め。繰り返す。こちらはPMC『フェンリル』所属の…』

『ふぅ……』
後は全員拘束してしかるべきところに突き出すだけだ。
僕は危険が去った事による安堵でため息を付いた。

<コロコロコロコロ…>

『ん……?』

足元に何かが転がってくる。丸くて、モスグリーンのそれは……。

『!!!!!!!!!!!!!!!!』

咄嗟にそれを拾い上げて開いているドアの外へ向かって投げる。

『グレネード!敵襲!』
ドアの外。ここから見えない場所で爆発が起きる。

『十時方向に敵1。対電子兵装ですか。たかがテロリストの分際で贅沢な装備ですね』
心音センサーには何も映らずXレイビジョンは砂嵐が走っており、明らかに何かの妨害を受けていることが見て取れた。

『アルテアはここで待機だ。俺が行こう』

ヘンリー曹長が自動小銃のセーフティを解除し、空き缶を廊下へと投げ捨てる。
ヘタをするとグレネードに見えるためにひるませ効果があったりするのだ。

空き缶が地面に落ちた音と同時に飛び出して小銃を乱射する。
しかし……

<バチュッ>

『がぁぁぁあああ!?足をやられた!』

部屋の中にヘンリー曹長が倒れこんでくる。
すぐさま状況を姉さんに報告する。

『(姉さん!リアルで敵襲だ!ヘンリー曹長が足を撃たれた!)』
『(すまんアルテア!敵が張ったアンカー(離脱妨害)でログアウトできない!自力で何とかしろ!)』

どうやらすぐには現実世界へと戻ってこられないようだ。

『撃てぇぇぇぇえええ!アルテアァァァァアアア!』

撃つ?何を?

『マオ・インダストリー製歩兵携行化オクスタンライフル展開。モードB』

外で攻撃している何かを?

『マスター、攻撃を。ヘンリー曹長が危険です』

人を……撃つ?殺す?

『アルテアァァァァアアア!早くしろぉぉおおおおおお!』

撃ったら、死ぬ?もう生き返らない?人間が?

『マスター。時間がありません。早く攻撃を行って下さい』

僕が、殺す?生命を奪う?

『ぁぁぁ………………ぁぁぁぁぁぁああああああ!』

壁越しに敵がいると思われる方向へ乱射する。
壁を貫通し、敵の臓器が破裂し、骨が砕け散り、倒れ伏す。
辺りは、静かになった。



『よくやったな、アルテア。お前のお陰でヘンリーは死なずに済んだ』

ベースへと帰還後、
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