5月14日 僕と不良と正義の姉ちゃん
ゴールデンウィークも終わって1週間ほどが経った。
やはり学校というのは気楽なもので、一日中姉ちゃんと一緒に居るよりは気が休まる。
「よう君って頭がいいって聞いたんだけどホント?」
登校の道すがら姉ちゃんが僕に疑問を投げかけてくる。なんだろう、僕は疑問に思われるほど頭が悪そうに見えるのだろうか。
「いいか悪いかはともかく成績はいいよ。学年の中でも上から2割の中ぐらいには入るんじゃないかな?」
僕の成績は5段階評価で割と4や5が多い。別に勉強が苦手という訳でもないし、特別苦手な科目も無いのでしっかりと勉強さえしていればそのぐらいは取れる。まぁ、それとは別にあるカラクリがあってその結果になっているんだけどね。
「ふ〜ん……やっぱり頭がいい子の方がモテるんだねぇ」
「どうしてそういう結論になるの?」
自慢ではないけれど生まれてこの方彼女なんて出来た事は一度もない。
一度だけ晴彦に炊きつけられてクラスの女子に告白したことがあるけど、一刀両断に振られた。アレは僕の人生の中の黒歴史だ……なんであんなのの口車に乗ったんだろう。
「クラスの子が言ってたけど可愛いし賢そうだって結構人気なんだよ?」
「なんでだろう……あまり嬉しくない」
回りからよく言われるが、僕は童顔だ。おまけに背もさほど高くないので下手をすると女の子に間違えられる。燃費がいいのが唯一の利点といえば利点か。
「やっぱりよう君も可愛い子に告白されたりしたらOKしちゃうのかな?」
「ん〜……どうなんだろ……よくわかんないや」
すぐ側に姉ちゃんがいつもいるからなのか、ここ最近は学園にいる女子を見てもあまり何も感じなくなってしまっている。
晴彦曰く粒ぞろいらしいけれどそれすらも霞んでしまう辺り、やはり姉ちゃんの容姿は恐ろしいと思う。
「特に気になる子がいないならお姉ちゃんがよう君をもらっちゃおうかな〜?」
「近親相姦の上にブス専とか僕はどんだけマニアックなのさ」
「むぅ……最近よう君がつめたいです」
最近は慣れたものでこういった言葉も流れるように出せるようになった。
未だに良心は痛むけどね。
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夕方以降の家の中はなかなか過ごしにくい。
『うまぁぁぁい!』
「わぁ〜……これ美味しそうだねぇ」
「ん、そうだね」
─うねうね─
「ほっかほかのご飯によく合いそう……あぁ、お腹減ってきた」
「もうすぐ夕飯だから我慢ね」
─ぐねぐね─
「じゃあちょっとつまみぐい……」
「リビングで僕のズボンのチャックを開けようとするのはやめようね。自室だからいいって訳でもないけど」
隣に座ると姉ちゃんの尻尾が脚やら腕やらに絡みついてきて身動きがとれなくなる。
それを感じているのを悟られまいと僕は今日も耐えるのです。
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昇降口で姉ちゃんと別れ、自分の教室へ。
机のフックに鞄を掛けて席に着くと、机の上にドサドサとノートが無造作に置かれた。
見上げるとガラの悪い生徒が何人か僕を見下ろしてニヤニヤしている。やれやれ……またか。
「ぃようガリ勉君。今日もレポートの代理頼んでいいかな?」
「はぁ……わかったよ。どうせ締め切りは明日でしょ?」
「わかってんじゃねぇか。それじゃあ頼んだぜ〜」
そう言うと彼らはぞろぞろと教室を出ていった。
もうすぐHRの時間なのだけど……まぁやることと言ったら外の目立たない所でタバコふかしながらサボりなんだろうなぁ。僕に何か害がある訳じゃないから別にいいんだけど。
「よう君……」
「……ん?あれ、姉ちゃん僕の教室まで来てどうしたの?」
どこか悔しそうな表情で僕を見下ろす姉ちゃん。手には僕のお弁当……って。
「ありゃ、母さん姉ちゃんと僕の弁当間違えて持たせちゃったのか。ありがと、姉ちゃん」
「ねぇ、よう君はそれでいいの?」
それで、というのは僕の机の上に乱雑に放り出されているノートの事だろう。
このままにしておくのも見栄えが悪いので纏めて向きを揃えてカバンの中に押しこむ。
「もう慣れたよ。予習を余分にやると考えればさほど苦にもならないしね」
「……そう」
僕が鞄から出した姉ちゃんの弁当箱を受け取ると、何か考えるようにしてその場を立ち去っていった。
なんだかいらない心配させちゃったかな……
「なんだかんだで顔以外はいい姉ちゃんだよな、お前の」
「君は顔が見られても中身は下衆だけどね」
「お前さらっと毒吐くなよ……つーかそこまで下衆じゃねぇよ」
いつもの軽口の応酬を晴彦としていると担任が入ってきてHRになった。
さて……今からレポートの構想
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