4月27日 僕と姉ちゃんと映画館

黄金週間二日目。流石に連日婿探しという骨折り確定行事に付き合う気にはなれず、僕はリビングで自由時間を過ごしている。
釣られるように姉ちゃんも来てソファに寝そべり、僕を観察し始めたのだが……

「暇ー……」

姉ちゃんがソファでゴロゴロと暇そうに転がっている。そんなに暇なのであれば外へ行って婿探しでもしてくればいいのに。見つからないだろうけど。

「ねー、ようくーん。ひまだよぅ」
「ごめん、僕は忙しい」

リビングの大型テレビでは僕がエスコンをやっている。大画面でやるドッグファイト……胸が熱くなるね。

「ひーまーだーよーひーまーだーよー!」

暇に耐えかねたのか姉ちゃんが後ろから抱きついてぐらぐらとゆすってくる。
胸が当たる、視界がブレる、手元が揺れるでまともに集中できたものではない。

「うわっと!姉ちゃん邪魔しないでって……あー!」

─ドーン……─

『ブレイズ!応答して!ブレイズ!』

テレビからは女性パイロットが悲痛な声で叫んでいる。
あぁ……ここ難しいから集中したかったのに……

「どれだけかまって欲しいのさ……」
「一日中暇にならないくらい!」
「勉強でもやっていれば?もしくは何か遊び見つけるとかさ」
「問題集も全部終わらせちゃったしゲームはお姉ちゃんできないし」

姉ちゃんはコインゲームは得意なくせにテレビゲームとなると一気に下手になる。
上半身はぐわんぐわん揺れるし反応はワンテンポ遅いし自分の揺れで酔うしで大変だ。

「んじゃテレビでも見ようか……。何かやってたっけ?」

ゲームの電源を落としてテレビへと切り替える。
番組はどれも主婦向けの番組しかやっていない。趣味があわなさ過ぎてポチポチとチャンネルを変えていると……

「あれ、これは?」
「映画のCMだね。割と人気らしいよ」

観客動員数1000万人突破という謳い文句の恋愛映画のCMがやっていた。
僕は映画にはさして明るくもないのでそれが凄いのか大したことないのかよくわからない。
が、姉ちゃんはそれを食い入るように見つめている。

「ねねねね!よう君よう君!」
「……何を言い出すか大体予想は付いたけど……何?」
「これ見に行こうよ!映画ってやつ!」

これだよ。
姉ちゃんは好奇心が強いのか、何か目新しい物を見つけるとなんでも興味を持つ。
ラブホテルを見つけた時入ってみようと言われた時は流石に焦った……入らなかったよ?流石に。

「ゴールデンウィークで割引キャンペーンやってたっけな……たまにはいいかもね」
「やた♪それじゃ用意してくるね!」

そう言うと姉ちゃんは部屋を出て二階へと駆け上がっていった。
僕も外出用に着替えようかな……



「姉ちゃん遅いな……」

玄関から出て待つこと15分……姉ちゃんが一向に出てこない。
別に急ぐ必要も無いのだけれど。

「おまたせ!」
「あぁ、やっとき……」

玄関が開いて姉ちゃんが出てきた。そして、その容姿をみて絶句する。
何と言うかまぁ……見ていてドキドキする。
別にきわどいファッションという訳じゃない。清潔なワイシャツに膝上あたりのチェックのスカート。
白いニーソックスを履いて茶色の革靴。すごく、お姉ちゃんっぽいです。

「あ、見とれてた?」
「……姉ちゃん」

しかし、僕にはこう返す事ぐらいしかできない。

「素材で台無し」
「酷!?」

本当はすっごく似合っててすっごく可愛いって言いたいんだよ?でもそんな事言ったらモロバレ確定じゃないか。

「空回りする姉ちゃんは置いといて……早く行かないと映画始まっちゃうね。急ご」
「ねぇ、私ってそんなに酷いかな?ねぇ!?」
「馬子にも衣装が通じない程度には」
「もっと酷い!?絶望した!」

やれやれ……本音がぶちまけられたら楽なのにね。

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姉ちゃんが公園でいちゃついているカップルを見ると。

「いいなぁ……」

ぎゅっと手をつないでくる。

「姉ちゃん、手」
「あ、ごめ……」
「流石に姉ちゃん相手は無理」
「がーん……」

そして滅茶苦茶落ち込む。
……落ち込んでいる姉ちゃんを見るのも割と楽しかったりする。

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一番近場にある映画館と言えば駅前にあるのが1つ程度。
大音量サラウンドが売りの割と大きい規模のやつだ。
ここで映画を見るのなんてどれぐらい振りだろうか。一番最後に見に来たのは確か……小学生の時に某懐怪獣の映画を見に来た時だったかなぁ。童心ながらにあれは泣けた。

「おっきいねぇ……実家ほどじゃないけど」
「いやいや、ウチここよりはるかに小さいじゃないか。何言ってんのさ」

姉ちゃんは時々あちら側の世
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