第六十話〜神戸シティ攻防戦〜


男であれば誰しも巨大ヒーローというものに憧れを持つことがあるだろう。
巨大な怪獣が暴れだすと颯爽と変身、登場し、怪獣を蹴散らして街を守る。テンプレだがそれ故に王道。子供の頃に何になりたいかと聞かれて『ウルト○マン』と答えた奴も少なくはない筈だ。……俺は小さい頃の事を覚えていないからなんとも言えないんだけどな。
じゃあ……巨大化して戦う手段がない場合、ヒーローはいかにして怪獣を打ち倒すのだろうか。ヒントという物は目に見えているが故に気づきにくい物だったりする。

〜エルファの実験室〜

本日の俺はエルファに呼ばれて彼女の実験室へ来ていた。
何でも以前作った精神世界没入陣(要するに俺の脳チップへ一般人が没入するためのもの)の改良版が出来た、という事らしい。
彼女にはなにかとお世話になっているし、そのぐらいの実験台ぐらいにはなってやろう、という事で赴いていたのだが……

「何故お主達まで付いて来るのじゃ……」
「完全にだれもいない所に二人きりなんてうらや……危険な事させる訳にはいくか」
「本音がだだ漏れじゃな」
「それに楽しそうだしな。私達も混ぜてもらうぞ。」

それにフィーやミストまでくっついてきてしまったのだ。二人共それなりに長身なのでエルファの小さめの研究室が割と窮屈な事になっている。

「しかしこんなに大勢が頭の中に入り込んで大丈夫なのか?」
『脳チップのコアシステムを傷つけない限りは理論上いくら人数が入った所で問題ありません。』

一応ラプラスからもお墨付きを貰ったから大丈夫とはいえ……密室とも言える中にこいつら三人と閉じ込められるのか。

「どうか気絶するような事態にはなりませんように……」
『無駄なあがきですね。』
「いや、もう祈るしかないじゃないか。」
「そろそろ始めるからの、皆魔方陣の所定の位置に座るのじゃ。」

俺が魔方陣の中心に置かれている椅子に座り、ミストやフィー、エルファがその円周あたりに置かれている椅子に座る。
エルファが術を唱え始めると陣に光が灯っていく。

『プログラム受信。演習モードを起動します。』
「え、ちょ」

唐突に何かが脳チップに送られてきて自動実行される。
普通はセキュリティに阻まれてこんな事は起こらないのだが……こんな事ができるのは知っている限りでは一人ぐらいしかいない。

「エスターーーーーー!」

呆れとも怒りともつかない感情で叫びながらも一度起動した没入プロセスは止めることができず、意識が情報の海へと飲まれていった……。

<DIVE>



受け取ったデータにより周囲の情景が構成されていく。
辺りは薄暗く、光源は窓から差し込む僅かな光しかない。
薄明かりの中目を凝らすと、周囲には弾薬箱やゴチャゴチャとした機械が積まれている。
床には埃が積もっていて掃除もせずに放置された年月は1年や2年じゃ済まされないことを物語っていた。
動く気配に目線を向けると見知ったシルエットが3つ。エルファ達だ。

「むぅ……何故兄様のでんのーせかいはこうも殺風景な場所ばかりなのかのぉ。」
「済まない、また割り込みがあって演習プログラムが起動したらしい。」
「演習……というのは軍事演習とかそういう類の物か?」

3人とも見慣れぬ景色にきょろきょろと辺りを見回している。
暗がりに目が慣れてくると、うっすらとだがどういう部屋なのかがわかってきた。

「ここは……ホテルか?しかも結構高級な……」
「ホテルを選ぶにしてももう少し情緒のある場所は選べなかったのか?」
「いや、俺が選んだわけじゃねぇし……」

とはいえあいつの仕組んだ事なのだから何かしらの戦闘行為は控えているだろう。
今はまだ始まっていない……という事は準備時間中なのだろうか。

「お、いたいた。お〜い、こっちだこっち!」

扉が壊れて外が丸見えになっている入り口に誰かがいて、外に向かって手招きをしている、
なんだか見たことがあるような……

「いよう、アルテア!元気にしてたか?」
「あ……あぁ、ラキか!久しぶりだなオイ!」

なんとそいつは以前戦闘シミュレーターで一緒に戦ったラキだった。
無論面識のない他の3人は面食らっている。

「・・・ここか」
「ようやく合流できましたね」

さらに廊下から二人ほど男が入ってくる。どちらも面識はない。

「彼らは?」
「あぁ、レックスやイーグルはともかくブレードはこの姿じゃ初めてだったよな。」

ラキが一歩引いて彼らの横に並ぶ。片方は金髪の男性。見るからに人間なのだが……勘と言うか感覚で人間ではないとわかる。ここいら辺は電脳空間のNPCと似ているかも知れない。
もう片方は日本人のような男。ペンのようなものをベルトにいくつか下げている寡黙そうな男だ。

「・・・連合軍実験強襲部隊<ドラグーン>所属、ブレード。階級
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