窓から差し込む日差しに室内の温度が少しずつ上がっていく。
目覚まし時計はまだ鳴らないので、まだもう少し眠れるはず。
そろそろ厚掛けから薄掛けにしないと暑くなってくるなぁ……今だって結構汗ばんで……
「って、朝の気温じゃない!?」
いつまで経っても鳴らない目覚ましを見てみるとなんと9時を回った頃。遅刻も遅刻、大遅刻だ。
「ヤバイヤバイヤバイヤバイ!何で誰も起こして……」
ふと、落ち着いて今日の日付を思い出してみる。
そして思い当たった頃には全身の力が抜けきっていた。
「なんだ……今日は休みだ……」
そう、ゴールデンウィークが始まったのだ。普通の人にとっては喜ぶべき事なのかもしれないが、僕にとっては気の休まらない1週間が始まろうとしている。
「父さんも母さんも……旅行でいないんだよなぁ……」
これまた櫻井家の恒例行事、夫婦によるゴールデンウィーク旅行。今年は熱海で温泉に入ってくるそうだ。
その間僕は一人で過ごすことになる。
流石に小学生の頃までは連れていってもらっていたが、中学生に上がってからは自分一人でなんとかするように言われたんだよね。
数少ない旅行の機会だったので当時は物凄く残念だったのを覚えているけれど、今では逆に一人で気ままに過ごせるというメリットもある為にむしろ心待ちにするようになった。
……みやげ話の美味しいものの話は聞いていて凄くおなかが空くけどね。
「でも今年は……一人じゃないんだよねぇ……」
そう、今年は姉ちゃんがいる。ぽっと出の異世界から来た淫魔のお姫様。
しかも超絶美人。
本来であるならばそんな美人とひとつ屋根の下二人っきりというシチュエーションにドキドキする所だけど、もし彼女が美人である事を知っている事がバレたら……彼女の国へ強制連行される事に。晴れて僕は行方不明の身だ。
そして、その状態がほぼ一日中続く事になる。
今までは学園の授業中など離れて過ごすことが比較的多かったので幾分気は楽だったけれど、この1週間はそれを24時間続けなければならない。
「鬱だ……」
休みだからと言っていつまでも寝間着でいる訳にはいかないよね。
取り敢えず着替えなきゃ……
「ゆうくーん!起きてるー!?」
「きゃぁぁぁあああああ!?」
丁度寝間着を脱いだ所で姉ちゃんが部屋に押し入ってきた。普通逆でしょ!?こういうシチュエーションは!
「あら、着替えてた?」
「そうだよ!ていうかノックぐらいしてよ!?」
「えーめんどくさーい♪」
「わざとだ!絶対にわざとだ!」
ていうか何で僕は自分の体を脱ぎかけの服で隠しているんだろう。男なのに。
「ほら、着替えるんだから一旦外出ててよ」
「う〜ん……どっちかというと着替えるゆう君を視姦したいんだけど」
「悪趣味!?」
着替えを見たいと駄々をこねる姉ちゃんを何とか廊下へと押し出し、ドアに鍵をかけて着替えを再開……
─ガチャ─
「やっぱり見たい!」
「出てけー!」
僕の姉ちゃんは人の言う事を聞いてくれない。
───────────────────────────────────────
姉ちゃんが料理をすると。
「よーし、お姉ちゃん料理頑張っちゃうぞー!」
30分後。
「おまたせー!」
「おぉ……ジーザス……」
物凄く豪華な料理が出てくる。ただし……
─ひらり─
「ん?」
レシートには合計金額が5桁……
コストは度外視。
────────────────────────────────────────
「着替えた?よし、それじゃあいこー!」
「いやいや、唐突過ぎでしょ。一体何をしろと?
着替えて廊下に出た途端に姉ちゃんに手を引かれて玄関まで連れてこられる。
まだ朝ごはん食べてないのに……。
「もちろん私の運命の人探し!」
「それ僕が付いて行って意味あるの……?」
「特に無い!」
頼むので家でおとなしくさせて下さい。
結局無理矢理に外へ連れ出された僕は近くの駅前辺りで姉ちゃんが声を掛けられるまでブラブラする事に。
僕はと言うと途中のコンビニで買ったおにぎりを食べ、姉ちゃんはついでで買ったポアロチョコをぱくついている。というかこの構図……傍から見るとカップルが並んで歩いて買い食いをしているようにしか見えないんじゃ……?そうなると姉ちゃんの目論見には当然逆効果になる訳で……。
「姉ちゃん、別れよう」
「その言い方は物凄く誤解を受けると思うんだけどな」
口が滑った。
「姉ちゃんは運命の人を探しているんでしょ?だったら隣に弟とはいえ男の人がいたら声をかけにくいんじゃない?されることはナンパに近い訳なんだからさ」
「う〜ん……でも一人じゃ心配だなぁ……」
「大丈夫だって。流石に姉ちゃんに手を出す物好きはそうそういないと「よう君が」待
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