「……っ。……ごめんなさい……ごめんなさい……。」
翌日。雨が上がった所を見計らって外で穴を掘る。
シャベルは小屋の物置に入れてあった。
服はタンスの中をよく探したらあった。
僕と同じくらいの歳の子供がいたのかもしれない。
僕は謝りながらお姉さんのお墓の穴を掘る。
疲れたけれど、やめるわけにはいかない。
これは僕が引き起こした事なのだから。
埋めるのに十分な深さの穴を掘ると、お姉さんの骨を毛布に包んで穴の前まで持っていく。
「ごめんなさい……こんなお墓だけど、どうか安らかに眠ってください……。」
毛布の中から骨を一つずつ出して、穴の中へ置いていく。
全部入れ終わったら、土をかぶせて拾ってきた木の棒を立てる。
終わったら、手を組んでお祈りをした。
一杯穴を掘って疲れたけれど、ここでは眠れない。
またお姉さんみたいな人が来たら、同じことをされてしまうかもしれない。
もう、死なせたくない。
麻袋を物置から引っ張り出して、毛布や着替えを詰める。
食料はお姉さんの袋から貰おうと思ったけど、変な味がして食べられなかった。
使えそうなものはナイフくらいしか無かった。
小屋を出てお姉さんの墓の前でまた手を組む。
「お姉さんの荷物、少しだけいただいていきます。ごめんなさい。」
そして僕はその場を立ち去る。
目立つ平原は良くない。早足で近くの森の中まで入っていった。
森の中は薄暗くて、見通しが悪かった。
本来なら不安になるのだろうけれど、誰にも見つかりたくない僕に取っては安心な場所だった。
「おなか……空いた……。」
そう言えば昨日起きた時から何も食べていないや……。
美味しくなくてもお姉さんが持っていた食べ物を持ってくるべきだったかな……。
キノコとかが生えていたけど、怖いから食べるのはやめた。
暗い部屋の中で読んだ本で、色んな毒キノコがある事を知っていたから。
変に知らないものを食べたら、ヘタをすると死んでしまうかも知れない。
「……?あれ?何で?」
キノコが、どんどん増えていく。1個や2個じゃなく、木にも草の間にも生えている。
「キノコの森なのかな……。」
獣道を進んでいると、だんだんと靄がかかってきた。
「あれ……?これ、霧じゃない。」
湿っぽい感じはあるのだけれど、霧みたいに冷たくない。
霧って湿度が高くて寒い時に出てくるんだよね?
「なんだか不気味だなぁ……。戻ったほうがいいかな?」
しばらく考えて、不自然な場所に行くのは危険だと判断する。
「戻ろう。平原を歩かなくても、森に沿って進めばいいよね。危なかったら隠れられるんだし。」
中間辺りの決断に落ち着く。僕はその場を引き返して森の出口へと向かった。
「……これは……マズいよね。」
平原近くまで戻ると、誰かがいた。緑色の肌をした、大きな女の人。
一応身を隠しているから気付かれていないけど、少しでも物音を立てると気付かれそうな気がする。
「危険でもあの中を進むしか無いかなぁ……。」
迂回して進んでうっかり小枝を踏んで音を立てたらマズい。また引き返して、あの霧の中を突破することにした。
「でも……何なんだろう、これ。触っても何とも無いのに。」
霧の中を歩いて行く。キノコの数はもう数えるのも面倒くさい程の数になった。
菌類特有の匂いが鼻につく。
「……あれ?何だろう……人かな……?」
進む先に白い服を着た人影がいる。
動きが少ないけれど、確かに生きているみたいだ。
僕はその人影に近寄ってみる。追いかけられそうになったら、逃げればいい。森の中なら小柄な僕のほうが有利だ。
「……本当に何だろう。これ。」
近寄ってみたらそれは、女の人のような何かだった。
キノコ人間といえばぴったりかも知れない。
眠っているのか、じっとして動かない。ちょっとつついてみる。
ぷにぷにしている……ちょっと気持いいかも。
よく見ると、同じような人があちこちに立っている。
「危険な物……じゃないのかな?」
さっきから動かないし、声も出さない。寝ているからかな?
しばらくその人みたいな物を観察していると、うっすらと目を開いた。
「わ、起きた。」
「ん〜……?」
その人はしばらく寝ぼけたみたいにぱちぱちと瞬きを繰り返すと、僕の方を見た。
「あ〜、可愛い子みっけ〜」
距離が近かったためか、反応が遅れて僕はその人の腕の中に捉えられてしまった。
「わ、何!?何!?」
「いっしょになろ〜♪」
そう言うと彼女は僕のズボンに手を掛ける。
「ちょ、待って!やめ、下ろさないでぇ!」
頭によぎるのは、昨日のお姉さんのこと。
もし、この人がお姉さんと同じような存在だったなら……この人は多分、死んでしまう。
「離してよ!離してったらぁ!」
もがくけれど、離してくれない。どうにか振りほどかない
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4 5]
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録