自由を得るには必ず責任がつきまとう。
自由だからといって好き勝手をするのは許されないし、他人の自由を奪ってもいけない。なんともややこしい事だ。
それでは、自由を奪われたらそいつには責任を免除する権利が与えられるのだろうか?
俺がこの問いの応えるとしたら、『自由がある内に束縛されることを回避する責任を怠った』と答えるだろう。
だから自身が自由の身だからといって決して警戒を怠ってはいけない。
油断していると……進む事も戻る事もできなくなるぜ?
〜カルラの家〜
AM5:00
少し離れた所でもぞもぞと動き出す気配に目が覚める。
ようやく日が昇り始めた時刻、カルラが起き出していた。
「っと……起こしちゃった?」
「ん……別にいい。家主より遅く起きるわけには行かないからな。」
軽く伸びをして残った眠気を飛ばす。澄み切った朝の空気と共に外から小鳥のさえずりが聞こえてきた。
「朝ごはんはどうする?リクエストがあるならそれにするけど……」
「手軽にできるものでいいだろう。俺も手伝う。」
朝食のベーコンエッグとトーストを頬張りながら今日の予定をカルラから聞かされる。
「本当だったらこの家から出しちゃいけないんだけど……貴方もアマゾネスになるなら狩りの仕方を覚えなくちゃね。という訳で朝ごはんを食べたら一緒に狩りに行きましょ。」
「りょーかい……と」
俺の返答に何故か変な顔をしてじっと凝視してくる彼女。
……まずい、狩りに出た時に隙を見計らって逃げ出そうとしたのがバレたか?
「ねぇ、何でいつも男言葉なの?」
「あ?あ〜……」
まさか正直に実は男ですなんて言うわけにも行くまい。
そんな事を口走ったが最後、姿が戻った時にフルボッコにされて即婿入りだ。
おまけに鵺も無いので勝てる見込み無し。強制婿入りルート一直線だ。
「実は軍隊に入っていた事があるんだ。その時に口調がうつってね。」
ウソは言っていないぞ?ウソは。
「その割には体力がなさそうだけど……」
「事務仕事ばっかりだったんだよ……悪いか。」
うん、これはウソ。
「そう言えば名前を聞いてなかったよね。すっかり忘れていたけど……」
「あぁ……そうだな。俺は……」
流石に本名はまずいだろう。さて、咄嗟に出さないとまずいよな。
「アルト。アルト=グランテだ。」
「おっけ、アルトね。よろしく。」
あぁ、またウソが一つ積み重なってしまった。
ま、いいか。
〜メルガの森〜
そんな訳でカルラに連れてこられてハンティングをする事になった。
カルラの持ち物は短弓……狩りの時に長剣は逆に邪魔になるらしい。
そりゃ剣振り回して追っかけてきたら逃げるわな。
対して俺はというと……
「なんでナイフ1本……?」
「ま、これが俺のスタイルとだけ言っておく。」
そう、元々持っていたナイフ1本のみ。
別に伊達や酔狂ではない。これ1本あれば南米のジャングルの中でも生きていける。
今は体力的に厳しいかもしれないけどね……。
足跡や落し物(糞)などを辿って追跡すると、1匹の鹿がもしゃもしゃと草を食んでいた。
やれやれ……これから狩られると知らずに呑気なものだ。
「慎重に……慎重に……」
やけに緊張しながらカルラが弓に矢をつがえ、鹿に対して狙いを定める。おい、手が震えているぞ。
「っ!」
手を離して弓を射るが、矢はあらぬ方向へ飛んでいって木立の中へ消えていった。
鹿はというと無関心で今も草を食んでいる。
「お前下手糞な。」
「あうぅ……」
どうやら長剣以外の武器の扱いは苦手らしい。まぁ、俺も弓は使ったことが無いから人のことを言えないけどね。
「それじゃあアルトはどうやって仕留めるのさ……」
「ん〜……できるかな。少しやってみよう。」
俺はナイフを引き抜くと手の上で回転させて刀身を指で挟む。
体勢を整えて狙いを付け……
「………………っ!」
投げた。
ナイフはクルクルと回転しながら綺麗な直線を描き、鹿の首……気管あたりに突き刺さる。
鹿は喉に異物が刺さって恐怖に跳ねまわるが、ナイフが刺さった喉で呼吸ができるわけもなく、暫くするとパタリと倒れた。
「すご……」
「ま、ざっとこんなもんだ。」
死骸に近寄ってナイフを回収すると、鹿の喉を掻き切って中の血を抜き始める。
「ほれ、ロープ。吊り下げないと効率よく血抜きできないだろうが。」
「あ、うん。」
流石に女性化した腕力では鹿1頭持ち上げるのは無理だったので、吊り下げるのはカルラに任せた。彼女は……どこか複雑な表情をしていたが。
「ねぇ。」
「ん?どした。」
血抜きには結構時間が掛かる。のんびりと持ち寄った干し肉をかじりながら空を見上げていると、彼女が唐突に切り出した。
「あのナイフ投げって……誰に
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