生まれ変わるとしたら何になる?と聞かれて異性になってみたいと答える奴は少なくは無い筈だ。
いつもの自分と違う体、違う性格、性質……まぁ下心込みでなりたいって奴もいるだろう。
ちなみに俺は生まれ変わるとしても性別を変えたいとは思わないな。
何故かって?男としての世の中の渡り方を知っているのにその経験をわざわざリセットしてやり直すこたぁ無いだろ?
〜冒険者ギルド ロビー〜
「さて、今日お主達に集まってもらったのは他でもない……少し相談することができたからじゃ。」
普段はアルテアが座っているテーブル。
そこには彼以外のいつものメンバーが集まっていた。無論、ラプラスも含めて。
「相談って何よ。少なくともこの中では一番有能って言えるエルが解決できないことを相談されても答えられる気がしないんだけど……」
どことなく複雑そうな表情で返すニータ。
彼女の言う通り、この中ではエルファが問題解決に関しては一番有能と言えるだろう。
魔術師ギルドとサバト経営の二足のわらじを行なっている彼女の手腕は伊達ではない。
「実は……この薬の事なんじゃがの。別のもっと大きなサバトから試供品として送られてきた物なんじゃ。これを手本にもっと頑張れ、という事なのじゃろうが……」
テーブルの上に置かれた小瓶にはサラサラとした液体が封入されている。
「えるちゃん、これなぁに?」
「うむ、性別転換薬……という物じゃそうな。要するに飲むと性別が逆転する物らしい。人間限定での。」
チャルニがその小瓶をつまみ上げ、軽く振ってどんな物か見ている。
「効果はわかったけど……誰に使うつもり?少なくともあんたがこういう薬を使えそうな人間の知り合いって言ったら……」
その時、メイとアニス、エルファ以外の全員がハっと気づく。
『マスター、ですね。』
「?おにいちゃんがおねえちゃんになっちゃうの?」
「まだ使うと決まったわけでは無いがのぉ。」
そう、彼女が今までこれを持て余してきた原因はここにある。
本来この薬はマンネリ化したカップルが新しい刺激を求めるための物で、特にそういう問題に悩まされていない彼女達にとって無用の長物だったのだ。
「薬効は数日も経てば消えるが……正直言ってわしらには全く使う必要性を見いだせないんじゃがの。しかし使わなければ使わなかったで先方から何を言われるかわからん……どうしたものかの?」
「一番簡単なのはミリア殿に渡して感想を聞く程度ではなかろうか?彼女なら自分が面白そうと感じるのであれば真っ先に飛びつきそうだが。」
チャルニから小瓶を受け取ったミストが中身を見定めながら意見を言う。
彼女の案はこの中では最も無難な意見だったのではなかろうか。
「おとおさんが、あかあさんに?あれ、でもそうなるとおかあさんはおかあさんのままでおかあさんがふたりになって……あれれ?」
しかし娘にとっては頭が痛い意見だったようだが。
「ん〜?お前ら何やってんだ?」
「あぁ、アル。戻ってきたんだ?」
「ん。朝飯買ってきた。」
彼が手に持っているのはミートブレッド……最近はこればかりである。
彼女達としてはもう少し栄養に気遣って欲しいと口を酸っぱくして言っているのだが、彼は一向に止めようとしない。なんでも肉が食える時はきっちり食べておきたい、だそうだ。
「ちょっと変わった薬が手に入ったんじゃが……処分に困っていての。今ようやく渡す先が決まった所じゃ。」
「ふぅん……。ま、俺には関係ない話か。んぐんぐ……。」
そう言って再びミートブレッドを頬張り始めるアルテア。
この男、非常時以外はかなり呑気である。
「……んぐ!?」
しかし、彼の様子が一変した。胸を拳で叩いているあたりどうやら喉に食べ物がつかえた様子。
『マスター、テーブルの上に飲み物が。』
「……!!」
ラプラスの一言に反応してテーブルの上の瓶をひっつかみ、栓を外して一気に呷るアルテア。
その動きは異常に素早く、誰も止めることができなかった。
「ああああぁぁぁぁあああああ!?ラプラス、お主なんてことを!」
『出来心です。』
ラプラスに教えられて思わず飲んでしまったが……そんなにまずい物だっただろうか?
ほのかにシトラス系の匂いが付いた飲み物だった気がするんだが。
「兄様!すぐにそれを吐き出すのじゃ!」
「いや、いきなりそんな事言われても吐き出せるもんじゃないだろ。」
素早くフィーが俺へと駆け寄り、肩に手を置く。
「アルテア、すまん!」
「な……ふぐぅ!?」
腹部に強烈な鈍痛が走る。
正体は当然、フィーのボディーブローの一撃だった。
「ふぃ……おま……なに……」
「クソッ!まだ吐かないか……。もう一発!」
「おぐぅぅうううう!?」
「やめるのじゃ!吐かせる以前に兄様が内臓破裂で
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