〜冒険者ギルド ロビー〜
「今までお世話になりました!」
朝のロビーにとあるラージマウスの声が響き渡る。声の主はニータの部下だ。
「うん、今まで有難うね。お幸せに……」
ウキウキとギルドから出ていくラージマウス。それを見送る俺とニータ。
ここのところ彼女の下から巣立っていくラージマウスをよく見る。
「そうだよね……みんないつかは気に入った人を見つけて巣立っていくんだよね。」
「お前らの場合って大抵同じ奴を好きになるんじゃないのか?」
言ってから少し戦慄する。同じ奴を好きになる=俺にニータが大量に群がってくるようなもの。
「そうなんだけどねぇ〜……アルがいつまでもフラフラしているから皆いい人を見つけて行っちゃうんだ。」
「あはは……そりゃよか……残念だったな。」
おっと危ない……つい本音が出そうになった。流石に十人二十人もニータと同じような奴に弄くり回されたら身がもたないからな。
「……ねぇ、本当に身を固める気は無いの?」
「少なくとも今の所は、な。こっちとしてもやるべき事を終わらせない内に人生設計立てろと言われても困ると言うか。」
「……甲斐性無し。」
ボソリと言われて言葉に詰まるが、結局俺達は戦場を渡り歩く根無し草だ。甲斐性なんてある方が珍しいだろう。だからと言って全てを投げ出す気は毛頭ないが。
「ま、俺がこっちに来た目的を全部終わらせたら考えておくさ。」
「……それじゃ遅いんだけどな。」
本当に俺に聞こえない程度の声でニータが何かをつぶやいた。
さて……今日も元気にお仕事でもしますか。
〜ギルド宿舎 アルテア自室〜
時刻は夕暮れ時。依頼を消化して帰ってきて自室の扉を開けようとした時、違和感に気づく。
「(鍵が……開いている?)」
デザートイーグルを展開し、静かに扉を押し開く。部屋の中は明かり一つついておらず、ほぼ真っ暗の状態だ。
警戒しながら隙間から部屋の中を覗き込むと、ベッドに誰かが座っている。
身長から言って子供程度……アニスちゃんとメイはロビーで会ったし、エルファはサバトの黒ミサが近いとかで魔術師ギルドに篭りきりだ。となると……
「ニータか?」
「あ……アル、おかえり……」
その小さな人影は確かにニータの声で返してきた。今までも彼女が俺の部屋に忍び込んできた事は多々あったが、今回はどうも様子が違う。
「どうした、明かりも点けないで。」
「ん……少し、寂しくてアルの事を待ってたんだ。」
いつもと様子が違う彼女に訝しみながらも彼女の隣に腰掛ける。すると、彼女は頭をこちらへもたせかけて寄りかかってきた。今日の彼女は、やけにしおらしい。
「今朝の子の事……覚えてる?」
「ん、あぁ……群れを離れるとか言ってた奴か。それがどうした?」
彼女がぎゅっと俺の袖を掴んできた。ラプラスは……空気を読んでいるのか何も喋らない。
「あの子……私達の群れの最後の子だったんだ。」
「それって……」
俺を見上げてくる瞳が漏れ差してくる夕日に反射してキラリと光る。
「あたし……一人になっちゃった……」
「…………」
それは、信じられない事だった。普通は群れで暮らすラージマウスが孤立するなどありえない事だからだ。もしかしたらその状況を……俺が作ってしまったのではないか?
「はは……これじゃ情報屋も続けられないや。ただのコソドロが一匹出来上がっただけ……笑っちゃうよね、ほんと。」
「ニータ……」
益々強くしがみついてくる彼女に、俺はただ腕を回して抱きしめてやるぐらいしかできなかった。
「寂しいよ……ねぇ、あたし寂しいの。」
ここで「俺がいる」と言ってしまうのは簡単だ。
しかし、彼女にとっては群れでいることがアイデンティティの一つなのだ。軽々しく言えるはずがない……。
「アル……アルゥ……」
その小柄な体躯からは想像もつかないほどの力で押し倒される。彼女は凄まじい手際で俺の服を全て剥ぎとってしまった。
「おい、ニータ……何を……」
「一人はやだよぉ……寂しいよぉ……」
そして自らの服も剥ぎとり、秘所を俺のモノに擦りつけてくる。何かに取り憑かれたのように一心不乱にこすり続けるニータに若干の恐怖を覚えたが、この状態のニータを拒絶したくない。
「ね、あたし……欲しいものがあるんだ……」
「……」
「赤ちゃん、欲しい……寂しくなくなるぐらいいっぱい欲しいよ……」
子供。彼女の望み。
そして、彼女が欲しがるものを作るための方法は既に俺が持っている。あとは、俺が頷くだけでいい。しかし……本当にいいのか?俺はいつか元の世界へ帰る。その時に大勢の子供を残して、しかも俺の精に依存することになるニータを置いて帰るのか?
「……ごめんね、やっぱり……迷惑だよね。いきなり子供を作れなんて簡単に頷いてくれ
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