「こーんばーんは、ジェネルー。大好きだよ!」
ジェネルーの館を訪れていつものように開口一番そう言うと、ジェネルーはやはりいつものように深いため息をついてこちらを振り返った。肩まで真っ直ぐ伸びた髪がその拍子にふわりと舞う。
「こんばんはクラージュ。本当に、君はばかだなぁ」
きりっとした眼は知性という気品を感じさせるが、今は細く絞られ呆れをあらわしていた。いつも通りのやり取りで、いつも通りジェネルーに軽くあしらわれると思っていたのだが今回は様子が違った。
「そうだな期日までに私のいうものを揃えられたら、とっておきのプレゼントを君に贈ろう」
そんなジェネルーの言葉に舞い上がってしまう僕を誰も責めはしないだろう。
「これが揃えて欲しいモノのメモだ」
「ええっと、なになに
―――――――――――――――――――――――――――――――――
期日までに揃えて欲しいもの
ホルスタウロスミルク、アルラウネの蜜、とろけの野菜、
ぬれおなごのゼリー、堕落の果実、アラクネのリボン
一ヶ月以内
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か。ホルスタウロスミルクとアルラウネの蜜それからアラクネのリボンはわかるとして、ぬれおなごのゼリーはスライムゼリーの一種? とろけの野菜と堕落の果実ってのは何?」
メモを読んでそのまま思ったことをこぼすと、必要であれば自分で調べること、とジェネルーは付け加えた。
それからしばらく、言われたものをさがす日々が続いた。どれもこれも手に入れるのは簡単とは言えないものばかりで、何よりすぐ魔物に襲われそうになるのにはまいった。ホルスタウロスミルクはすんなり手に入れることができたが、アルラウネの蜜の時はハニービーに見つかりお持ち帰りされるところだったし、ぬれおなごのゼリーは危うく夫認定されるところだった。そんなこんなで1つを除いて手に入れることが出来のたが、どうしても入手できないものがあった。
「万魔殿とかどこにあるんだよ」
僕は1人酒場で愚痴る。最後の堕落の果実がどうしても手に入らないのだ。売ってる店は少なからずあるのだが、アラクネのリボンととろけの野菜を買うのに手持ちを使った僕には手の届かない金額だった。
「ねぇ貴方? 最近万魔殿を探してるっていう男の人は」
声の方を向くと、シスターとは思えないほど色っぽい女性が佇んでいた。
「そうだけど、貴女は?」
「万魔殿への行き方を知っている者、とでもいえば十分かしら?」
酒が入っているからだろうか、ただ話をしているだけだというのにとても扇情的に感じる。
「私を抱いてくれたら、連れてってあげてもいいわよ?」
結局いつもの輩かと思いつつもその女性から目が離せなかった。なぜだか今すぐ目の前の女性を押し倒してしまいたい。
「そうだな。それで堕落の果実を手に入れることができるなら……」
僕の言葉に初めて女性が表情を変える。
「なぜ堕落の果実が欲しいの?」
それは素朴な疑問だったようだ。
「これを揃えてくるようにって言われてるんだ」
女性から目を離さず、メモを見せる。
「ん〜」
女性は人差し指を口に当てながらメモに目を通す。
「この一ヶ月以内っていうのはいつから?」
やがて目を通し終えると女性はそう聞いてきた・
「ええっと、2週、いや3週間前だったかな」
「なぁんだ、そういうことか」
僕の返答を聞くと合点が言ったように頷いて、つまらなそうに脱力する。それと同時にさっきまで感じていた艶めかしさもいくらか和らいだ。
「えっと貴方名前は?」
「クラージュだけど」
「そう、一日だけ待っていてクラージュ。果実を持ってきてあげる」
「え、まだ何もしてないけど?」
「野暮なこと言わないでよ。さっさと揃えてその彼女の下へ行きなさい」
「あれ、このメモが女の人からだって言ったっけ?」
僕の言葉に女性は信じられないものを見るように目を見開いた。
「本気で言ってるの?」
そして呆れたようにこぼすため息は何処かジェネルーのため息と似ていた。
ともかくそんなこんなでなんとか言われたものを期日中に揃えることが叶い、ジェネルーの元へと急いだ。
「本当に期日中に揃えたのだな」
そう言って驚きを見せるジェネルーの顔にはほんの少し嬉しさも含まれていた。
「期日の一ヶ月にはまだ少しあるな。じゃあそれまではゆっくり休むといい。時期がきたらもう一度来てくれ。それじゃ」
ニッコリと微笑み有無を言わさぬままジェネルーは僕を締め出した。
「ち、ちょっとジェネルー!?」
「ゆっくり旅の疲れを癒せ。期日になるまでこなくていい」
ドア越しに告げられ途方にくれる。しばらく待ってみたが入れてくれる様子はないので、仕方なくジェネルーの館を後にした。
そして悶々としたまま数日
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