勇者になれなかった少年たち

俺は勇者になりたかった。



俺の名前はアルフレッド。年齢はまだ成人したばかりだが相当鍛えてる自信はある。
夢は勇者になること。そして魔王を倒し、世界を平和にすること。

鍛えているって言ったのは剣も魔法も冒険に必要な技術も全部鍛えてるんだ。
勇者になった時に困ることが無いように、実家の手伝いの傍らに鍛える日々を送っていた。
俺の実家は冒険者の酒場で、俺は気に入られていたから色んな人に技術を教えてもらえた。

戦士の兄ちゃんからは色んな武器の扱いを師事してもらった。
槍や弓、盾のの扱い方も教えてもらったけれど一番熱心だったのは剣の稽古だった。
教えてもらった後、それを身体に染み込ませるために毎日の素振りと型稽古は欠かさなかった。

魔術師の兄ちゃんにも魔法を教えてもらおうと必死に勉強した。
あまり良いことじゃないらしいけど、俺の熱意に負けたらしく幾つか魔法を教えてくれた。
教えてくれた魔法を使いこなせるように何度も練習し、実践で使えるくらいまで鍛えた。

森と街を行き来する狩人の兄ちゃんにも冒険に必要なことを教えてもらった。
どんな険しい地形でも生き延びられるように必要な技術を叩きこまれた。有料だったけど。
食べられるものの見分け方や獣の捌き方、いざというときの薬の作り方まで教えてもらった。

神父様のところにも毎日顔を出して主神様に祈りを捧げるのも日課になっていった。
勇者っていうのは主神様の力を授かってなるものだから、祈りを欠かすなんてことは出来ない。
どうか勇者にしてください、と毎日熱心に願った。

俺は一人で冒険が出来るくらいの色んな技術を教えてもらった。
いつでも勇者に任命されて、魔王を倒しに行ける準備は全部整っていた。





でも。
俺なんかを主神様が選んでくれるわけが無い。心の片隅でそう思っていた。
どうせ夢は夢のまま終わって、冒険者になるか騎士を目指すことになる。
出来ることが増えて、逆に現実が見えてきたのだ。

実力は未熟者。心も半端者。中途半端なのだ。
そもそもにして教団の推薦などはありえない。コネクションは無い。
冒険者の宿の息子なんてそこらにうじゃうじゃいる一人に過ぎない。
そこらにいるガキに神様は振り向いてくれないと思っていたのだ。

だから信託に頼るしか無いと思っていた。
神様から直接選ばれるようになると思っていたのだ。


そして、信託により教団から勇者となるべき人物が選ばれた。


新たな勇者が誕生したのだ。


俺は、それに納得できなかった。


選ばれたのは俺の幼なじみのリヒト。
ガキの頃から俺と一緒に遊んでる幼なじみの一人だ。
幼いころから俺の背中に隠れているようなうじうじなよなよしてるやつ。
いや、もう女みたいなやつなのだ。
背は低く、非力で、小柄で、色白。顔も女顔で髪がちょっと長くやっぱり女っぽい。
臆病で泣き虫、内気で人見知りの引っ込み思案。初対面の人とまともに話せない。
記憶力は良いけど、機転は効かなくてどんくさくてあまり頭もいい印象が無い。
虫の一匹でも殺すことが出来ない。そんな奴なのだ。
男の癖にとは言わないが、およそ戦うには向かないようなやつ。それがリヒトだ。


俺はこいつに懐かれている。
昔こいつがいじめっ子たちにいじめられてた時助けたのだ。
いじめなんて勇者がすることじゃないからな。人を助けるのは当然だ。
その後、俺にひっついて遊ぶようになった。
俺はガキ大将だった。ガキたちの間での勇者ごっこはいつも俺が勇者をやっていた。
リヒトはいつもそれに混ざって僧侶の役をやっていた。
こいつが殴るだの蹴るだの出来るやつじゃないと知っていたからだ。
俺が守ってやらないとすぐ魔物にやられちゃう奴だからな!っていつも守っていた。
リヒトは勇者のパーティの一員というよりは、守るべき人たちだったのだ。
だから、俺は納得できなかったのだ。


なんでこいつが。
俺が知らない誰かだったらまだ諦めがつく。
ああ、俺は神様に選ばれなかっただけなんだって。
俺より優れた人が勇者になって世界を救うんだと、言い訳が出来たかもしれない。




でも、なんでこんな勇者に似合わないような奴が。
よりにもよって、俺の後ろに居たような奴が勇者になってしまったんだ。




恨むぜ、神様。




*  *  *




「 ・・・あ、アル兄ちゃん。 」

「 ようリヒト。 いや、勇者様とでも呼んだほうがいいか? 」

「 やめてよ、僕なんかに勇者なんか務まらないよ・・・ 」

「 おいおい、べそべそすんなよ。泣き虫なのは変わらねぇな。
  それと勇者が務まらないなんて言うけど、勇者になることを受け入れたんだろ?
  なら、お前が勇者だよリヒト。 」

「 うん・・・でも、アル兄ちゃんのほうがなるべきだと思
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