「 こんばんはー・・・ あ、暗殺しにきました・・・ 」
私に暗殺の才能がないことを悟った瞬間である。なんで言った私。
窓から入りながら暗殺しに来たことをオドオドと告げるクノイチなんて他にいないわ・・・
自分ながら情けない・・・ヘタレすぎるでしょう私。
いやほんと。恥ずかしすぎて死にたい・・・
でも私は今からもっと恥ずかしいことをしようとしているのだ。
そこで寝ているクソ師匠に対して!
・・・ね、寝てるううううう!?
えっと、待って、落ち着いて私。
うん、どうしよう。
最初の計画がまず頓挫しちゃった。
クソ師匠はこれでも一流の盗賊。寝ているときでもその感覚が鈍りはしないはず。
当然の如く侵入者に気が付いて応戦か逃亡の準備を整えているだろうと思ってたの。
・・・まさか寝てるとは思わなかったわ。
ベッドでぐーぐー寝息を立てながら寝ているクソ師匠の近くに立って観察してみたわ。
・・・絶対これは寝たフリじゃないなぁ・・・
計画、ちょっと練り直さなきゃ・・・師匠が起きてること前提の計画だったしね。
計画では、起きていたところで逃げたとしても私の身体能力だったら追いつける。
応戦してきたとしても実力的には私のほうが上だし、組み付いて押し倒せると思っていたわ。
十分に勝算がある暗殺。私とクソ師匠の戦力差を冷静に分析した結果よ。
でも。
私の妄想ではクソ師匠は何らかの切り札を持って私をコテンパンに叩きのめして撃退するの。
何故か妄想の中では紐とかで動けなくなるような道具を使われる想像しかできなかったわ。
そのあとクソ師匠はこう言うの。嫌らしい笑みを浮かべてね。
「 おい、クソガキ。 それ、高かったんだぜ? その代償は身体で払ってもらおうか。 」
そんなこんなであれよあれよと暗殺は失敗して私はクソ師匠の慰み者にされちゃうの。
いくら泣いても叫んでも誰も助けてくれなくてクソ師匠に好き勝手されちゃうの。
えへへ。
・・・な、なによ。いいじゃない。別に、私は、それでも、いいんだし・・・
誰に言うわけでもない言い訳を心の中で用意して自分を落ち着かせる。
でも妄想の中ですら暗殺失敗してる私は、もう致命的に才能がないんじゃないかと思う。
うん、なんでだろう。全然成功するイメージが湧かないの・・・
失敗するパターンはそれこそ百通りは思い浮かんだわ。
百回も妄想したの?とか言わないで。
・・・したわよ。この一か月間、ずーっと。
そう、まだクソ師匠に暗殺を宣言してから一か月しか立ってない。
宣言した時は私は「 いつか立派な女性になって戻ってくるわ 」という意味で言ったの。
うん、一番最初はそのつもりだったし、今でもそのつもり。
でも私は今ここに侵入している。クソ師匠の寝床に忍び込んでいる。
暗殺を実行しようと思っているの。
なぜって?
が。
我慢できなくなったのよ・・・
何よ悪い!?いいじゃない別に!何か文句でもあるの!?本能に従ったまでよ!
別に笑ってもらっても構わないわ!性欲に負けた私をせせら笑うといいわ!
・・・あはは・・・
ついうっかり力なく自嘲してしまった私は、この情けない一か月を振り返ったわ。
里のみんなと合流してまず一番最初にしたことは、謝ることだったわ。
今まで出来なかったことが素直にできたの。
皆から驚かれたわ。
一か月前とはまるで別人のようになったって言われたの。
それから、色んなことを言われたわ。
強くなった。感覚が鋭くなった。言葉に棘が無くなった。優しくなった。綺麗になった。
それを私は誇らしくは思ったけれど、それよりも私を変えてくれた人が誇らしくなったの。
私の中で師匠が絶対の存在になっていったわ。
ここ、までは良かったのだけれど。
やっぱりちょっと、寂しかったの。
あの人の傍に居れないって事で心がぽっかり穴が開いた気分になったの。
だからずーっとあの人のことを考えていたわ。
皮肉げな笑いで私と言い争いをしていた姿や煙草を吸ってる後ろ姿を思い出したり。
冷静に私を見極めてくれる視線を思い出したり、頭を撫でて褒めてくれた感触を思い出したわ。
でも、逆効果だった。
どんどん切なくなっていったの。
胸の奥が切なくなって。お腹のあたりが何か欲しがっていって。
本能が、あの人を欲しがっていったの。
でも、立派になってからあの人の元へ戻ると決めていた私は、必死にそれを抑え込もうとしたわ。
自分で自分を慰めたの。
あの手を思い出しながら、自分の胸を弄ったり。
あの声を思い出しながら、自分の股を擦ったり。
どんどん寂しさ
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