穴熊〜恐怖の居玉〜

 快晴の空の下、コウは村の外れにある古い小屋へ続く道を歩く。
 土を踏む足はいつもより力強い、そして自信に満ちた顔、その表情を支えているのは一つの戦法。

 隣のお爺さんに、将棋で勝ちやすい戦法は無いかと聞いたら、教えてくれた居飛車穴熊。お爺さんは言っていた。

「堅いは強い、この言葉を頭の隅に置くように、しかしある戦法には気を付け……おい待て、急ぐでない待……」

 堅い囲いを生かした猛攻、堅くて強いまさに男のロマン。

「ツミカさん、今日は枕を高くして寝かせて貰うよ!」

 だがどんなモノにも弱点は付き物だがコウはそれを聞かずに帰ってしまった、それがどんな結果をもたらすだろうか。



 見慣れた小屋の戸を二度叩く、中から返ってきたのはまだ聞きなれない声。

「入れ」

「失礼します」

 戸を開けるとそこにはケイがいた、肩までかかる黒い髪に、切れ目が特長的な娘、その眼差しは北風のように冷たいがその裏に熱風が吹いているのをコウは知っている。

「来たか、用意はできてるぞ」

「準備が早いですね」

「奴が帰ってきたら、奴はお前を独占するだろうから、その前に思う存分味わっておきたい」

 怪しく蕩けた瞳がコウの股間に向けられた、そして思い出される濃厚な尻攻めと立ち上がる愚息。

「は、早く盤を下さい、早く!」

 暴力的な快楽の記憶を振り切るようにコウは遠くの地にいるツミカとの対局に望んだ。

 先手番はツミカ、後手番はコウで始まった、深呼吸をして心と愚息を落ち着かせて、手を打つ。

 手番が回り一目散に穴熊に組み始めるコウ、それに対してツミカは。

(居玉で四間飛車? 美濃囲いの形はとってるけど動かさないし3六歩とあがってるし何考えてるんだろ、とりあえず香車あげてと……おわっ! 来た!)

 四間飛車で居玉という不思議な形の先手陣、その攻めは非常に素早くなおかつ切れず、止める事が出来ない。

(桂馬が跳んできた、銀を取ったら桂馬で取られて次は角が狙われる!)

 穴熊など組む隙がない、どんどん押される前線、刈り取られる駒、ツミカの角の効きが自玉に刺さる。

(飛車が成られた、なんだこれ、早すぎる、早すぎるよ)

 投了が出来ない為せめて簡単に詰まれまいと足掻くが、軽くねじ伏せられて。

「詰み、だな」

「うわぁ、一方的……」

 終局図を見て感想を呟くコウ、何も出来なかった、香車あげた瞬間、銀が迫って桂馬が跳び角を苛める、そうしている間に他の筋が突破されて潰された、短い手数での詰みだった。

「はぁ、また聞いてみよう」

 ため息をつきながら、立ち上がろうとしたコウ、しかしそれは両肩に置かれた手によって止められて座ってしまう。

「何処に行こうと?」

「あ、いや、その」

「さぁ、支払って貰おうか?」

 素早く密着する体、ケイはコウの後ろから上に覆い被さるように、抱き締めて耳を甘噛みした。それを唸りながらコウは顔を赤くして耐える。小屋の中は微かな水音と悩ましい吐息が響く。
 ひとしきり耳を弄んだあと怪しく微笑むケイ、次は艶やかな唇を開き耳の中をゆっくりなぞる、そして片手を、乳首に添えた。
 爪先で軽く引っかき、強めに摘まむと、そのままくりくりと親指と人指し指で転がすように乳首をいじめる、それを繰り返して、硬くなった乳首を今度は指先で小刻みに弾いていじる。

「ぐうっ」

「ふふ……」

 乳首をいじる手をもう片方の乳首に移して、また同じようにいじめる。
 耳と胸を弄びながら、覆い被さる形から、脇の下から手を通して抱き締める形へ変える。そして腰から下を脱がせて裸にして二人とも膝立ちになる、自由にしていた片手が下腹をさすった。
 さする手の直ぐ下では股間が激しく膨張して盛り上がっている、手は焦らすように、徐々に徐々に下へ向かう。
 もっと早くと、コウはケイに、目で訴えるが、強く乳首を捻られて返された。
 そして指先が根本に触れるか触れないかぐらいになるとそれ以上下がらなくなり、陰毛の生えている部分をゆっくりさすり、時折、指先が根本に触れるぐらいだ。
 乳首をいじる手が止まり、脇の下から抜かれる、ケイは指を口に含んで、たっぷり唾液を指に絡ませる、次に手が置かれた所はコウの尻。
 ケイは息を荒くして激しく上下するコウの背中を見つめた、その目は何が何でもこの獲物を犯し抜くと言わんばかりに、剥き出しの加虐心で燃えている。
 そして、ケイはコウに告げた。



「分かっているだろうが、今日は寝かさん」



翌朝、夜通し頑張って、ツミカの家から自分の家に帰るコウの足取りはいつもより弱々しかった。
15/03/23 19:28更新 / ミノスキー

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