今日もまた、昼に出されたそうめんの山を腹におさめて、食後の運動がてら散歩する、太陽はテカテカしてるけど、風が強めに吹いているからとても気持ちいい。

　とっとこと、陰に沿いながらぶぅらぶら、そしたら知らない小さな公園に着いた、古ぼけたブランコと錆び付いた滑り台、誰もいない砂場、そして木陰の下に綺麗な木のベンチを見つけた。

（涼しそうだな……よーし、ちょっとあそこでゴロゴロするか）

　ベンチまで小走りして近づいて飛び乗る、これで食後の運動はおしまいだ。
　陰にあるからか、べンチはほんのりと暖かくなっているだけで、広さも寝転がるのにはちょうどよかった。
　
（良いとこ見つけたなぁ……）

　ベンチの真ん中で丸まりながらあくびを一つ、不意に静かで涼しい風が流れて体の熱を冷ます、そして上からさらさらと葉っぱが擦れる音が聞こえた、不思議と辺りは静かで、この空間だけ回りと切り離されたみたいだ。

（…………たまには外で昼寝でもするか）

　サトウの胸じゃなくて固い木の上だが、まぁいいか、涼しいし。
　目をつぶって寝る体勢に入る、聞こえるのは上で葉っぱが擦れる音と、前から人の足音。

（……………だれだ？）

　目をひらいて、前を見ると黒いスーツのズボンが見えた、そして上を見ると、これまた黒いスーツと、男か女かわからんがとにかく、色白で顔立ちが鋭いヤツがアタシを覗きこむように立ってる。

　覗きこむ目が少し冷たくて、なんだかちょっと怖い。

「すまない、起こしてしまったようだね」

「え……別にいいよ」

「隣、良いかい？」
　
「お……おう」

　声も妙に高いような低いような、こいつはいったいどっちなんだ？

「しかし、今日は良い天気だ……」

　そいつはそう言ってツヤツヤのしてる紫色のハンカチを取り出して額の汗をぬぐう。

「まぁ、そうだな……」

　汗をぬぐう手が額の真ん中で止まった、そいつはゆっくりとそのハンカチを額から離してじぃっと見つめる。
　つられてアタシもそのハンカチを見つめる。

　汗を吸った部分が濃い紫色になってる、やけにツヤツヤしてるって事以外はなんてことない普通のハンカチ。

（どうしたんだろ？）

　ちらりと顔を見ると、目はハンカチに釘付けになってて、白かった顔が真っ赤になってた、暑いのかな？

（風も吹いて涼しいと思うんだけどなぁ……っ！）

　風がいきなり強く吹いて、四角に折り畳まれたハンカチがぶわっと広がる、広ったハンカチの形は四角から、三角になった。



　突然、サトウが洗濯物を畳んでいる時を思い出す。



　サトウは鼻歌混じりにささっと服を畳む、そしてアタシはその畳まれたモノをタンスに入れる、その時たまに間違えて入れてしまうのがある。



　それはパンツとハンカチ、どっちも四角に折りたたまれていて、見分けがつかないんだ。



　だから、時々サトウはハンカチの変わりにパンツをポケットに入れてしまう。




　
そう、こいつのように。





「………失礼っ！」

　元ハンカチを胸の内ポケットに押し込むと一言、そして全力疾走、遠ざかるアイツの背中を見て思う。

　アタシは忘れない、この公園でパンツをさらしたアイツを。

（でも男か女か…………どっちなのやら？）

　気のせいか、そう遠くはないどこかで、悲鳴をあげる女の声がしたような気がした。

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