「減らねぇよぉ、増えてないかコレ」
「気のせいです、さぁさぁ頑張って駆逐しましょうねー」
今日も大皿に積まれたそうめんの山をちまちまと箸で突っついて崩す、冷しそうめんに何の文句はない、だけど……だけど。
「一週間もぶっ続けで同じメニューってのはおかしいと思うんだよ、サトウ」
「田中さん、コレを見てください」
サトウは大皿の隣にある平皿のふちを箸先でちょんちょんとつつく、皿にはいつもと同じように金糸卵と細長く切られたキュウリとハムが盛られてる。
「コレがなんだよ……」
「今日は良いお皿を使っております」
「皿じゃなくて盛られてるモノを変えろよ…………」
黄色と緑と赤はあきた、この平皿みてぇな良い感じに焼けた茶色が欲しいぞ。
「えー? 30万のお皿に盛られた卵ですよ? いつもより美味しく感じませんか?」
「アタシは30万の肉が食べたいよ!」
皿で味が変わる訳ないだろうに、全くこいつは…………ん?
「おい」
なんでしょうと、サトウは卵とハムの最後の一切れを自分の器に素早く持っていきやがった、キュウリだけでこの山を相手するのはきついぞ……ああ違う。
「30万って、この皿がか?」
「……ええ、そうらしいですよー?」
それがどうしたと言わんばかりに首をかしげる、いやいやいや、まて、まてよ色々言いたい事はあるが。
「んな皿ァどこから取ってきたぁ!?」
「田中さん、食事中はお静かに……優しいおじさんがくれましたよ?」
「30万もする皿をほいほいやるおっさんなんて、いるわけないだろ…………さぁ吐けどこから盗んできた?」
「…………盗んだなんて人聞きの悪い、本当にくれたんですよー、ええと、いつだったかなぁ……」
皿がサトウに渡るまでの事をまとめると、サトウいわく、子供を押し倒してあるコトをやってるおっさんに遭遇して、口封じの為に皿をもらったらしい、その事を話すサトウの顔はどこかひきつっていて、目はよく泳いでいた。
「口封じに皿渡すって……嘘臭いな」
「ほ、本当ですってばー……信じないならこうします!」
サトウの箸を持つ一瞬手が消えて、また見えた時には卵とハムが箸先にあった、そして私の器にあるはずの卵とハムが消えていた。
「おい、それアタシの卵とハムだろ、かーえーせーよー!」
「んぐ…………残念、お腹に入った以上返す事はできません」
「うぐぐ…………食べもんの恨みは忘れないからな…………」
「メニューを変えるので忘れて下さいな」
「え、本当か! じゃあ肉がいいなー」
食べ物に釣られた訳じゃないからな、本当だかんな!
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