驚いた。
とにかく驚いた。雄君と彩の関係が、私の知らない間にあんなに進んでいたなんて。
私はベッドに寝転がりながら思いを巡らせる。
ずっと応援してきた彩の恋が実ったのに、私の心は驚きと戸惑いばかり。やっとのことで浮かべた笑顔も、もしかしたら引き攣っていたかもしれない。
親友の幸せに対して祝うべき私の心には、大きなわだかまりがあるだけだった。
「いやだ」
私の心が叫んでいる。この想いはずっと昔に閉じ込めたもの。だけど、今の私には、もうどうしたらいいかわからない。
昨日の晩もこんな風に夜更かしして寝坊をした。学校に着いて先生に怒られた。そして、仮眠を取りに保健室へ寄った時、聞いてしまったのだ。
『うむ・・・恐らくは魔法薬の類じゃろう。』
『・・・つまり、誰かが俺に魔法薬を使った、ってことですか?』
『・・・なるほどのう・・・とすると、お前さんに盛られたのは、惚れ薬の類じゃろうか?』
雄君と彩の関係は、私が思っていたようなものではなかった。
彩は雄君を他の誰かにとられないようにと、あの状況で勇気を振り絞って嘘をついた。
雄君も、きっと彩のことが好きだったから、あの場では口裏を合わせて、今はきちんと結ばれているのだと思っていた。
確かにおかしいとは思った。雄君はあんなにモテる方じゃない。それが突然、あんなに沢山の魔物娘に言い寄られていた。
しかもその中には、彩が雄君に目をつけていることを知っているはずの娘も居た。
だから、あれは、素直になれない彩のために、学校中の魔物娘たちが協力して彩を後押しするための台本なのかとも思っていた。
そんな話があるのなら、どうして私に声をかけてくれないのかと、悲しくなったりもした。
でも違った。あれは台本なんかじゃない。雄君に盛られた薬のせい。
どうしてそんな薬を雄君が使ってしまったのかわからないけど、彩はその薬のせいで告白させられた″ということ?
わからない。
確かに、一昨日から、雄君の雰囲気というか、匂いというか、雄君を包む何かが変わったのは感じた。
それがきっと、雄君に盛られた惚れ薬の効果なのだとしたら、私には何の影響も受けていないように思う。
もしかしたら、きっと、たぶん、それは、元々私が雄君を好きでいたから。
でも、一体誰が雄君に惚れ薬なんか使ったのか?思い当たる人物なんて、もちろんいない。
なら、雄君が自分で使ったの?
雄君は結構鈍感だ。きっと彩の気持にも気づいてはいなかっただろう。そしてもちろん、私の気持にも…。
でも、恋人がほしかったから?モテたかったから?そんな薬に手を出したの?
わからないけど、もしそうなら酷いことだ。そんなひどいことをする雄君に、私は怒るべきなんだろう。でも、私の心には怒りよりも大きな感情が渦巻いている。
それは 喜び だ。
私と同じ原理で、彩や日向にも、薬の効果はないかもしれない。
でも、今、クラスの中で雄君の置かれた状況を知っているのは私だけだ。それがなんだか、二人だけの秘密を共有しているような気分になって、背中がゾクゾクしてしまう。
私は、楽しんでいるのだ。この状況を。
それを自覚するとともに、私は泣きたくなる。
大好きな人と、大切な親友が困っている状況で、あろうことか私は、喜び、胸を躍らせているのだ。
そして、私の中で押し殺した感情が囁く。
『これはチャンスだよ。貴女の願いをかなえるチャンス。』
何がチャンスだ。事情を知っている私が、雄君を支えて、解決するまで力になってあげなければいけないというのに。
『そうよね。大好きな雄君のピンチ。私が全力で支えなきゃ。』
そうだ。今、雄君の力になれるのは私しかいない。
『そうすれば、雄君は私を好きになってくれるかもしれない。』
違う!
『彩じゃなくて』
うるさい!
『私を選んでくれるかもしれない』
うるさい!やめて!そんなんじゃない!
『私のものにできるチャンスよ。』
もう、やめて…
『素直になりなさい。恋は戦争ってよく言うじゃない。親友だからって、彩に遠慮ばかりしてる必要はないわ。私には、私の恋をする権利がある。目を反らさないで。幸せは、目の前よ。』
小さなため息と共に伊織は目を開けた。さっきまで流していた涙はもう乾いている。その目に、迷いはなかった。
「チャンス・・・」
真剣な表情を浮かべ、伊織は毛布をかぶりなおした。
―――――――――――――
『にゃぁぁ!!雄大!どういうことにゃ?!ちゃんと説明するのにゃ!』
「うわぁ・・・いきなりなんだよ?どうした?」
朝一番からモーニングコール。誰かと思えば日向だった。開口一番に叫び出す日向に文句を言いながら、俺はベッドを降りた。
『どうし
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