終了を告げるチャイムが響き、机に突っ伏していた生徒達がむくりと起き上がる。
「よ〜し、これで期末テストは終了だ。幸い今回は不正行為も無く終われて何よりだ。赤点は初日に説明したとおり平均点の半分以下。特に今回は全教科の先生方も甘く問題を作ったらしいから、まさか夏休みの半分を費やして鬼の補習に参加するような奴は出ないだろうと思ってい・る・ん・だ・が・?大丈夫だよなぁ?まぁ、いい。テスト返却は来週の月曜日。それまでお前らはつかの間の休息だ。その日には頭髪検査もあるから休みのうちに切っておけよ!もし、どこぞのホスト気取りでロン毛にしてくる奴が居たら、おれが問答無用でゴリン(バリカンで5ミリのボウズ頭)にしてやるから覚悟しておけ。では学級委員、号令!」
「っしゃ〜!終わった〜!!」
「相変わらずテンション高いよなぁ野口のやつ…」
「だからイグニスと契約したんじゃない?クーラー効いてるのに3度くらいは暑くなるよ…」
「言えてる。地球温暖化の原因の3割くらいはあいつのせいかも…」
号令が済んでそれぞれの荷物をまとめるクラスメイト達を尻目に、僕はいそいそとさっきまでやっていた世界史のテスト問題用紙をかばんにしまって教室の出口へ向かう。
「そんなに急いでどこかに行く用事でもあるのか?祐樹?」
「ひぃっ!!?」
突然背後からただならぬ殺気を孕んだ声に呼び止められ、硬直する。ブリキの人形のようにぎこちなく振り返ると、鞄を持って仁王立ちをしているイリィが居た。
「い、いや、早く帰って冷たい飲み物でも飲んでまったりしようかと…」
にっこりと微笑むイリィにまるで言い訳をするかのように言葉を並べるが、イリィはその影がさした笑顔を崩さないまま一歩一歩僕へと近づいてくる。そして手を伸ばせば届くくらいの距離に来たところで、僕に顔を近づけて、
「そうか、では、一緒に帰ろう。飲み物も用意させるぞ?」
そう言って僕を引きずって歩き出すイリィ。クーラーの効いた部屋から廊下に出る瞬間のあのなんともいえない感覚を感じつつ、僕はがっくりとうなだれた。
「ね、ねぇ、イリィ?僕の家…こっちじゃないんだけど…」
「何を言っているんだ?家はこっちだろう?」
左腕を組むようにして抱え込まれ、指を絡めて握られたまま校門を出て歩き出す。校門を出た瞬間に右へ、すなわち駅の方へ歩き出そうとした僕を無言のまま引き戻して、左、すなわちイリィの家の方へ引っ張っていくイリィ。さも当然のような顔で応える彼女に、溜息をつくしかなかった。
期末テストの勉強を付きっ切りで見てやろうと言われてイリィの家へ行った僕は、とうとう期末テスト終了の今日まで自分の家に帰ることは無かった。つまり、今日まで一週間以上彼女の家に泊まっていることになる。
イリィの家のお風呂でやっちゃったあの日、イリィは一日中上機嫌で、普段以上に僕にべったりだった。ほとんど自習ばかりだったその日は、本当は遠い席なのに、クラスの女子に頼んで無理に僕の隣の席へやってきた。席の交換に応じたクラスの女子もそうだが、気づいていながら注意しないその時間の担任のメロウの先生もどうかと思う。
それをいいことに、イリィは教科書を忘れたわけでもないのに机をぴったりくっつけて来たり、こっそり机の下で手を握ってきたりする。なのに、机の上の彼女は表情一つ変えず優等生のままだった。人(魔物)はここまで感情を伏せることが出来るのか…僕はあきれながら配られたプリントに取り掛かっていた。
そしてその日もやっぱり僕はイリィの家に拉致される勢いで連れて行かれ、泊められた。その日は一緒にお風呂には入らなかったが、『せっかくだから一緒の部屋で寝よう!いや、いっそ一緒のベッドで寝よう!!』なんて言い出され、僕が断ると彼女は鼻息を荒くして手をワキワキと動かしながら迫ってきた。
で、その日は結局寝られなかった。彼女は何を言っても僕と寝ると言い張ったし、僕が一人でベッドに入っていても、彼女は逆夜這いを仕掛けてきそうだったからだ。
寝不足でふらふらになっている僕を見て、やっとこさ彼女が折れてくれた。だが、彼女が妥協をしたとしても、僕が彼女の家に泊まるという前提は覆らなかった。
その次の日は僕の一人部屋をちゃんと用意してくれた。やっぱり不安はあったけれど、彼女は”今回は”ちゃんと約束を守った。寝不足だった僕が気づいていないだけかもしれないけど…
それからは普段どおりだった。朝は彼女が起こしに来る前に携帯のアラームで起きたし、着替えも済ませておいた。彼女はそんな僕に『つまらん』なんて文句を言ってきたけれど、寝込みを襲われるよりはましだ。
ただ時々、朝起きたら使っていないほうの枕の位置が動いていたり(何故二つあるのかって?イリィに聞いてよ…)、朝起きたらちゃんと身体に毛布が掛かってい
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