中編

「お願い事!私以外の女子と…その…楽しそうに会話するな!以上!」
「えええっ!?ちょ、イリィ!?何を言って…」

あのデートから数日、僕らはまた普段通りの学校生活を送っていた。……んだけど…。



教室でまたノートやプリントに描いた絵を見せあっていると、さっきまでなんだかむすっとした表情をしていたイリィが急に立ち上がって、僕のYシャツの袖を引っ張って廊下まで連れ出した。
そして、僕の顔の両側の壁にそのがっしりとした手を突いて、ずずいと顔を近づけて、開口一番むちゃくちゃなことを言ってきたのだ。


あまりにむちゃくちゃな内容だったので、驚く僕の顔の前に、ピンと伸ばした人差し指を突きつけて、

「返事は?」
「…いや、でもさすがにそのお願いは…」
「へ・ん・じ・は?!!」
「さ、さすがにそれは無理だって!学校生活を送る上では、イリィ以外の女子と会話しなきゃいけない場面だって…」
「私のお願いを聞かないというのか?」
「そんな事言ったって無理だよ!もうすぐ期末テストだし!勉強会だって開かれるし…」
「…そうか、すまない。無理を言ったな。……ちょっと疲れてるのかもしれない…。今日はもう帰るとするよ…」
「え?ちょっと、イリィ?」

あのデート以来、イリィは何かと僕に『お願い事』と言って何か注文をつけてくる。
例えば、『朝は一緒に登校しろ。』とか、『昼ご飯は私と二人きりで食べろ。』とか。
一見、恋人の間のいわゆる『愛ゆえの束縛』というやつに見えなくも無いが、どんな形であれイリィが僕に愛を向けてくれているのが嬉しくて、ついつい頷いてばかりいたら次第にエスカレートしていって、ついには今日みたいな無理難題や、『休みの日は一日中手を繋いでいろ』なんてことも言い出した。
断れば、さっきみたいに威圧して頷かせようとしてくるし、正直困っていた。
だが、今日は様子が違った。なんだかすごく思い悩んでいるように見えた。初デートの日にした約束を忘れたわけではないが、また僕に何か至らない点があったのだろうか?そんな不安が僕の心の中で渦巻いていた。





さらに月日は流れて1学期の期末試験が近くなってきた。例のごとくまた集まって勉強会を開くんじゃないかと思っていたのだが、今回はそうはならなかった。

「決めたぞ祐樹!」
「うわぁぁ!!びっくりした〜…いきなり迫られたらびっくりするじゃないか。」

テスト一週間前になり、ほとんどの教科がテスト範囲を終え、帰りのHRでテストの試験範囲の紙が配られた。
そして帰りの挨拶が済み、まっすぐにイリィの机に向かおうとした僕の眼前にいきなりイリィが飛び込んできた。

「決めたって?」
「今回の期末試験の勉強、私がお前に付きっ切りで教えてやろう!」
「え?付きっ切りって…勉強会じゃないの?」
「今回は勉強会は無しだ!まさかとは思うが、お前はやっぱり私以外の女子と隣に座っていちゃいちゃしながら勉強する勉強会に参加したいのか?」

僕が勉強会の名を口にすると、イリィは見事なジト目で僕を睨み、ありもしない事実をまくし立てる。

「だ、誰もいちゃいちゃなんて…」
「とにかく!お前は私と勉強するんだ!いいな?」
「え〜?せっかくだから皆と…」
「い・い・な?」
「…わかりました。」

こうして僕は、半ば連行されるようにイリィの家へ連れてこられた。
僕の親には、『友達の家でテスト勉強をしてくる』とメールを送ったのだが、母さんは『あんまり乱暴なのはダメよ?初めてだったらなおさらね。大切にしなさいよ?』なんて返信してきて、父さんは『ちゃんとゴムは付けるんだぞ?男のマナーだ。』なんて言ってきた。まったく、何て親だ。





「うわぁ…すっごぉ〜」

噂には聞いていたが、イリィの家は驚くほどの大きさの豪邸だった。
庭の面積も驚くほど広く、サッカーの試合が出来そうなほど広かった。
実はガーゴイルなんじゃないかと思うくらい精密に作られた像が並び、染み一つ無い綺麗な絨毯が敷き詰められた、ボロアパート一室分の広さはある玄関。絨毯の無いところは、全てぴかぴかの大理石だった。

「離れるんじゃないぞ。私も子供の頃はよく迷子になっていたからなぁ。」
「う、うん。気をつけるよ…」

確かにこれは子供なら迷子になって当然ともいえる広さだ。あちこちに視線を泳がせつつも、前を歩くイリィとはぐれないように付いていく。

「さ、到着だ。ここが我が家の居間だ。母さんは仕事であちこち飛び回っていて、今はいない。父さんは…」
「…?」

そこで不意に表情を曇らせたイリィ。僕はその表情を見て、イリィがどうして表情を曇らせたのかを悟ったが、どうすればいいのかわからなくて少し沈黙してしまった。

「…と、とにかく!今は両親は不在だ。だから、自分の家だと思ってくつろいでくれてかまわ
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