前編

進級して、学年が2年にあがったことで、クラスも変わり、新しく一年を共に過ごす仲間達の顔が並ぶ。
その中に、一際目を引く女の子が居た。それが今、僕の胸倉を掴んで全然嬉しくないデレデレモードに入っているイリアナさんだ。
はっきり言おう。
一目惚れだった。
始業式の日に始めて彼女を見たときから、彼女のことが好きだった。
よく手入れされているのだろう長くてさらさらの白銀の髪や、彼女にだけは校則を適応外にすべきだと主張したいほどかわいらしい角のリボン。
Yシャツの上からでも柔らかさが解りそうな豊満な胸。
クラスの女子達と話しているときに見せる、まぶしい笑顔。
そして、その後ろでリズムでを刻むように左右にゆっくり揺れる立派な尻尾。
整った顔立ちに、すれ違った時に香る心地よい香り。
全てが僕を魅了し、進級から2ヶ月経ったころには、毎日彼女のことで頭がいっぱいだった。
授業中に彼女の方をチラチラみていたら、目が合ってしまったなんてこともあって、そのたびに僕の心臓はビックバンを起こしそうなほど高鳴った。
何とかして彼女と会話がしたい。仲良くなりたい。たとえ玉砕するとしても、この想いを伝えたい。
そんな気持ちが日に日に大きくなっていった。

そんなある日、歴史の授業で回収されたプリントが返却された時のことだ。

奇跡が起こった。
その一枚のプリントがなければ、僕は彼女と仲良くなんかなれず、焦がれる想いを不完全燃焼のまま抱えて卒業を迎えることになっていただろう。

僕の列に回ってきたプリントの束に、イリアナさんの名前が書かれたプリントが混入していたんだ。
(こ、これは・・・一世一代の大チャンスか!?もしこのプリントを手渡す口実で、さりげなく声を掛けられたら・・・もしそのとき、わずかでも手と手が触れ合っちゃったりしたら・・・///)
そんなことを考えていると、プリントの裏に何かが透けて見えた。
なんだろうと思うのとほぼ同時にプリントを裏返してみると、そこには、この教室の窓から見下ろした景色だろうか、雲の流れる空と、体育の授業中のジャージ姿の生徒達が、それはそれは綺麗に描かれていた。
どうしてプリントの裏なんかに描かれているのかと思うくらい綺麗な絵だった。
もちろんシャーペンか鉛筆で描いたのだからモノクロな世界なのだが、今にも動き出しそうな躍動感ある体育のサッカーの様子や、雲の合間を飛んでいたのだろう大小の鳥やハーピーたちが描かれていた。
思わず1,2分は鑑賞していたのではないだろうか?僕の思考を呼び戻したのは、授業終了のチャイムの音と、学級委員の号令だった。




「あ、あの!イリアナさん!」

僕は休み時間で席を立ち始めるクラスメイト達を掻き分け、イリアナさんの席へ足を向けた。人生最大の勇気を奮って声を掛けて、そっとプリントを差し出す。

「?あぁ、朝倉君か。何だ?そのプリンt・・・」

そこまで言って顔色を変えたイリアナさんは、僕の手からプリントをひったくるとクシャクシャに丸めてしまった。

「イリアナさん、それって今度のテスト範囲なんじゃ・・・」

驚きながらも声を掛ける僕のほうを半ば睨むようにみて、低く小さな声で言った。

「・・・見た?」
「え・・・?」
「そう!絵だ!見たか・・・?」
「・・・うん・・・」

僕がそう答えた瞬間、イリアナさんはフンッと鼻を鳴らしてそっぽを向きながら、
「そうか・・・下手くそな絵だろう?笑えばいい。どうせ私は絵心が無いんだ・・・」

そのそっぽを向いた横顔が、どこか悲しげで、見ていられなくて、僕は咄嗟に口を開いていた。

「そ、そんなこと無いよ!とっても上手な絵だったよ!濃淡も上手く表現されてたし、一点透視も完璧だった!遠近法もばっちりだったし!・・・えと、それから・・・えと・・・」

突然早口でまくし立ててしまったせいか、イリアナさんはきょとんとした表情で僕を見ていたが、また少し表情を曇らせて、

「世辞ならいらない。でも、褒めてくれたことは嬉しい。・・・ありがとう。」

と小さな声で言った。僕は彼女にどうしても笑ってほしくて、もっと彼女の絵を褒める言葉を捜す。

「お、お世辞じゃないよ!本当に上手だって!きっと展覧会なんかひらいたら、僕は大枚を叩いてもイリアナさんの絵を買い取るよ!」

少し声が大きくなってしまい、周りの視線が少し集まってしまった。僕は恥ずかしさのあまりうつむいてしまうが、不意にクスクスと笑い出したイリアナさんに、自然と目が向いてしまう。

「フフッ。展覧会か、さすがにそれは言いすぎだろう。それに、こんなプリントの裏に描いた絵を展覧会に飾ったとして、誰が見に来るんだ?・・・いや、朝倉のような奴なら来るかも知れないな。」

ポカンとする僕の顔を見て、また笑い出す彼女。僕は嬉しさと少しの恥ず
[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4 5 6]
[7]TOP [9]目次
[0]投票 [*]感想[#]メール登録
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33