意識が目覚めたとき、見たことがない綺麗な夜空の下、数人の人影が静かに浮かび上がっている。
その日はお祭りがあるぐらい特別な日だった。
町がいろんなイルミネーションで着飾っていて、その下では魔物娘と人が、楽しそうにダンスをしていた。
みんな幸せそうに寄り添い、踊り、笑いあっていた。
そんな中、町から少し離れた公園でオレ達はいた。
『裕也・・・この子が・・・本当になりうるのか?・・・フム、お前さん達が言うなら・・・』
聞き覚えがあるような幼い声が、なにやら難しい話をしている。
声にフィルターがかかった様に、上手く聞こえない。
忘れているという感じではなくて、思い出せないと言った方が正しいか。
話の中身はほとんど思い出すことはできないけれど、大切な話をしていたことだけは覚えている。
それに・・・
『ああ・・・オレ達の子供だ・・・必ず・・・なってくれるだろう』
『そうよ・・・必ずこの子は・・・になってくれるわ』
懐かしく、暖かな声。
体の奥底に刻み込まれていて、忘れることのない両親のぬくもり。
そのぬくもりの中、幼かったオレは寝ぼけながらその話を聞いていた。
なぜだろう。
これまでこんな記憶、思い出したことがなくて。
こんなにも鮮明に思い出すことなんてなくて。
オレはこれまで両親の顔をはっきりと思い出したことがない。
いままでの記憶の中では、いつもピントがずれたカメラのようにぼやけていた。
そのはずなのに、なぜか今ははっきりと両親の顔を思い出すことができる。
まるでこの世界に来て、欠けていたピースが少しずつ見つかっていくような・・・
まさか、な。
記憶を意図的に消すなんて事、できるわけがない。
それに、オレはこの世界に来たことはない。
魔物娘と会うことなんてないはず。
そう・・・ないはずなんだ。
否定しようとするけど、得体の知れない違和感が胸に重く残る。
来た事がないはずなのに、心の奥底でこの世界のことを何かが叫んでいる。
オレは何か大切なものを失っている気がする。
何か・・・忘れてはいけないものを失っている・・・
このとき、初めて自分の記憶に疑問が生まれた。
オレが『覚えている記憶』とは、本当に正しいのか??
今思えば、オレの記憶には細やかな矛盾点が存在していた。
もしかして・・・オレは・・・
バチッ・・・
「グァッ!!!!」
突然、頭に高圧電流が流れるような痛みが広がっていく。
夢の中であるはずなのに、痛みがダイレクトに送られてくる。
まるで、思い出してはいけないものに触れたように。
痛みのあまり、意識が遠くなってくる。
遠くなっていく意識の中、声が聞こえてきた。
『おぬしらのその言葉を信じよう・・・いつの日か・・・この世界を・・・』
『そのときは・・・またこの日に・・・この綺麗な夜空の下で・・・会おうのじゃ』
それを聞き終わると同時に、オレは意識を失った。
気づいたときには、ベッドの上で横になっていた。
露天風呂でよくわからないけど、大泣きしてそのまま寝てしまったのだろう。
あたりを見回そうと体を起こそうとしたとき。
「ようやく起きたか」
すぐそばから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
声の方向に顔を向けると、ベッドに寄りかかるセラがいた。
どうやら彼女が運んでくれたようだ。
「ああ、すまん、ここまで運んできてくれて」
「いや、気にしないさ。それよりも気分はどうだ??」
今さっきまで見ていた夢のこともあってか、あまりよろしくはないけれど。
それでも、そこまで体調が悪いわけではない。
少し夢見が悪かっただけの話だ。
・・・そう、少しだけ。
言うほどのことでもないし、これはオレの問題だ。
オレが解決していかなければならないことだ。
「大丈夫だ。少し休めばよくなる」
そう言うものの、セラは何やら心配そうに顔を覗き込んでいる。
心配・・・というよりも、何かを言うか言うまいか、迷っているようだ。
オレがそのことを聞こうとしようとしたとき、彼女はそのまま出て行ってしまった。
(一体なんだったんだ????)
まあ、今は眠って明日からの仕事に備えますか。
オレは疑問に思いながら、そのまま眠りについた。
そのときのオレは、明日の仕事のことしか頭になかった。
けれども、よくよく考えてみると、このときから始まっていたのかもしれない。
オレの記憶に『歪み』が現れ出していることに・・・
一方その頃・・・
(・・・あれはなんだったのだろうか??)
セラ、いや私は部屋から出て、すぐ友人の下へ走った。
私の頭の中で一つの疑問が生まれていた。
それは、つい今さっき裕也が目覚める前のときだった。
それまで普通に眠っていたはずの裕也の頭部から突然、魔方陣が
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