『異世界道中記』

「悪いな、知り合いでもないのにご馳走になっちまってよ」
「けぷ。 ………………ごちそーさま、です」
「お気になさらず、困った時はお互いさまと言いますしね。 ねぇ、バフォ様」
「なに、感謝の気持ちは受けつけるのでな、存分に拝み敬うとよいのじゃ」
「………だそうです。 少しでも感謝しているというのならバフォ様を拝んでください」
「いや、なんでだよ」

旅の途中で俺達が出会ったロリコン御一行。
俺達は互いに自己紹介をすると、その二人組はそれぞれ『ジャット』に『スイ』と名乗りました。
ジャットさんは冒険者で、サハギンのスイさんと一緒に旅をしている途中だとのことです。

「へぇ、ジャットさん達は冒険者なんですか」
「ん………そう、です」
「ま、冒険者とはいっても大陸を渡り歩くような真似しないけどな。
 そういうアンタ達はどうなんだ? 見たところ旅に慣れた様子じゃあなさそうだが………」

まぁ、そうでしょうね。 今までに、旅なんてしたことはありませんし。

「俺達はなんと言いますか………修行ですかね?
 これから魔術の練習を兼ねて、遺跡の探索をするんです」
「遺跡……この辺りで遺跡って言うと『ルト遺跡』か?」

ルト遺跡? ……いえ、尋ねられても知りませんけど。
そういえば目的の遺跡がどういった場所なのか全然聞いてませんでしたね。
そんなことを考えながら、俺はバフォ様に「そうなんですか?」と尋ねた。

「おお、そういえばナオヤに言うのを忘れておったのじゃ。
 そうじゃよ、これから向かう場所はそやつの言うとおりに『ルト遺跡』じゃよ」

バフォ様、そういうことは忘れないで下さいよ。……いえ、聞かなかった俺も悪いんですけどね。
それにしても、ジャットさんも知っているということは結構有名な遺跡なのかな?

「あの、ルト遺跡ってどんな場所なんでしょうか?」
「んー、そうじゃな……… 簡単に説明するのならば過去に存在した王国の宝物庫じゃな。
 遺跡内部には対盗賊用の罠があり、遺跡の守護者にはアヌビスがいるそうじゃ」
「アヌビスですか………」
「む? なんじゃ、知っておるのか?」
「いえ、そういうわけではないんですけどね」

とある奇妙な人間賛歌《アドベンチャー》に出てきた妖刀と同じ名前ですね、ハイ。
つーか、アレって神様じゃないのか? いや、詳しくは知らないけどさ。

「そうか、アンタ達もルト遺跡に行くつもりなのか」
「"も"ということは、ひょっとしてジャットさん達もですか?」
「ああ、俺達はそのつもりでここまでやって来たのさ。
 なぁ、もしよかったら俺達と一緒に行かないか?」
「……一緒にですか?」

んー、どうしようかな?
俺としては別に一緒でも構わない気もするんですけど………
……そうだな、バフォ様と相談して決めようかな。

「バフォ様、どうしますか?」
「む?そうじゃな……… うむ、ナオヤの好きなようにするとよいのじゃ」
「……よろしいのですか?」
「うむ、今回の目的はあくまでナオヤの魔術を試すことじゃしな。
 仲間が増えても問題はあるまいて」
「さいですか」

ならば、一緒に行くとしましょうか。
うん、そうしよう。
何事も、経験者が一緒なら安心できるしね。

「でしたらこの人達と一緒に行きたいのですが、構いませんね」
「そうかの、ならば共に行くとするのじゃ」
「……ということですので、よろしくお願いしますね、ジャットさん」
「ああ、こちらこそ。 よろしくな、ナオヤ」
「ん……… よろしく、です」
「うむ、せいぜい足を引っ張らぬように気をつけるのじゃぞ」

……ということで、『ジャット』と『スイ』が仲間になりました。
RPGは、やっぱり四人パーティーが基本ですよね、ハイ。

「……ところで、ジャットさんはなにが出来るんですか?
 俺は風属性の術を少々扱える程度なのですけど」
「俺か?俺は基本なんでも出来るぜ。
 魔術はいろんな属性を扱えるし、拳闘術で接近戦も出来るからな」
「へぇ、そうなんですか」

でも、そういうキャラってゲーム的には器用貧乏でなにをやらせても特化型に劣るんですよね。
いえ、あくまでゲームでの話ですけどね。

「それじゃあ、スイさんはなにが出来るんですか?」
「………水の中なら負けない、です」
「遺跡の中に水場はないと思いますよ」
「………がんばり、ます」
「まぁ、もしも水中戦になった時は、よろしくお願いしますね」
「ん……… まかせてください」

いや、たぶんその機会はないと思いますけどね。

「因みに、バフォ様は───────────────
「言わずともわかっておるじゃろう?」
 ──────────固定砲台ですね、わかりました」

受け取ったのは勇気の心、手にしたのは魔法の力。
魔法幼女リリカルバフォ様、始まります。
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