『バフォ様のパーフェクトまじゅつ教室』

ある日、俺はバフォ様に連れられて城の裏手にある鍛錬場へとやってきました。
え?そんなところで何をするのかって?
それは勿論、鍛錬をするに決まってるでしょう。

「それではナオヤよ、今日から主に魔術というものを教えてやるのじゃ」
「はい、バフォ様。よろしくお願い致します」

そう、今日から俺は魔術の特訓を開始するのです。
教師は毎度おなじみ、バフォ様です。
ちなみに、本日のバフォ様は女教師スタイルです。
教鞭をその手に持ち、メガネも付けています。

「流石ですバフォ様。 その格好、とても良くお似合いですよ」
「ふふん、当然じゃな♪」

バフォ様は慎ましい胸を誇らしげに張りながら、くいっとメガネを持ち上げた。
その仕草が愛らしくて堪まらない、思わず抱きしめたくなるな。
……今は授業中だから、後で存分に堪能しよう。 うん、そうしよう。

「さてと、まずは主の属性を確認するとしようかの。 ではナオヤよ、この石を手に取るのじゃ」

バフォ様は手のひらに乗る程度の大きさの、丸い石を取り出した。
透きとおった琥珀色をしたその石から、俺はなんとなく不思議な雰囲気を感じとる。

「バフォ様、その石はなんですか?」
「これか?これは魔焔晶といってな、手に取った者の魔力の色を視ることのできる石なのじゃ」
「色ですか? ……よくわかりませんが、それはどうやって視るのでしょうか?」
「こう手にとって魔力を込めればいいのじゃよ。 ほれ、さっさとやってみるのじゃ」

バフォ様はそう言いながら、取り出した石を俺の手の上に乗せた。
しかし、魔力を込めると言われましてもねぇ……

「魔力を込めるってどうすればいいんでしょうか?」
「なに、イメージすればいいだけじゃよ。 石に触れながら火よ燈れとな」

なるほど。 俺は言われた通りに石の中で燃える炎をイメージする。
すると琥珀色の石の中に緑の炎が燈り、風に吹かれるようにゆらりと揺れた。
おお、なんか魔法っぽい。

「バフォ様、これでいいんでしょうか?」
「そうじゃな、それでよいのじゃ。 炎の色は………ふむ、緑か。
 ということは、ナオヤの先天属性は"風"じゃな」

石の中で揺れる炎を眺めながら、バフォ様はそう言った。
なんだかよくわからんが、俺の属性は"風"とのことらしい。

「すると、俺は風系統の術しか使えないんでしょうか?」
「む? いやいや、そんなことはないのじゃ。
 これは、あくまで主が先天的に得意とする属性じゃからの」
「先天的? ……それって、どういうことなのでしょうか?」
「そのままの意味じゃよ。
 主の場合は風属性の術を覚えやすい程度に認識しておればよいのじゃ」
「そんな認識で大丈夫なんですか?」
「大丈夫じゃ、問題ないのじゃ。
 さて、こういったことは語り聞かせるより実際に使ってみて覚えた方が早いのじゃ」

バフォ様はそう言って言葉を切ると、どこからともなく一本の杖を取り出す。
そして、その杖を俺に手渡した。

「ほれ、ナオヤよ。 これを貸してやるから何か術を使ってみるのじゃ」
「いえ、術を使えと言われましても……… なにか決められた呪文とかないんですか?」
「そういったものは特に決められていないのじゃよ。
 呪文はテキトーでかまわぬ、大切なのは魔力の制御と明確なイメージじゃ」
「イメージですか……」

俺は過去に読んだ漫画や、プレイしたゲームの中から風を使うキャラクターを思い出す。
……ふむ、イメージか。

「あの、バフォ様。 もしよろしければ、そちらの教鞭を貸していただけませんか?」
「む?これか? ……こんなものでどうするつもりなのじゃ?」
「いえ、そちらの方がイメージしやすいと思いまして」
「ふむ…… よかろう、やってみるのじゃ」

俺はバフォ様から女教師スタイルの装備品である伸縮式の教鞭を借り受ける。
そして最初に渡された杖をバフォ様に返し、教鞭に持ち替える。
それではさっそく試してみるとしますか。

「ではバフォ様、行きますよ」

俺はそう言うと、教鞭の先で渦を巻く小さな風をイメージする。
感じる………俺の中に流れる魔力に呼応するかのような風の動きを………
よし、これならいけそうだ。
俺は大気を切り裂く風の刃をイメージしながら教鞭を掲げ、
掛け声と共に手に持った教鞭を振り降ろした。

「疾ッ!!」

すると振り下ろされた教鞭が、巨大な風の刃を生む。
風の刃は大地を抉りながら、土に根を張る草を巻き上げて直進し――――――――

ちゅどぉ〜〜〜ん!!!

―――その先にあった城壁へとぶつかり、粉塵を巻き上げながら轟音と共に霧散した。
粉塵が晴れると、堅牢を誇ったであろう城壁には見事なまでに巨大な傷跡が刻まれていた。

「バフォ様………なんかスゴイの出来たんですけど」
「ああ……うむ……そう
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